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事業再生における管理体制の整備について

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主に中小企業を対象とした再生事業を行ってきており、DDや再生計画の策定支援、そこからの計画の実行支援を通した再生に携わっている。その中で、特に管理体制に着目した場合におけるポイントについて言及をしてみたい。

管理体制の未整備

総論

基本的には中小企業は管理体制が未整備の会社が多い。特に再生の対象会社ということになると、ほぼ100%管理体制が未整備である。 では、管理体制の未整備とはいったい何であるか?やみくもにデータだけあるのでは意味がない。必要な情報を、必要なときに、意思決定に必要な人員及び組織体に提供できて、タイムリーで的確な意思決定ができることが重要である。中小企業の管理体制に合わせた、適切なスペックの(オーバースペックでない)管理体制とはなんであろうか。

再生とは

再生においては、金融支援(ニューマネー、リスケなど)で時間(時間切れとは資金切れ)をもらい、その間にアクションプランを実行してPDCAを回していく。結果として、もらった時間内に、事業が改善されれば、事業の継続とともに時間が伸びていく(資金繰りが改善していく)ので再生が達成されるということになる。 そのため、管理体制においては 1.時間を適正に計れること(資金繰りの管理)、と2.事業そのものを改善するために必要な管理機能の2つに大きく分かれることになる。 今回は、その中で1.時間を適正に計れること(資金繰りの管理)について言及したい。

時間を適正に計れること(資金繰りの管理)

再生に必要な時間を確保するために、我々は金融機関との再生計画とそれに伴う金融支援にかかる交渉をすることになる。その場合においては、その会社が再生するまでにどの程度の時間がかかるのか、その時間までに必要な資金はどの程度なのか、を把握する必要がある。そして、その実行の中で、必要な時間・資金がしっかりとマネージされていく必要がある。 その資金繰りのマネージが以下のポイントである。

1. 月次資金繰りの実績管理と、今後数カ月(業種による)の見通しができていること。

月次ベースでの資金繰りの将来見込みを把握できるようにすることは、特に再生段階における会社においては必須である。 資金繰りさえ持てば、組織が根本再生するまでの時間が確保できるからである。どれだけ先の資金繰りまで見通せられればよいか、という点についてはその会社がどのような事業であるかにもよる。比較的安定した資金の動きをする事業であれば、今後2~3カ月程度をしっかりと見通せられれば問題の大半はクリアできる。
ただし、たとえば水産加工業のような、季節変動性が激しく、かつ商材ごとにことなる在庫を抱える必要がある事業の場合においては、丸1年間の資金繰り、特にそのような材料調達によるキャッシュアウト、売上の季節変動を加味した資金繰り予測を常に追っていく必要がある。
そのような会社においては、資金繰り計画とは、すなわち調達計画でもあり、営業計画でもあるということになる。 これらをリンクして、先の資金繰りを把握することが再生のために必要な時間を持つということに繋がる。

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2. 月中の資金繰りの動きの傾向が把握できていること。

これは、上記1 に加えて必要なことである。 特に、月次の資金繰り管理をしていき、毎月末の残高がプラスであるため、「ギリギリだが資金繰りは回る」と考えていたが、25日の給料払い等を受けて入金が月末に多い会社については、月末前が資金のボトムになる傾向がある。 その場合、そのボトムの水準がどの程度なのか(月初に50Mの残高で、29日に残高が0になる場合には、ボトムの水準が△50M)を把握する必要がある。 そして、月中のボトム水準が△50Mならば、月次資金繰りにおいては最低限毎月の残高が50M、及び最低限の余裕を10M~30M程度は維持しておきたいところである。 全体の傾向感については月次資金繰りでとらえておいて、月中についてはこのような月中の資金傾向を把握しておくことでおおむねのリスクはカバーできる。

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●例外:建設業・造船業等

ただし、建設業や造船業など、売上を構成する個別案件の金額が大きい場合には、個別案件における材料調達や、稼働の状況、売上金額の入金条件に資金繰りの大半が左右されることとなるため、個別案件ごとの資金の動きを把握して、それらを総合したものとしての資金繰りを管理する必要がある。
そして、それらの入金予定日や支払予定日などは、個別の契約に左右されるため、資金繰り管理においては日次ベースでの管理が望ましいと考えられる。

●例外:再生の対象会社

私のような再生コンサルタントにおける実務的な話になってしまうかもしれないが、特に再生の局面においては、DD、計画策定の手続き中においても資金繰り状況の把握を常に行っておかないと、いきなり資金繰りに窮して案件終了という憂き目にあわないとも限らない。 そのような、特に資金繰りが厳しい先については、日繰りによる資金繰り管理が必須である。
そして、DD、計画策定といった、会社の根本改善に必要な手続きを完了させるまでの間の資金については少なくとも計画提示前の段階で個別交渉により確保する必要が出てくる。 そのような個別交渉については別の機会での説明としたいが、そのような必要性を把握できるか否かについても、会社または我々のようなコンサルティング会社が、資金繰りを日繰りベースで把握できていなければ成しえないことである。

3. 資金繰りの把握のための情報共有の体制・仕組みがあること。

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資金繰りの適切な把握のためには、資金繰りを把握するための管理部門と、特に、売上予定・入金情報を把握している営業部門、購入や外注等の発注を行う購買・調達部門との情報連携が必須である。
特に、資金繰りがタイトである状況においては、これらの部門との情報共有を綿密にして、入金予定、支払予定の情報が正確である、またはどの程度の変動余地があるのかを把握しておくことが必要である。

資金繰り見込みに対するスタンス

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当たり前の話ではあるが、資金繰りの情報の整備においては以下の原則を踏まえる必要がある。

1. 入金予定は控えめ、かつ想定される範囲の中で最も遅いタイミングで入金される見込みを立てる。
2. 支払予定は、(支払確定分で支払処理完了のものを除いては)金額を想定される範囲の中で最大に、かつ最速の支払いをベースに見込みを立てる。

上記1、2 を踏まえた資金繰りを検討の土台としてまず作成をして、それをベースとしてどの入金を前倒ししてもらうか、どの支払を先延ばし(信用状態にかかわるので奨励はしないが)できるのか等、資金繰りのための具体的施策を検討するという順序となる。

執筆者

新宅 剛 氏

 新宅剛 氏