経営者に向ける公の承継と私の相続

日本の相続税収の減少と増税

平成5年をピークに減少傾向にあったが、高齢化および相続税増税により徐々に上昇していくと予想される。
それに伴って、相続対策をサポートする事業者も増えている。

出典:財務省ホームページ(http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/property/141.htm)

出典:財務省ホームページ(http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/property/141.htm

一方、海外では相続税が存在しない国が少なくない。海外の相続

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そうなると、一部富裕層には、海外に移住することで、相続税の課税回避をもくろむ動きもあるが、日本政府も対策をとっている。平成27年度税制改正により、国外転出時課税制度が創設された。1億円以上の対象資産を所有等している一定の居住者から、日本国外に居住する親族に贈与・相続などにより資産の移転があった場合には、対象資産の含み益に所得税が課税されることになった。

相続セクターのプレイヤーについて

一般的な税務申告手続は、従来から税理士が対応している。しかし、相続税の増税を背景にして、一般富裕層向けの節税コンサルティング、特に、不動産の取得(※)・資産管理会社を活用した節税提案を行うプレイヤーが増加している。特徴的なサービスとして、エスネットワークスが運営する「相続ハウス」は、相続税が多額になる傾向のある東京23区を中心に、駅近に実店舗を設けて、気軽に相続について相談できるサービスを開始しており、各種メディアに多く取り上げられている。
また、企業経営者向けにおいては、相続の際に事業承継を併せて検討する必要があり、専門プレイヤーは事業承継に関するコンサルティングまでを手がけている。
※不動産の人口減少時代における将来の賃料収入の減少リスクも考慮して、相談の際には、信頼性の高いプレイヤーの選択が重要である。

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中小企業における事業承継

日本の中小企業においては、後継者不足が長らく問題となっている。そして、中小企業の経営者と相続人においては、重要な資産は株式であるが、相続を機に株式(≒議決権)が、後継経営者ではない複数の相続人に分散した結果、経営が混乱するケースも見受けられる。そのため、事前に中長期の事業ビジョン、後継者の選定と中長期の育成方針、株式保有の方針、節税スキームなど一体的に検討する必要がある。また、親族・従業員などの事業承継が困難な場合には、M&Aの活用も必要である。

しかし、税務などの一部論点にばかり焦点をあて、全体を見失った提案を行うプレイヤーも散見され、サービスの利用には注意が必要である。

執筆者

藤田 裕史 氏

 藤田裕史 氏