国境を越えた役務の提供に対する 消費税課税の見直し

電子書籍・音楽・広告の配信などのインターネット等を介して行われる役務の提供を「電気通信利用役務の提供」と位置付け、その役務の提供が消費税の課税対象となる国内取引に該当するか否かの判定基準が、「役務の提供を行う者の事務所等の所在地」から「役務の提供を受ける者の住所地等」に見直されました。

1.電気通信利用役務提供とは

電気通信利用役務の提供とは、資産の譲渡等のうち、電気通信回線を介して行われる著作物の提供その他の電気通信回線を介して行われる役務の提供で、他の資産の譲渡等の結果の通知その他の資産の譲渡等に付随して行われる役務の提供以外のものをいいます(消費税法第2 条第1項第8 の3 号)。

① インターネットを介した電子書籍の配信
② インターネットを介して音楽・映像を視聴させる役務の提供
③ インターネットを介してソフトウエアを利用させる役務の提供
④ インターネットのウェブサイト上に他の事業者等の商品販売の場所を提供する役務の提供
⑤ インターネットのウェブサイト上に広告を掲載する役務の提供
⑥ 電話、電子メールによる継続的なコンサルティング

2.改正前における内外判定の取扱い

改正前のこれらの役務提供については、「役務の提供を行う者の役務の提供に係る事務所等の所在地」が国内である場合、消費税の課税対象とされていました。この仕組みは、消費地課税主義を採用している消費税にあって、いずれも国内消費者が役務提供を受けている場合においても、国内の事務所等からの役務提供には課税され、国外の事務所等から役務提供には課税されないという点で整合が取れていないという問題がありました。

3.改正後における内外判定の取扱い

p14_img01
今回の改正により、平成27年10月1日以後に行われるこれらの役務提供については、「当該電気通信利用役務の提供を受ける者の住所若しくは居所又は本店若しくは主たる事務所の所在地」(消費税法第4 条第3 項第3号、第4項)が国内に該当する場合、消費税の課税対象となります。従って、改正後は、役務提供を行う事業者ではなく、役務提供を受ける者が国内にいるかどうかが判定の基準になります。

4.電気通信利用役務提供とは

課税方式の見直し(リバースチャージ方式と国外事業者申告納税方式)今回の改正に合わせて、一部、課税方式の見直しが行われました。

リバースチャージ方式国外事業者が行う「事業者向け電気通信利用役務の提供」については、その役務の提供を受けた事業者が申告・納税を行うこととされました(「リバースチャージ方式」)。事業者向け電気通信利用役務の提供とは、具体的には、インターネットのウェブサイト上への広告の掲載のようにその役務の性質から通常事業者向けであることが客観的に明らかなものなどとされています(消費税法第2 条第1項第8 号の4、消費税基本通達5-8-4)。ただし、経過措置により当面の間、その課税期間の課税売上割合が95%以上、または、簡易課税が適用される課税期間については、「事業者向け電気通信利用役務の提供」はなかったものとされ、リバースチャージ方式による申告を行う必要はありません(また、その仕入税額控除も行えません)(消費税法附則第42 条、第44 条第2 項)。
国外事業者申告納税方式一方で、事業者向け電気通信利用役務の提供以外の役務提供(消費者向け電気通信役務の提供)については、「国外事業者申告納税方式」が採用され、国外の事業者が日本の税務署へ納付・申告することとされました。消費者向け電気通信役務の提供とは、具体的には、その性質から、インターネット上の音楽の配信、音楽・映像の視聴、および、ソフトウエアを利用させる役務の提供が想定されています。なお、経過措置により、事業者が行った国内での課税仕入れのうち、国外事業者から受けた「消費者向け電気通信役務の提供」については、当面の間、登録国外事業者からの役務提供のみ、仕入税額控除が認められています(消費税法附則第38 条第1項、消費税法基本通達11-1-3(注2))。

 

5.登録国外事業者制度

国外の事業者が行う消費者向け電気通信役務の提供については、「登録国外事業者」から受けたものについては、仕入税額控除の適用が認められます(消費税法附則第38条第1 項但書)。登録国外事業者は国税庁HPにて確認することができます。(https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/shohi/cross/touroku.pdf)
これは、国外の事業者については、当局における納税状況の把握が困難であることから、法令によりその要件が厳格に定められている登録国外事業者については、事業者側で消費税を納めているものとして、仕入税額控除が認められているものです。

es_p14_15_151127_03

p15_img03

6.おわりに

本改正については、「電気通信利用役務の提供」や「事業者向け電気通信利用役務の提供」といった定義について、実務上の取引に当てはめた場合に必ずしも明確ではない部分があり、また、「電気通信利用役務の提供」に該当する取引についても複雑な課税関係を判定する必要があります。
実務上の疑問点が多々生じることが予想されますので、ご不明点がある場合にはお早めに専門家までご相談ください。

執筆者

樋口 雄介 氏

 樋口雄介 氏