昨今のTOBプレミアムの動向を分析・検証する

■ TOBプレミアムとは

TOBプレミアムとは、TOB公表日前の株価(6ヵ月平均株価、3ヵ月平均株価、1ヵ月平均株価、公表日前営業日株価)に対してTOB価格に考慮されたプレミアムのことである。

TOBとは上場会社の株式を発行済株式総数の3分の1等一定程度取得する際において必要とされる手続きである。

単に市場で買い付けるのではなく、公開買付という手続きを踏むことにより、株主からの応募があれば、その株主からの応募に対応し買付を行う必要がある(但し、買付株数に上限を設定すれば、その上限まで買い付ければよいし、下限を設定しておけば、応募が下限株数を下回れば買付を行う必要は無くなる)。

ここでは、TOBプレミアムが2010年以降どのように推移したのか分析していきたい。

■ TOBの2つの類型とその比較

TOBプレミアムを見ていく際に、TOBの類型についてまず説明をしたい。 TOBは大きく2つに分かれる。
TOB対象となる会社を非公開化するか否かだ。

①非公開化する場合としては、MBO(マネジメント・バイ・アウト)の場合と、MBOではないが、他社もしくは親会社が対象会社をTOB後に完全子会社化するケースが挙げられる。
②非公開化しない場合としては、対象会社の大株主から当該株主が保有する株式を譲り受ける際に持分割合の観点からTOBが必要とされ、TOBする場合が挙げられる。

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①の場合においては、非公開化することが前提とされるため、①におけるTOB価格に対して株主が同意せず、応募しなくともスクイーズ・アウトという手続きにより、TOB価格と同価格で強制的に少数株主は排除されてしまう。 よって、少数株主は非常にその権利を脅かされやすい。
そのため、①の場合においては少数株主の保護の観点からその価格の適正性について検討が十分に必要となるとともに、蓋然的に対象会社としては訴訟リスクが非常に高くなる。これにより、当該訴訟リスクを鑑み、TOBのプレミアムは高くなる傾向にある。
それに対して②の場合においては、非公開化されないのであれば、少数株主は当該TOBを踏まえて、たとえTOB価格に反対であっても、強制的に排除されることは無い。
以上のことから、TOBのプレミアムは①の場合よりは相対的に低くなる傾向にある。

■ 2010年以降のTOBプレミアムの動向

ここで実際に2010年以降のTOBプレミアムを見てみよう。

非公開化TOBのプレミアムを見ていくと、2010年~2012年においては40~50%前後を維持しているが、2013年以降30~40%に低下している。
それに対し、その他のTOBのプレミアムを見ていくと、同様に2010年~2012年においては、20~30%弱程度で推移しているが、2013年は大幅に低下している。

その後2014年、2015年については2010年~2012年と同程度まで回復している。 これは、2013年についてはアベノミクスにより大幅に株価が上昇したものの、TOB価格への反映には至らず、結果として上昇した株価と比較してマイナスのプレミアムが生じたことが理由であると考えられる。

非公開化TOBに比べ、その他TOBの場合の方が当該2013年以外については年度ごとにプレミアムの差が無いが、これは非公開化に比べ、少数株主の保護の観点が無いため、価格の付け方がケースバイケースとなるためと考えられる。

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■ アベノミクス効果と非公開化TOBプレミアムの推移

アベノミクスの効果についてはこちらの表をご覧いただこう。2010年以降の月次の日経平均株価をまとめたものである。

これを先ほどの非公開化TOBプレミアムの推移と見比べて頂くと、丁度反比例の動きとなっている。これは、推定するに、アベノミクス効果により、株価が上昇し、本来の価値に株価が近づいたことにより、結果としてあらわれてくるプレミアムが減少したことによるものと考えられる。

2010年2011年2012年2013年2014年2015年
平均終値9,8939,4459,23713,68315,60219,152

(単位:円)

かたや、TOBの件数の推移もご覧いただこう。

特に非公開化TOBについては、2012年より顕著に減少している。これは、非公開化を前提とした場合、ある程度プレミアムを乗せないと訴訟リスクが高まるため、株価が高い状態である場合、プレミアムを乗せると案件として成り立たない、というケースが存在したことにより、頓挫したものが発生したためであろう。筆者の身の周りでもそのような話は多々聞いた。

このように現状においては、非公開化についてのハードルは高い状況にある。MBOや上場会社の非公開化を考えている方にとっては頭の痛い状況である。

種別2010年2011年2012年2013年2014年2015年
非公開化TOB件数414231281510
その他TOB件数141617251811

(単位:円)

制作協力:株式会社マイティ・マイティ

執筆者

橋本 卓也 氏

 橋本卓也 氏