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問題企業と成長企業の比較

筆者は、中小企業の再生支援業務に従事しています。支援対象となる企業は、当初は言わば“問題企業”です。
しかし、事業調査・財務調査を行って重点課題を明らかにして、会社の皆さんと議論しながら再生計画を策定し、数年に渡って継続的に実行支援を行なう中で、問題企業は成長企業へと徐々に変化していきます。
今回は、筆者の経験も踏まえ、経営目標の設定・役員体制・マーケットへの対応姿勢・後継者育成に焦点をあてて、問題企業と成長企業を比較します。
これらは、効果的な営業体制・生産体制・管理体制を構築する前提となります。 一気に課題を解決することはできないとしても、継続的に検討が必要なテーマです。

1. 経営目標の設定

問題企業

売上・営業利益・経常利益について、具体的な目標設定をしていません。 せいぜい、売上が“昨年を上回る”程度の目標を掲げるにとどまり、損益分岐点売上高も明らかではありません。 そのため、事業活動が総じて中途半端となり、必然的に成果が出にくい状況にあります。 中長期の目標数値・経営方針・実行計画は、社長の内心に曖昧なイメージがあるにとどまり、経営幹部に共有されることも無く、具体的に組織に浸透していません。

成長企業

当たり前のようですが、経営者が当期の売上目標・利益目標を設定しています。その後3?5年間についても、大凡であっても目標数値・経営方針・実行計画を有しています。 何よりも経営者が目標達成に強く執着しています。 経営幹部に目標とアクションプランは共有され、社長は折にふれて、目標と今後の方向性を繰り返し、経営幹部・従業員に語っています。

2. 経営体制

問題企業

事業と無関係なこと(社長親族の会社への支援、株式や不動産への投資、地域の名士同士の派手な付き合いなど)に、社長が自分の時間を投入し、会社の資金を流用しています。 本業に関わりのある投資でも、リスク検討が行われず、安易に多額の投資が実行されています。 取締役会(経営会議)を開かず、重要案件の議論は複数名の視点で多面的に行なわれていません。 そもそも、取締役・監査役は、親族や顧問税理士を名目だけ据えており、社長以外に実質的に有力な役員が不在です。 経営会議を開いても、経営判断に必要な財務情報・業績評価資料を社内で整備しておらず、課題と対応方針が明確化されません。

成長企業

経営会議を定期的に開催し、財務情報・経営課題を幹部間で共有し、具体的な解決のための議論を行なっています。 名目だけの役員を据える等の対応はとらず、各役員の担当分野を明確化して、会社を背負っているという自覚のあるメンバーが役員を構成しています。 時には、経営に関する実績・知見のある者(他社の役員経験者など)、その他の外部専門家を経営会議等に参加させ、第三者が率直な発言をしています。 結果、財務的に致命傷を負うような投資案件が実行されたり、私的な資金流用が行なわれるリスクも抑制されています。

3. マーケットへの対応姿勢

問題企業

既存の主要マーケットが縮小している中、競合に競り勝たなければ生き残れないという認識がそもそも無く、漫然と事業を続けています。 急速にマーケットが縮小したり、競争が激化している場合に、顧客動向・市場動向からして合理的な根拠が無いのにも関わらず、回復可能性を信じて事業を継続しているうちに、財務的に致命傷を負うケースが少なくありません。 そもそも赤字の額を把握していないケースもあります。

成長企業

既存の主要マーケットが縮小していても、競合に勝ち、生き残りたいという執念があります。 競合と比較した自社の特徴・強みを認識したうえで、営業活動を展開しています。 急速にマーケットが縮小したり、競争が過度に激化したマーケットについては、改善可能性が低いと判断した場合、投資を控えるのはもちろん、手遅れにならないうちに撤退しています。
未開拓のマーケットへの参入に向けた情報収集、新規開拓活動が積極的です。 新しいマーケットの開拓は当初は結果が出にくいですが、継続的に執念深く開拓を続けています。 そのうえでやはり無理と判断しても、次のマーケットの開拓活動を進めるうちに、成果が出てきます。

4. 後継者育成

問題企業

後継者について、社長の内心で候補者がいたとしても、社長自身が交代時期を曖昧にしています。 候補者の意向の把握、将来の承継に向けてのベクトル合わせも為されておらず、候補者本人の自覚が醸成され成長が促されることなく、時間が空費されます。 そのうち、社長も高齢となって時間切れが近づいています。 社長が事業に熱心でないどころか公私混同が目立つような場合、有力な経営幹部が次々と会社を去り、もはや後継者候補が見当たらないケースもあります。

成長企業

30代?50代前半の経営目線を有する有力な経営幹部が存在しています。 当該経営幹部は自分が後継者であるという自覚があり、経営の主導権を握りつつあります。 子息・親族の中に適切な人材がいない場合でも、従業員から候補者を選び、当人にタイミングをみながら意向を確認するとともに、必要に応じて有力取引先等からの招聘も視野に入れて、中期的な育成を目指しています。

執筆者

藤田 裕史 氏

 藤田裕史 氏