地域経済環境〜東北地方版〜

今回は東北地方の経済環境について概観したいと思います。 東北地方はご存知のとおり青森県、岩手県、秋田県、宮城県、山形県、福島県の6県で構成されています。 この6県全体の面積は約6万7千㎡。 これは日本全国の面積の約18%の割合を占めています。 しかし、人口は約900万人と日本全国の約7%しかなく、東北地方が、広くて人口密度の低い地域であることが分かります。また、GDPは約29兆円(日本全国の約6%)であり、その産業別割合は第1次産業が約3%、第2次産業が約23%、第3次産業が約74%です。 日本全国のGDP産業別割合は第1次産業が約1%、第2次産業が約24%、第3次産業が約75%となっています。 「米どころ」というイメージのとおり、全国対比で第1次産業の割合が大きくなっています。

上場企業に限定してみますと、本社(本店)が東北地方6県に所在する上場企業は61社あります。 日本の上場企業総数3,550社のうちの1.7%です。 県別内訳では宮城県が最も多く25社、1番少ない県で秋田県の4社となっています。 また、61社の時価総額合計は約2兆円。 こちらは上場企業全体の時価総額約493兆円のうち0.4%となっています(いずれも2014年9月末時点)。上場企業数の業種別内訳では、最も多いのが小売業の14社、次いで銀行業が13社、卸売業6社、サービス業4社と続き、第3次産業の割合が約69%です(61社中42社。その他の19社は第2次産業)。 時価総額の業種別内訳だと、第3次産業の比率が更に高くなり約86%です。 銀行業が約38%、電気・ガスは東北電力1社だけで約30%という構造になっています。 なお、日本の上場企業全体では、企業数で50%程度、時価総額では60%程度が第2次産業の企業といわれています。

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このことから、東北地方の上場企業は、輸出型製造業ではなく東北地方内を営業地盤とする内需型が中心であると言えそうです。 2014年以前3期間の各社の決算をみますと2期連続経常利益増益を達成しているのは61社中21社。 そのうちの9社が銀行業、つまり、最も好調なのは銀行業という結果になっています。 東北地方の銀行業は13社ありますが、1社を除き全て増益傾向にあります。 ただし、銀行業の増益要因は、2012年11月からの株高、いわゆるアベノミクス相場にありそうです。 その他の2期連続経常利益増益企業の業種は建設業が3社、電気機器とサービス業が2社ずつ。 残り5社は業種バラバラで1社ずつとなっています。 建設業の3社は復興需要に絡んだものと予想されます。 反対に、東北地方で最も上場企業数が多い小売業は苦戦している様子が窺えます。 14社のうち、増益傾向と言えるのは2社のみで、5社は前々期から2期連続経常利益減益、残り7社も減益基調です。 震災直後の特需が落ち着いた後は、大都市圏で言われるほど個人消費が伸びている訳ではない、というのが東北地方の経済の実情なのではないでしょうか。

ところで、苦戦を強いられている小売業の中で2社は増益傾向と言いましたが、そのうちの1社を少しご紹介したいと思います。 社名は株式会社フジ・コーポレーションといい、自動車のタイヤとホイール販売専門の店舗を東北、関東中心に直営で展開している企業です。 1999年に店頭公開し、2004年にジャスダックに上場。 上場後は直近期まで継続して増収を果たしてきています。 店舗に行くと、大口径のアルミホイールが陳列棚に大量に並んでいて、カスタマイズが好きな人には垂涎ものかもしれません。

フジ・コーポレーションの販売面での特徴として、アルミホイールの通信販売をしているウェブサイトがあります。 そこで自分のクルマと同じ車種のCGを選び、商品のアルミホイールのCGと自由に組み合わせてシミュレーションできる、ホイールフィッティングルームというコーナーがあり、また、購入者にはアルミホイールを履かせたクルマの写真を撮影して、通信販売のウェブサイトに掲載してくれるサービスがあります。 このようなクルマ好きにターゲットを絞って、彼らの心をくすぐるような販売手法を考案しているのが継続的な成長の要因の1つだと考えます。

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また、在庫の豊富さはアルミホイール専門店と銘打つだけあって、他の大手カー用品チェーンの店舗が、フジ・コーポレーションにアルミホイールを注文していたりします。 当然ながら、商品の調達と在庫管理のノウハウに成功要因が隠されていると考えられます。 現在、店舗数は30~40店舗であり、まだ出店余地があることを考えると、今後の成長可能性が十分にあるのではないかと注目しています。

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執筆者

安住 昌紀 氏

株式会社エスネットワークス札幌支店長 安住昌紀 氏

北海道大学経済学部卒業。公認会計士・税理士。大手監査法人等を経てエスネットワークス入社。経理BPR、内部統制整備支援、上場企業へのディスクロージャー支援、バリュエーション、デューデリジェンス、事業再生計画策定等の業務に多数従事。地域企業への財務面・経営管理面に関する多様なサービス提供を通じ、地域経済活性化への貢献を目指す。