IoTによる 攻めと守りの“SAKE”マーケット

01.日本酒のグローバル化

日本国内における日本酒の消費量は年々減少傾向にあるものの、昨今の海外における和食ブームを追い風に海外での日本酒ブームが起きており、日本酒の輸出額が増加している。また、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)により関税が即時撤廃されるため、今後益々日本酒のグローバル化が進むと考えられる。

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グラフ:清酒の輸出金額推移(出典:財務省貿易統計、国税庁「酒のしおり」)

02.日本酒のグローバル化による課題

日本酒のグローバル化が進むと、以下のような課題が考えられる。

1.品質の維持
2.偽物の防止
3.多品種少量生産の酒蔵のブランディング
4.マーケティング方法

同じアルコールであり、既に世界へ販売されているワインは商社によるマスマーケティングが主流。日本酒もコモディティ化した商品は商社によるマスマーケティングが適していると考えられる。私は酒どころである新潟県で生まれ育ち、越乃寒梅や〆張鶴、麒麟山などの銘酒が生まれる環境が身近にあった。これらの優れた酒蔵で製造された日本酒は高付加価値商品であり、日本の文化財ともいえ、また新潟生まれとしての誇りでもある。それらブランドの日本国内での拡大はもちろん、海外への拡大も願うとともに、そのブランドを守る事も非常に重要と感じる。また多様な消費者の存在や日本酒にも大吟醸、純米酒、辛口、甘口など様々な酒類、特徴がある事から、マスマーケティングはそぐわないと考えられる。そこで、海外消費者に対し高付加価値な日本酒を安全、効率的に結び、かつ酒蔵と消費者をOne to oneで結ぶSCMシステムが必要となる。

03.IoT による日本酒物流の見える化

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昨年、流通システム開発センター、日本IBM、大和コンピューター、凸版印刷、慶応義塾大学が日本酒の流通経路を可視化し、製品の偽造品対策、品質管理、現地消費者との情報共有の拡充などを目的とした実証実験が行われた。実験の内容は、瓶にEPCタグを付け、GS1標準のEPCISという技術を用いて、どの製品が、いつ、どこに、どのような状況で届いたかという物流データをクラウド・システムに収集するというものである。この実験は前述した課題解決になり得る事を証明した。

1品質の維持という課題に対しては、日本酒が蔵元から出荷され、タイの日本酒輸入エージェントに届くまでの温度を表示することで、輸送中に温度変化をあまり受けない日本酒の品質を示す事が出来た。
2偽物の防止という課題に対しては、GS1標準のEPCISという技術で対応可能である。不正製品はサプライチェーンの要所要所において正しくリーダで読まれていないため、製品が移動したといったモノの流れを示すデータがクラウド上のコンピュータ・サーバーに書き込まれていないことから問題製品だと把握が出来る。また、途中で中身が入れ替えられるという問題に対しては、日本酒のボトルキャップにEPCタグを付け、キャップが開けられるとタグが壊れてしまう仕組みで対応可能である。
3多品種少量生産の酒蔵のブランディングとマーケティング方法については、現地消費者と日本酒および酒造メーカーをソーシャル・ネットワークで繋ぎ、SNSで消費者の声を蔵元に伝えるデモを紹介した。また、EPCタグに印字したQRコードをスマートフォンで読み取る事でWebページから日本酒に関する情報やそれに合う料理などを発信する事が可能となる。

04.IoT+ SAKE の可能性

マーケットのグローバル化が進む今、旨い日本酒がより世界に進出する鍵として日本酒産業におけるIoT+クラウドが大きな役割を果たすのではないかと注目している。その理由は無線IoTデバイスの開発、電子タグなどの国際標準化の発展により「守りの技術」が進んでいる事。
また、「攻めの技術」であるPaaS型ベンダーの出現により、CtoCマーケットが可能となり、蔵元自身が顧客を選択出来るのではと考えるためである。

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日本酒業界とIoTの親和力により、蔵元の規模を問わず、世界中の人に「日本の”SAKE”は旨い!」と言ってもらえるマーケットが作られる事を、日本人としてまた酒どころ新潟出身として今後も目が離せない。

執筆者

谷井 巧 氏

株式会社エスネットワークス経営支援第1事業本部 谷井巧 氏

公認会計⼠試験に合格後、エスネットワークスに入社。酒どころ新潟の出身であり、日本酒の旨さに感動してからは大の辛党に。将来、地元新潟の企業を盛り上げるべく経営コンサルタントとして常駐による経営企画、経理支援等の実務を行う。