アジアを考える・知る ~シンガポール 前編~

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昨年2015年より私が所属するエスネットワークスで、シンガポール子会社を本格的に稼働いたしました。
実際に日本のビジネスを海外に持って行って痛感したのは、海外でのビジネスにおいて大切なことは、
いかに進出先の国・人・企業等と良い関係を築けるかに尽きる、ということでした。
どうすればもっと進出先の国のことを理解できるか。
現地の社会に入り込み、生の情報を仕入れることができるか。
そう考えた末、私は本年度より、シンガポールにて現地ローカル会計事務所との業務提携を開始いたしました。

現地の人・企業と積極的に交流することで、現地への理解を深め、当社クライアント企業を始めとする日系企業の、
現地でのビジネス拡大のお手伝いをしていきたい。
その観点より、今回、提携先であるBaker Tilly TFW LLPの代表 沈元盛(SIM Guan Seng)氏に、
シンガポールという国、そして当地における日系ビジネスの可能性について、お話を伺ってきました。

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??沈さんから見た、ビジネスの観点からのシンガポールの強みは何でしょうか?

まず、シンガポールの最大の強みは、ビジネスに理解があり、且つ協力的な政府によって、公平で透明性の高い統治がなされていることです。優遇税制や補助金等、企業をサポートする目的の制度が多く整備されていますし、アジア諸国と比べて法律が頻繁に書き換えられたり、予告なく大幅に改正されたりすることもないので、企業側は安心して長期的な視点で事業を計画・運営していくことができます。また、シンガポールは外国企業や人に対して非常にオープンな国ですし、地理的・また港や空港などのインフラ的にも、国内外へのヒト・モノの移動が非常に容易です。シンガポールを拠点にすることで、当地のみならず他国のマーケットにアクセスできることも、ビジネスにおけるシンガポールの重要な利点だと思います。

??シンガポールは昨年建国50周年を迎えました。
シンガポールが、たった50年でここまで成長できた理由は何だと思いますか?

やはり一番大きいのは、強いリーダーシップで国を牽引してきた政府の存在でしょう。シンガポールは一党政治ですが、だからこそ、建国の父リー・クヮンユー氏の時代から一貫して、国の発展を第一に考えた一本筋の通った政策を立案、施行することができていると思います。また、人材育成を重要視し、効果的な教育制度を整える事に注力してきたことも成功要因の1つです。さらに、シンガポールは時代の流れを敏感に捉え、刻々と変わる国際社会の中で生き残るためには何が必要かを常に考えてきました。例えば製造業ですが、以前はシンガポールでも工場を設立して実際の製造作業を行っていました。ですが、今では工場自体はコストのより低い近隣諸国に移し、生産や輸出入などの管理業務等をシンガポールが担うケースが増えています。時代の流れと共に、より付加価値の高いサービスが提供できる環境を整えることで、シンガポールは持続的に成長できているのだと思います。

??シンガポールが現在直面している問題点はどういったものでしょうか?
また、シンガポールはその課題に対し、どのように対処していくのでしょうか?

大きな問題は高齢化です。シンガポールは今では豊かな国ですが、高齢者の中には若い時に満足な教育を受けられず、良い職に就くことができずに、十分な収入がないまま歳を重ね、貧困にあえいでいる方が多くいます。彼らの生活を支えるため、これからシンガポールの福祉や医療に関する支出はどんどん増えていくでしょう。一方で少子化も進んでいるため、就労人口は減少傾向にあります。このアンバランスな状態を支えられる経済基盤を確立することが緊急課題です。加えて、中国やインドなど、近隣諸国の経済・技術が発展している中で、激化する国際競争をどう勝ち抜いていくのかも課題となります。このような諸問題への対応の鍵になるのは、やはり「教育」、つまりシンガポール国民の能力を底上げしていくことだと思います。政府は、国民が自身のスキルを磨き、より付加価値の高いサービスを提供できるようになることを推奨する為、Skills Future Creditという制度を導入しています。これは、25歳以上の国民全員に対し、職業訓練等に使える補助金を支給する制度です。またそれに加え、自ら起業した人に対する優遇税制やサポート制度も充実させています。国民の起業意欲を促進し、会社から仕事を与えられるのを待つだけではなく、革新的なビジネスアイディアを自ら発信・形にして、シンガポールの経済活動に貢献できる人材を育成することが狙いです。

次号では、さらに

シンガポール人から見た日本の印象や、日系企業の当地におけるビジネスの可能性についてお聞きします。

制作協力:株式会社マイティ・マイティ

執筆者

高尾 涼子 氏

es Networks Asia Global PTE. LTD. 取締役 高尾涼子 氏

英国国立レディング大学古典学部卒。英国勅許税理士・会計士。KPMG LLP(ロンドン)の税務サービス部門にてマネージャーを務めた後、エスネットワークス入社。2015年7月より、es Networks Asia Global PTE. LTD.の取締役に就任。現在はシンガポールに常駐し、企業のシンガポール進出支援や会計・税務のランニングサービスに従事。2016年1月からは、監査法人Baker Tilly TFW社ジャパンデスクの責任者も兼務している。