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ゼロからのMBO。ドラマチックなディールの先に見た経営の本質とは 株式会社ALBA 代表取締役社長 島崎 陽氏

この記事は2014年2月発行のREVOLVING DOOR vol.3より転載しております。
なお、インタビューさせて頂いた株式会社ALBAは、2017年1月に株式会社パーゴルフと合併し、
現在はグローバルゴルフメディアグループ株式会社と商号変更をしております。

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株式会社ALBA 代表取締役社長
島崎 陽氏

1999年、ダブルクリック株式会社へ入社。営業を経験する。
2002年、株式会社オプトにてリスティング広告事業などの数々の新規事業の立ち上げを経験後、
オプト社初のM&Aである株式会社ALBA買収の陣頭指揮を取り、成功に導く。
2005年11月、ALBA社の社長に就任。
2008年11月、MBO(マネジメント・バイアウト:事業買収)を見事成立させ、オーナー社長へ。
現在、中国・台湾への拠点展開など事業を拡大中。

ゴルフ専門誌ではトップクラスの発行部数を誇る「ALBA:ALBATROSS-VIEW」の発行やゴルフ関連コンテンツの企画・開発を行う株式会社ALBAと、
月間約3700万PVを誇るゴルフ専門の総合情報サイト「アルバネット(www.alba.co.jp)」を運営する
株式会社ALBAパートナーズを経営する島崎氏は、2008年にMBO(マネジメント・バイアウト)を行い、
ALBA社の株式65.25%を保有するオーナー経営者となりました。
資金ゼロから果たしたMBO。
その奇跡とも言える軌跡をおうかがいいたしました。

営業を知った新入社員時代

須原伸太郎(以下須原):島崎さんは、インターネット広告配信のダブルクリックで営業をされて、
国内大手のインターネット広告代理店のオプトで経験を積まれました。

島崎 陽氏(以下島崎氏):99年当時はI Tが注目されていた時代でした。
当時のダブルクリックの経営陣はリクルートの出身者で、いわゆるリクルートの営業スタイルを学びました。

経営の側面を知ったオプト時代

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須原:そのあとオプトへ機会を求めて行ったのはなぜですか?

島崎氏:もともと漠然と起業したいという思いがあり、
前職から始めたゴルフが面白くなってきて「起業」と「ゴルフ」というキーワードが頭の中にありました。
当時のオプトは鉢嶺社長を筆頭とした小さなベンチャー企業で、上場をめざしていました。
社長からも上場したら、島崎君のやりたいことに出資するよと言っていただけたので、チャンスをつかめるぞと、オプトへ転職しました。

須原:オプトではどんな経験を?

島崎氏:新規事業を任されました。
米国で流行り始めた検索エンジン広告の部隊を3人ではじめて、
マーケットの勢いもあり、初年度5億円の売上が2年後には約50億円、
その後その事業は300億円規模にまでに成長し、次々と新規事業を任されました。

私としては会社から出資してもらうためには、企業を大きくさせるエンジンをつくらなければいけないですし、
オプトの事業に対して付加価値をつけて、私の実績にインパクトをつけたいと思っていました。

ALBA社の買収へ

須原:オプトによるALBA社の買収も島崎さんの提案ですか?

島崎氏:そのまえに、私のやりたかった「起業」と「ゴルフ」を新規事業として企画書にまとめ、
出資のお願いをしたところOKが出ていました。
鉢嶺社長が入社時の約束を守ってくださって、この新規事業をいざやろうとなったときに、ALBA社買収の話が来ました。
社長も島崎君の新規事業と関連するから話を聞いてきたらと言ってくれました。

須原:すごいタイミングですね。

島崎氏:はい、企画書を出した1か月後くらいの話です。
まさに運命を感じるような出来事でした。

須原:その買収の陣頭指揮を。

島崎氏:自分の企画とALBA社を組み合わせることで、もっと大きな絵が描けると考えました。
でも、オプトとしては紙メディアのALBA社との事業シナジーは考えにくいという考えでしたので、
私はオプトとシナジーが高い企業とJVを組んでALBA社買収に名乗りをあげるシナリオを描きました。
最終的に買収は決まりましたが、JVは事情によって実現せず、オプト1社による買収となりました。

100%子会社の葛藤

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須原:島崎さんが社長として。

島崎氏:はい。オプト社員として社長になりました。
これまでオプトのチーム経営というのを傍らで見て来たこともあり、
雇われ社長でしたが、経営を勉強してみようと思いました。

当時は何の根拠もなかったのですが、チャンスがあれば将来はMBOさせてくださいと鉢嶺社長には話していました。

須原:まったく畑違いの出版事業で、社員の皆さんから受け入れられるのに相当な時間がかかったと話していましたよね。

島崎氏:キャリアも業界経験もなく、年齢も下から数えたほうが早い状態でした。
でも、いま思えば、社員は受け入れたくても受け入れられなかったのだと思います。

当時の私は経営者として、やるべきことがやれていませんでした。
ビジョンもなく、短期・中期・長期の事業計画もない。
そこでやりたいことだけを語っても、社員には「なぜ?」という疑問と不安だけが残ります。

彼らの不安な表情を見て、私が方向性を示していないことに気づくのに1年かかりました。
理解が得られ、ようやく一枚岩になれそうな感覚が持てるまでに更に1年を要しました。

須原:そこからMBOの話ですね。

島崎氏:そうです。
社員と話す中で、どうしてもひっかかることがありました。
それは100%子会社であることです。
私たちがどんなに未来を語っても、結局決めるのは親会社。
では、自分たちの会社にしようじゃないかと幹部社員と合議のうえ決めました。

資金ゼロからのMBO

須原:そのときMBOをするということは株を買うことであり、買い取るためには買ったとき以上の金額が必要だという理解は?

