ヒットタイトルの国際的e-sports化

01.ゲームで遊ぶことで収入を得る新しい職業「ゲームプロモーター」の出現

スマートフォンやSNSの双方型コミュニケーションの成熟によって、ゲームを開発し世の中に提供するのではなく、ゲームで「遊ぶ」ことで、収入を得るゲームプロモーターが出現した。

プロゲーマー企業等とスポンサーと契約を結び、スポンサー企業の広告活動をしながら、賞金付きの大会等に参加し、ゲームプレイで生計を立てる。日本人プロゲーマーの代表例は2010年に格闘ゲーム「ストリートファイターシリーズ」で優勝した梅原大吾氏であり、その後続々とプロ契約を行う日本人が現れ、その他、シューティングゲームやトレーディングカードゲーム等のジャンルで数十名ほどのプロゲーマーがいると推定される。
実況プレイヤーYouTubeの広告収入やニコニコ動画の有料チャンネル収入によって稼いでいるゲーマーがいる。彼らはゲームそのものの腕ではなく、トークやパフォーマンスに工夫を持たせることでゲームと自身の人間性・またはその関係性の魅力を伝え、視聴者の共感を呼び再生数を稼ぐ。

02.?ゲームプロモーターは、設置型ゲームのヒットをも左右する存在となった

任天堂がWii Uで発売した「スプラトゥーン」というゲームを紹介したい。このゲームは簡単に言うと、2色の4対4のチームに分かれ、フィールドをチームの色で塗りつぶしていくというゲームである。任天堂の中では、「マリオ」や「ゼルダ」等の人気のシリーズではなく、完全新規で大ヒットを生んだ、貴重な作品である。ハードの売上の牽引力となっており、それはスプラトゥーンをやりたいからWii Uを買う、というユーザーが多いという証拠である。任天堂によると、同ソフトの9月末現在での全世界累計販売数は世界で242万本、国内では86万本となっている。売れた要因はTVCMによる販促や、前年に発表が行われたゲームショウでの高評価もあるだろう。

しかし、明確に他のヒットタイトルと違う点がある。それは5月28日発売から半年以上が経過した執筆日現在でも、推定週販が1万本以上を記録しており、売れ続けているということである(ファミ通.com調べ)。第1週目の売上が本数14万4千本であるが、昨年12月6日に発売されたWii U版の「スマブラ」は国内における第1週目の売上本数が22万7千本であり、2015年3月末時点での累計売上本数が67万本であったことを考えると、いかに「じわじわ売れてきている」かがわかるだろう。

その火付け役の裏には、実況プレイヤーとのコラボがある。スプラトゥーン発売以来、毎日のように実況動画がアップロードされ続けており、その実況動画がいつもそのジャンルにおけるランキングの上位を独占しているのである。この要因として、スプラトゥーンというゲームが、そもそもわかりやすく、見栄えもよく、実況に向いているという点が挙げられるろう。

しかし、その裏には実は任天堂は2014年5月にyoutube上での配信を認め、同年12月にはニコニコ動画で「クリエイター奨励プログラム」に対応するなど、ユーザーが自社のゲームを宣伝し、収益を得ることをむしろ歓迎する方向に舵取りをしているのだ。

自社の著作物の取扱いに厳しいと言われる任天堂であったが、実況プレイヤーとwin-winの関係を作り、効果的にユーザーによる宣伝を狙うようになり、業績不振を脱しつつある。

他にも、格闘ゲームでは主要タイトルのプロモーションにプロゲーマーを用いるのはもはや定着しきっている。

03.ゲーマ―が語る”イケてる”タイトルの条件

筆者はプロゲーマ―ではないが、過去に対戦型ゲームの国際大会にも出場し、上位入賞した経験もあるゲーマーである。
オンラインゲームにしろ、設置型ゲームにしろ、“イケてる”タイトルと出会って、はじめてゲーマーは輝くと考えている。筆者の偏見であることを理解してもらいたいが、近い要素はほとんどのゲームにおいて当てはまるのではないだろうか。筆者なりに、“イケてる”タイトルの本質を考えてみた。

