適格合併による繰越欠損金の引継ぎとその注意点

この記事は2015年8月発行のREVOLVING DOOR vol.9より転載しております。

適格合併の場合、合併法人が 被合併法人の繰越欠損金を原則として引き継げるため、合併後にある程度の税務メリットが期待できます。適格合併の日前7年以内に開始した被合併法人の各事業年度の繰越欠損金のうち、未使用のものは合併法人に引き継がれます。

合併による繰越欠損金の引継ぎ条件

税務相談で「繰越欠損金のある会社を買収した後に、合併を行った場合には繰越欠損金を引き継ぐことはできますか?」という質問をよく頂きます。繰越欠損金のある会社を合併したからといって繰越欠損金を引き継げるわけではなく、一定の要件を満たさなければ被合併法人の繰越欠損金を引き継ぐことはできません。

繰越欠損金の引継ぎには制限がある

被合併法人の繰越欠損金の引継ぎは、節税効果を生むため、制限が設けられています。この引継ぎ制限を受けてしまうと、被合併法人の前9年内事業年度に生じた欠損金額のうち、被合併法人の支配関係1発生事業年度前の各事業年度で生じた欠損金額、支配関係発生事業年度以後の各事業年度で生じた欠損金額のうち一定の金額は引き継ぐことができません。

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 繰越欠損金の引継ぎが否認された事例 (ヤフー事件)

ヤフー事件の判決では、みなし共同事業要件の⑤の経営参画要件について、形式的には要件を満たすものの、その主たる目的が法人税の負担を減少させるという税務上の効果を発生させることが明らかであると認められるとして被合併法人の繰越欠損金の引継ぎを認められないことと判断されました。

つまり、合併の主たる目的が被合併法人の繰越欠損金を利用するための合併であったと認められる場合には、包括的否認規定が適用されて繰越欠損金の引継ぎを否認される可能性が高くなります。

今回の事例では、みなし共同事業要件の⑤について判断されましたが、他の要件についても同様に形式的に要件を満たしているだけでは繰越欠損金の引継ぎを認めないと判断される可能性があります。今後、税務当局はこの判決を受けて、調査等で繰越欠損金の引継ぎを否認するケースが増えてくると思われます。

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適格合併による繰越欠損金の引継の注意点

上記の事例のように、被合併法人の繰越欠損金の引継ぎを税務当局に否認されないようにするためには、合併を行う主たる目的が被合併法人の繰越欠損金を利用することではなく、合併によって売上のシェアの増加・管理の一体化によるコストの減少が図れるなどの合理的な目的が必要になります。

特に大きな会社が小さな会社を買収して、その後合併をするような場合には、繰越欠損金の利用目的とした合併であると判断される可能性が高いため、注意が必要になります。

 

最後に

私は、支配関係がある適格合併で繰越欠損金を引き継ぐ場合には、細心の注意を払い、引継ぎが可能か検討を行っています。特に、事例のようにみなし共同事業要件の充足により繰越欠損金の引継ぎを行う場合には、その合併の主目的が繰越欠損金の利用のみと認められるものか、様々な観点から国税OBと共に検討しております。

適格合併での繰越欠損金の引継ぎの判断は、非常に複雑であり、また、包括的否認規定が適用される可能性があるため、被合併法人の繰越欠損金の引継ぎを検討されている会社様がいらっしゃれば是非ご相談ください。

執筆者

NEXT CFO 編集部

 NEXT CFO編集部

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