オーナー会社の管理論

1. オーナー会社とは?

「オーナー会社」と聞くと、皆様はどのようなイメージをお持ちになりますか。 昨今では、不正についてクローズアップされましたが、オーナー会社の中には、その特徴を生かして躍進している企業も多く存在します。 本記事ではオーナー会社を、社長自身ないしは社長と懇意の人が自社株式の大半を保有している会社と定義し、オーナー会社とその性質を生かした管理論を検討します。 オーナー会社と非オーナー会社を比較すると下の表のような特徴が考えられ、その特徴の根幹には、「支配比率の高さ(他の少数株主の影響力の低さ)」、「社長の任期が明確でない」、「創業経験」等が挙げられます。

オーナー会社・非オーナー会社比較表

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2. オーナー会社が抱える課題と管理方法

1.?迅速な意思決定

管理方法

1. ゆとりのある人員計画、リソース補填のためのリクルート強化、アウトソースの利用(会社OB、従業員親族友人、取引先、業務委託)
人員計画にゆとりを持つ、または、弾力的に頼めるネットワークを構築することができれば緊急案件に機動的に対応できます。

2. 業務フローのアナログ部分(手作業中心、人海戦術的業務)の見直し・IT化
定期的に実施する業務(例:経理月次、経費申請業務、債権管理、勤怠管理等)に手作業が多い場合、スピードに対応できなくなる可能性があります。 業務行程を見直し、必要に応じてIT化させる必要があります。

2. 長期的な目線での取り組み

オーナー社長の多くは、過去の苦境やこれからの夢の話を伝えることを好みます。 それは、長期的に重責を担ってきた歴史があるからに他ならず、会社と社長の歴史や過去の失敗談を社員に伝えることは、社員の士気の向上、また今後の会社の発展のために有意義なものであるといえます。

管理方法

中期経営計画の策定
中期経営計画の策定の中で現状を分析する必要があり、会社の歴史を振り返ることで成功体験と失敗体験を整理します。
中期経営計画を次世代の幹部社員と議論することで、会社の将来方針について理解を促し自覚を持たせます。

3. 人情的管理

オーナー会社はファミリー経営であるケースも多く、企業の社員を集める際に一定の同質性を求める傾向にあります。 一方で、変化を求めるために新しい専門的な血が必要とされることがあります(本社スタッフの専門家、外部顧問)。 ここで、新しい血と古い血の融合が問題となります。  新しい血は本社スタッフや管理部に多く、古い血は営業や現場に多いため、管理(本社)と営業(現場)を分断するきっかけになります。

管理方法

新しい血と古い血の融合のために施策
新しい血と古い血の融合のために社内イベントを増やしてコミュニケーションを活性化させることが重要となります。
たとえば、社員旅行、新年会、忘年会、部署ローテンション、人事異動、横串のプロジェクトの実施(中継経営計画策定プロジェクト、美化委員会)などを行うことで、各社員間で、普段やり取りする社員以外にも交流が広がることとなります。

4. 主体性と追及心

オーナー社長は主体性と追及心をメンバーに求めますが、主体性については、社員に求めれば求めるほど、求められた社員は主体性というプロセスではなく成功という結果のみに執着するようになり、結果的に主体的に考えずに過去成功した経験を当てはめようとする、いわゆる主体性のジレンマが発生するという側面があります。
また、社員自身に考える時間を増加させるためには、労働時間が増加します。追及心については、社員のこだわりと社長のこだわりが相対した場合、社長のこだわりが優先され社員の主体性が低下することがあります。そのまま、社長のこだわりが時間の経過により客層の変化等でニーズから乖離が生じた場合(社長目線≠(現場目線=現場ニーズ))に、業績が落ちることがあります。

管理方法

1. セグメント別損益の提示
各事業、業務の責任者を明確にします。そして、責任者別に管理できる収益・費用を集計して責任者別損益計算書を作成し、定期的な確認報告会を行います。
報告・確認会では振り返りと次の施策を検討します。
責任者が管理する損益だけを集めることで施策の効果を測定しやすく、その内容を検討する報告・確認会を含めて主体性を確保するシステムとなります。

2. 新規事業やアイデアの社内公募、立候補制
自ら手挙げて、または意見を出してもらうことで主体性を促します。

3. メンバーが考える時間を強制的につくる
日々の業務に忙殺されないように、合宿、研修、コーチング等を会社主導で実施します。

4. 権限移譲
権限をメンバーに委譲し、委譲した内容については口を閉じていただきます(大変難しいことだとは思います)。

執筆者

小林 慶一 氏

 小林慶一 氏