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中小企業の海外進出の考え方【後編】~ベトナムの中間層・富裕層の消費市場をねらう~

前編のまとめ

1.中小企業の海外進出は、事前調査そこそこに、まずは現地で何かをスタートしてみる。
2.現地のことは、日本をベースに事前調査をいくらやっても見えて来ず、現地で何かに取り組んで初めてわかることばかりであり、そもそも中小企業にとって事前調査にかける時間も人材もお金もない。
3.現地での商売ノウハウは現地で実際にトライ&エラーをするなかでしか身に付かないし、現実的な戦略も見えてこない。

1.ベトナムは東南アジアのなかで最も日本人が住みやすい国である

ベトナムに来られたことのない読者の方に伝えるのは難しい面があるのでここで詳細に書くことはしませんが、ベトナムはとりわけその「国民性」と「気候」の面において、東南アジアのどの国よりも日本人が住みやすいと感じる国である、という評価が高いです。
「生活しやすい」ことと、そこで商売をすることとは切り離せない関係です。どんなにビジネスチャンスがあっても、その地の人々といい関係を築き安全に住むことができなければ、商売が長続きしないからです。
そして、多くのベトナム人は、東南アジアの他のどの国よりも、日本人の資質や日本製品について良いイメージを持ってくれている人が多いということも、日本人がそこで商売をするうえで大きな力になります。

2. ベトナム人の所得水準

下の表は、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が2013年2月に発表したレポート(Vietnam and Myanmar Southeast Asia’s New Growth and Frontiers)からの抜粋です。
BCGのレポートによると、ベトナムの中間層・富裕層は、2020年に約3,300万人(現在のタイと同規模)となり、人口の3分の1を超えると予測しています。また、同レポートにおいては、ベトナムの消費者は現時点ですでに、生活必需品ニーズではなくそれを超えた「利便性・快適性」を求める段階に入っており、それは今後飛躍的に拡大する、と予測しています。
またこれとは別の機関の最近の調査結果においては、ベトナムには中間層・富裕層より所得上位で、かつ日本人の平均年収を超える層(超富裕層を含む上位富裕層)が人口の約4%(約360~400万人)ほどいると言われています。

定義
(月間 世帯収入/支出)
中間・富裕層人口(万人)総人口(万人)
2012年2020年2012年2020年
ベトナム収入 1,500万ドン(約7.2万円)?1,240(14%)3,720(34%)8,8609,610
ミャンマー収入 50万チャット(約5.8万円)?540(9%)1,030(15%)6,1106,700
インドネシア(参考)支出 200万ルピア(約1.8万円)?7,390(30%)1億4,090(53%)2億4,8202億6,760
タイ(参考)収入 1.5万バーツ(約4.8万円)?3,550(53%)3,550(53%)6,6506,880

 

3.ベトナム人の所得水準~中間層・富裕層

このような将来的なベトナムの消費市場拡大を狙って、現時点でまずは富裕層市場というある意味ニッチな市場において、日本人の気の利いた要素の詰まった、質の良い商品・サービスを現地で販売してみることから始めてはいかがでしょうか。

特に、ベトナムの上位富裕層や超富裕層と言われている人たちは、平均的な日本人以上にお金を持っていますが、ベトナム市場に通常流通している商品では品揃えも品質も満足できず、限られた輸入品をこぞって買ったり、しばしば海外旅行に出掛けて高級品を買ったりしています。

日本人のお金持ちにも多いですが、ベトナム人のお金持ちもまた見栄っ張りな人が多いですから、他人が持っている物よりもいい物を持ちたい、通常受けられない最高のサービスを受けたいという欲、顕示欲が強いです。また、日本人と同じく、新しい物好きの傾向もあるようです。しかし現在のベトナム消費市場にはその消費意欲を満たす商品サービスの種類が限られており、富裕層の欲求が満たされない状態であると考えてもいいと思います。

このような富裕層向けの高級商品や高級サービスは、あらゆる分野において成り立ちます。例えば、車、腕時計、化粧品、文房具、子供の学校教育サービス、ホテルサービス、旅行サービス、美容室、お酒や食材等の飲食・カフェ、etc…日本で普通に供給・消費されている質の高いほぼすべての商品とサービスがベトナムの富裕層を対象とした商品サービスとして売り込むことが可能です。

4.中小企業ならではのターゲットを絞り込んだ「小規模商売」からスタートするのがオススメ

このようなベトナム市場に高級品を売り込むという中小企業の試みは、実はすでに始まっています。この2年でベトナム最大の経済都市ホーチミン市に、日本でおなじみのファミリーマートとイオンが登場しましたが、そこでは日本で売られているのと同じ商品・サービスがちょっと高い値段で売られています。とりわけイオンモールは、広大な売り場エリアに極めてたくさんの種類の商品が並んでおり、また、クリニック、美容室、飲食店など日本の中小企業がテナントとしていくつも入っているなど「日本品質」の商品を買いに来たベトナム人の所得上位層を狙って事業展開をしています。

5. 中小企業はやりながら試行錯誤するスタイルしかない

大切なことは、そのような商売をある意味勉強だと思って、何でもいいのでまず小さい規模から始めてみて、成長市場であるベトナムで今後どのようなビジネスをしたらよいか確認するということです。逆に、何もしないで日本であれやこれや考え続けていても、このようなアイディアは浮かんでこないものです。
また、ベトナム市場で売れるものを試行錯誤で開発しているうちに、今までは思いもしなかった商品やサービスを生み出すことになることもあり得ます。新しいマーケットでの試行錯誤が新たな商品・サービスを生み出すことにつながります。さらに、ベトナム市場での商売が、陸続きのカンボジアやラオス、さらにその隣のタイやミャンマーでのビジネス展開につながる可能性もあります。これは決して夢物語ではなく、日本を離れたアジアで商売をしていると、自分と同じようにアジアで商売を頑張っている人と出会い、お互いに自分たちのビジネスの話をしているうちに自然と人脈が生まれ、その人脈が新たな商売につながることがしばしばあります。例えば、ベトナムで成功した商品・サービスのカスタマイズ品を、カンボジアやミャンマーなどの近隣国で販売できるようになるかもしれません。

前編・後編のまとめ

1.ベトナムは東南アジアのなかでも取り組みやすい市場であり、かつ将来の伸び代が大きい市場である。
2.中小企業ならではの、中間層・富裕層、あるいは超富裕層の消費市場を対象としたニッチな市場における小規模ビジネスから始めてみる。
3.現地での試行錯誤を通じた商品・サービスの開発が、思いもよらない新規事業を生み出す可能性があるし、カンボジアやミャンマーなどの近隣国市場への販売へつながる可能性がある。
4.日本を離れたベトナムでの商売を通じてできた新たな人脈が、商売の広がりを生むことがある。

制作協力:株式会社マイティ・マイティ

執筆者

木地 陽介 氏

 木地陽介 氏