島崎氏:はい、誰もまったくなかったです(笑)。
そもそもMBO自体が分かりません。
調べていくと、私たちが目指している姿はマジョリティを取るMBOだと理解しました。

しかし、手持ち資金はゼロ。
相談した誰もが99.9%無理と言います。
それでも私には根拠のない自信がありました。

だから、いくつものファンドやベンチャーキャピタルなどを回りましたが、案の定、すべて門前払い。
最後に藁をもつかむ思いでお願いに行ったのがUSENグループの宇野会長で、そこで紹介されたのがエスネットワークスの須原さんでした。
君と年齢も近いし若い経営者の野心的な思いを汲み取ってくれるはずだと。

須原:2007年の夏でしたね。

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島崎氏:はい、初めてお会いして、須原さんから出て来た言葉は「難しいと思います」。
でも、次の言葉が違いました。「難しいけれど挑戦してみましょうか」。
門前払いの中、初めての言葉で、成功を半分つかんだ気がしたほどです。

須原:でも、大変でしたね。

島崎氏:大変でした。そもそもが無茶な話です。
手持ち資金はゼロなのに株は50%以上保有すると。
須原さんからも、MBOが目的ならマジョリティをあきらめ、
他の会社からも資金調達したほうがいいのではと助言されました。
でも、やはり僕らとしてはマジョリティを取りたい。

須原:それをあきらめなかった島崎さんがすごいと思います。
依頼主にマジョリティを取ることがMBOの条件と言われれば、
私たちはそれをゴールとした交渉とスキームを追及せざるを得ませんから。

島崎氏: いいえ、でも須原さんのご協力で銀行からの借入の見込みが立ち、
残りをどう調達するかで、何十社もの事業会社を一緒に回っていただきました。
ハワイにいる企業オーナーさんにも1泊3日の弾丸ツアーでお願いに行きましたが、そこでも門前払い。

須原:あの時はまさに、失意のハワイでしたね。

島崎氏:一方で売る側のオプトからもタイムリミットが設けられ、
土日も朝も夜もなく須原さんと駆け回り、夜討ち朝駆けで直談判に行きました。
そして、タイムリミットの日付が変わる1分前に最後の判を押した。

須原:ドラマのようでした。

島崎氏:はい、奇跡の連続でした。

須原:この手のディールは、様々な利害関係者全員がある瞬間でいける!と
判断して書面に判をつかなければ成立しないこと。
とにかく執念深く島崎さんがあきらめなかったから、このMBOは実現できたと思います。
でも、成立した10日後にリーマンショックが起きました。

島崎氏:10日遅れていたら、なかった話です。
二度とできないMBOです。
本当にたくさんの方のご協力があり、皆さんの情熱がうまくひとつになって成立しました。
何よりもエスネットワークスさんのハートを感じた仕事でした。

須原:こちらこそ、ありがとうございます。これまでのおつきあいの中で、島崎さんにとって私たちはどう映っていたのでしょうか。

島崎氏:感じたことを素直に言えば、身の丈で相談できる存在です。
どうしてもコンサルや金融機関は敷居が高く、かしこまってしまいますが、エスネットワークスさんは肩肘張らずに、普段のままで相談できました。

社員の幸せの追求へ

須原:では、ドラマチックなMBOを経て、オーナーになって見えた景色はどのようなものですか。

島崎氏:それは社員の幸せを真摯に考えていかなければいけないということです。
社員の幸せのためには、まず経営が順調であり、事業の成功が必要で、成功のために戦略や手段が必要となる。
こうしてブレイクダウンしていくと、私たちは何のために仕事をしているのかという理念にたどり着きます。

私たちはゴルフを通じて豊かな社会をつくること。
そして、社員たちは精神的にも経済的にも豊かになることをめざす。
物心両面の豊かさの追求がなければ本当の幸せはないと思うのです。
これは雇われ社長時代には気づけなかった視点です。

須原:ALBA社の今後の方向を教えてください。

島崎氏:次の3つの目標で発展していきたいと考えています。
まず、主力の出版事業で圧倒的シェアを獲得し国内No.1となること。
次に新規事業として、様々な媒体やデバイスに対応したゴルフ・コンテンツを提供するコンテンツプロバイダー事業を確立すること。
最後は中国と台湾拠点を足がかりにアジアのゴルフマーケットを広げていくことです。

須原:最後に経営者の皆さまに一言いただけますでしょうか。

島崎氏:私が言える立場にはありませんが、常に意識している3つのことをご紹介させていただきます。
1つ目は会社の強みを更に強くすること。
2つ目は最悪のケースを想定したキャッシュフローのシミュレーション。
3つ目は社員のモチベーションの向上。

私も完璧にはできておりませんが、この3点は常に意識しています。

須原:ありがとうございました。

編集後記

島崎さんのMBOは、まさに奇跡の連続でした。
1年の間にディールブレイクした回数も、1度や2度ではありません。
成功したポイントは、島崎さんが「最後まであきらめなかった」こと。
これに尽きます。
実際FAとして私自身が何度あきらめようと思ったことか(笑)。
そういう意味で、経営者に必要な「最後まであきらめない。成功するまで続ける」という資質を島崎さんは備えています。
島崎さんの経営者としての今後の更なる進化を、ALBA経営陣の一員として、これからも見守っていきたいと思います。

制作協力:株式会社マイティ・マイティ

執筆者

NEXT CFO 編集部

 NEXT CFO編集部

経営者・管理職にCFOの役割を広めたい!CFOが活躍する社会をつくることで、日本経済を活発にしたい!そんな想いでNEXT CFOのメディアを運営しています。