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ますます身近になるアジア進出

SINGAPORE - JUNE 22, 2014: View of Singapore Merlion at Marina Bay against Singapore skyline. Merlion is a well-known tourist icon, mascot and national personification of Singapore

2014年はなんといってもアジア進出が注目された年と感じました。大手マスメディアでのアジアの紹介も増大した年です。
日経新聞がアジアBIZを火曜日から土曜日まで掲載するようになったり、BSジャパンではアジアン・タイムズが放映開始されたり、NHKのアジア立志伝も2013年に続き継続されていたりしています。アジアについて検討する、考える機会が増大したのではないかと思われます。
果たして2015年以降はどうなりそうか、アジアの中でもどこが有力かということを考えていきたいと思います。

1. 2015年以降のアジア展開意欲はどうなりそうか

筆者は普段、ベトナム進出を検討している企業経営者や銀行の海外進出支援担当者にお会いする機会が多いです。 2014年秋以降の急激な円安傾向で海外進出意欲が下がるのではと考えておりました。 しかし、どうもそうではない雰囲気です。
そこには、大きく2つの背景があるようです。 1つ目は、アベノミクス3本の矢の3本目である「成長戦略(日本再興戦略)」の「日本産業再興プラン」の中の「中小企業・小規模事業者の革新」の施策の1つとして掲げられていた「2013年10月からの5年間で新たに1万社の海外展開を実現することを目指す」という政策の影響です。 この政策により政府、自治体が中小企業等の海外進出を積極的に支援していることがアジア展開を後押ししていると思われます。
2つ目は、関東エリアの企業ですと東京オリンピック後の売上減少可能性を予測し、体力のあるうちに、アジア中でも東南アジアへ進出し、2021年以降に備えるというものです。

2. 注目の東南アジアの中でも、どこがよさそうか

今注目の東南アジアはASEAN加盟の10カ国です。 一言で東南アジアと言っても実は、この10カ国は海のASEAN、陸のASEANというように大きく2つのグループに分けることができます。 海のASEANは海洋国家で、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ブルネイの5カ国です。 陸のASEANはインドシナ半島で陸続きのタイ、ベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマーです。
海のASEANは、アジアNO.1の1人当たりGDPを誇るシンガポール、2012年に1人当たりGDPが1万ドルを超えたマレーシアに代表されるように陸のASEANと比較して先行して経済成長を遂げています。
一方、陸のASEANは、海のASEANと比べ成長が遅れておりました。しかし、ここ数年は陸のASEANの中で成長が遅れていたCLMV(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)が進出先として注目されるようになってきました。
それではなぜ、陸のASEANが注目され出したのか、その中でも現状どこが候補先として魅力的かを紹介していきます。

3. 陸のASEANが注目され始めた理由

陸のASEANが注目され始めた理由は、3つの国境をまたぐ経済回廊の整備により、まさに市場が一体化するためです。 本年2015年末に、ASEAN全体が参加するASEAN経済共同体が発足します。 EUのようにヒト・モノ・サービスの自由化で、地域内の活性化が期待されております。 中でも陸のASEANはタイのバンコクからラオスを経由し中国の昆明を結ぶ南北経済回廊(ハノイ⇔昆明ルートも有)、ベトナムのダナンからラオス・タイを経由してミャンマーのモーラミャインを結ぶ東西経済回廊、ベトナムのホーチミンからカンボジアを経由してタイのバンコクを結ぶ南部経済回廊により、物流の効率化が可能となります。
陸のASEANに進出する場合は、進出した1国1国での生産や販売の戦略を考えるのではなく、タイ、ベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマーの経済成長段階を考慮し、国境を越えたサプライチェーン等を考えて進出することが重要になってきます。 例えば、高付加価値品はタイで生産し、低付加価値品はベトナム、カンボジアで生産するという日系企業も増えてきております。

4. 陸のASEANの中での注目国は?

陸のASEAN各国の指標の比較から、現状、進出を検討するのにどの国が良いかを考えていきたいと思います。 生産拠点、販売拠点としての進出を考える場合、最も重要なのは人口かと思います。
陸のASEANの中で、人口上位3カ国はベトナム、タイ、ミャンマーの順です。 カンボジア、ラオスの場合は、人口が各々1500万人、700万人と数的には労働力、販売市場としては他の3カ国より魅力が低いと言わざるを得ません。 ここからは、人口の多いベトナム、タイ、ミャンマーを比較していきます。

1. 生産拠点として考える場合、どこが良いか

賃金の安さでは、1位ミャンマー、2位ベトナム、3位タイとなります。 しかし1位のミャンマーは、まだまだインフラが不足し、日系企業が進出できる工業団地が少ない状況です。 本年半ば開業予定の三菱商事、丸紅、住友商事等が開発しているティラワ経済特別区の工業団地を皮切りに、工業団地の増加が期待されます。 3位タイは、現地調達率面(52.9%)ではASEAN NO.1を誇っていますが、失業率が0.7%と人手不足の状況にあるのが課題です。 2位ベトナムは、現地調達率(27.9%)ではタイに劣るものの、人口が陸のASEANの中で最も多いこと、失業率はタイのように低くないこと、賃金がタイより低いこと、ミャンマーよりは各種インフラが進んでいることから、進出検討先の有力候補になるのではないかと思います。 今回は、人口、賃金、失業率に焦点を当てて検討しましたが、実際には、各社の事情により原材料の調達のし易さ、工業団地の価格、投資ライセンスの取得しやすさ、優遇税制等を総合的に調査頂いた上でのご判断になるかと思います。

2. 販売拠点として考える場合、どこが良いか

国全体のGDP、1人当たりGDPの高さでは、1位タイ、2位ベトナム、3位ミャンマーとなります。 故に、販売拠点としては、今は陸のASEANの中ではタイが有力候補になるかと思います。 但し、伊藤忠商事と提携したタイのチャロン・ポカパングループのようにタイの内資企業で小売分野に強い企業も出現し始めており、そのような力のある企業がASEANでの展開を狙っています。 販売拠点として市場参入される場合は、日本での出店同様に現地の市場調査が重要になってくると思います。

●陸のASEANの基本データ
出典:2014年12月時点JETRO、外務省、IMF
※12年度/13年度IMF推計

●陸のASEANの雇用環境比較
出典:(賃金)2013年10月時点JETROの投資コスト比較データ、(祝祭日)各種HPより
※上記職位の月額給与は2013年度の金額

制作協力:株式会社マイティ・マイティ

執筆者

香取 賢一 氏

 香取賢一 氏