01「盛り上がる瞬間」がある

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おそらく最も重要な要素ではないだろうか。例えばストリートファイターシリーズでは極限状況でのじりじりした駆け引きの中で、真空波動というのは脳汁が出る状況である。上述のスプラトゥーンにおいても、残り20 秒ほどで、溜まったゲージでダイオウイカになり敵を一掃した後、敵陣地の色を一気に塗り替えて見事、逆転勝利!となったときの気持ちよさはハンパじゃない。

02.自己表現ができる

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対戦系のゲームの醍醐味には自己のスタイルを無言の主張として前面に押し出すという側面がある。最近は対戦ゲームと言えばネット対戦を行えることが当たり前で、ソーシャル性も相まって、よりその傾向が強い。キャラクターや武器の組み合わせに、それを操る人の腕という個性を出した上で、差別化を図る要素がふんだんにある。
スプラトゥーンであれば自分のブキを決めた上で、「陣地を塗る力」と、「相手を攻撃して、塗らせない力」を重視するかといった選択肢がある。そして、そのようないろいろな個性が生まれる土俵が整っているゲームはやり込み要素(技術状況対応キャラ対策)が深いゲームとなる。

03.いつでもやめられるが、いくらでもやれる

ゲーム性にもよるが、概ね区切りのつく1試合が3 分以内くらいのゲームがいい。熱が上がり切って、冷めるまでを与えないくらいの時間だからだ。「もう 1回!」とやりたくなる。けれど、友人や恋人からLINEが来たらすぐに中断できる。用意するのは自分の腕と少しの空き時間だけで、遮るものは何もない。RPG のように、時間をじっくり確保したりする必要性や、手に入れたアイテム整理に追われるなどということもない。

マニア向けであれば、10分以上の集中力を問うゲームもありかもしれない。しかし、一般層への訴求力や、ゲームを観戦する立場を考慮すれば、やはり長いのだ。

更なるエンターテインメント性の付与で
ゲーム業界に活気を

米国や韓国では対戦ゲームのエンターテインメント性が認められ、e-sportsとして、オリンピックの競技種目になるようなスポーツの大会にヒケをとらない賞金総額となる大会が行われている。それに対し、日本には優れたゲームタイトルがあるのにもかかわらず、ゲームに対する見方の違いからe-sports後進国となっている。

海外ではe-sportsが成長産業となっているため、日本においても成長産業としてのポテンシャルは間違いなくあるはずだ。規制等の問題もあるが、日本国内におけるe-sports市場が成熟するためには、伝道師となる質の高いプロモーターが必要ではないか。情報を発信する、環境を与える、ゲーマーの育成・活躍するフィールドを提供する、などにより、ゲームの文化的地位向上とクリエイターとユーザーの間をつなぐプロモーターも必要となる。

東京アニメ・声優専門学校が2016年4月から「プロゲーマー専攻」学科を設置するなどが話題となったが、プレイヤーでないプロモーターも出現し始めている。ゲーマーだけでなく、新たなヒット作の発掘に寄与し、日本発のゲームが国際的なe-sportsにも寄与するような仕掛けをつくることが、国内e-sports産業の発展に必要だろう。

執筆者

崎元 惇 氏

株式会社エスネットワークス 経営支援第2事業本部 崎元惇 氏

公認会計士試験合格者。幼少期からテレビゲームに熱中し、中学2年の時にストリートファイターZERO3の全国大会・日米対決のテレビ放送に影響され、格闘ゲームに本格的にのめり込む。“white”というRingNameでカプコン格闘ゲーム日米戦(MARVEL VS CAPCOM 2)や世界的大会であるEvolutionの前身であるB5、闘劇等への参加経験を持つ。