地域経済環境~九州版~

平成26年全国都道府県市区町村別面積調/出所:総務省「住民基本台帳人口要覧」平成25年/平成26年企業活動基本調査速報-平成25年度実績/平成26年企業活動基本調査速報-平成25年度実績/出所:内閣府「平成22年度県民経済計算」平成22年

平成26年全国都道府県市区町村別面積調/出所:総務省「住民基本台帳人口要覧」平成25年/平成26年企業活動基本調査速報-平成25年度実績/平成26年企業活動基本調査速報-平成25年度実績/出所:内閣府「平成22年度県民経済計算」平成22年

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早速だが、九州の経済を例える言葉をご存じだろうか。 「支店経済」「10分の1経済(1割経済)」が有名である。 両方とも読んで字のごとくであるが、特に「10分の1経済」は言い得て妙である。面積や人口、GDPなどの主要な経済指標が全国比率で概ね1割である。

また、アジアに近い立地(福岡市から東京・上海がともに約1,000km)を活かした国際航空路線や貿易コンテナ船が就航するなど、日本国内だけでなくアジアとの交易・交流が充実している事が特徴の1つと言える。 指標と1つとして、福岡県を訪れる外国人入国者の割合をみると、全国平均と比較してアジア地域の割合がかなり高い事が見て取れる。 実際、福岡市内を歩いていると、非常に高い確率でアジア地域の言語が聞こえてくる。

産業構造に目を向けてみると、全国比1割を少し下回っているが、一次産業に限ると17.27%と大きく1割を上回っている事が分かる。鹿児島県・宮崎県の畜産業、長崎県の水産業が代表的な九州地域の一次産業である。 福岡を除く九州各県では、GDP全体の対全国比よりも、一次産業における対全国比率が高い事が特徴的である。 一方、福岡県に目を向けると、一次産業の全国比よりも、二次産業・三次産業の比率が高い。立地的にも九州と本州を結ぶ交通の要衝を占めており、経済・行政・文化等の機能が集中しており、小売やサービス業が発達している事が特徴的である。 また、自動車や半導体などの生産能力が高いのも九州の特徴である。

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さて、それでは経済全体の状況を簡単に見てみよう。2015年3月日銀短観の業況判断DI(全産業)によると、大企業が+16pt(前回調査比+2pt)、中堅企業が+10pt(前回調査比+1pt)、中小企業が+2pt(前回調査比-1pt)となっている。産業別に大きな動きをみると大企業石油・石炭製品が-11pt(前回調査比+17pt)、中小企業窯業・土石製品が+3pt(前回調査比-18pt)が目立った動きであった。 産業毎に変動はあるものの、全体的には概ね横ばいと言える。一方、先行きについて見てみると、大企業+14pt、中堅企業+7pt、中小企業0ptと、いずれも直近よりもネガティブな評価になっている。

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続いて九州・沖縄の業況判断DIはどの様になっているだろうか。 2015年3月を全産業でみると+11pt(前回調査比+1pt)となっており、概ね全国を対象とした日銀短観と似た結果となっている。 産業別では、小売+12pt(前回調査比+21pt)、電気・ガス+30pt(前回調査比+13pt)、化学+14pt(前回調査比+10pt)と大幅な改善を見せた一方で、非鉄金属0pt(前回調査比-34pt)、鉄鋼+4pt(前回調査比-32pt)と、大きく値を下げている。 先行きに関しては、物品販売が直近+27ptに対して先行き+12ptと悲観的な予測を行っているのを筆頭に、ほぼ全業種が直近よりもネガティブになっており、全産業では+8ptとなっており、直近値と比較すると-3ptである。 このあたりも日銀短観と相関が見て取れる。

近年、九州新幹線の全線開通や福岡空港や佐賀空港へのLCC就航開始、自然災害の少なさなどから注目を浴びる機会が増えてきたように感じる。 また、昨年は福岡市が国家戦略特区「グローバル創業・雇用創出特区」に指定されるなど、明るいニュースが多いのも事実だろう。福岡市は国家戦略特区に指定されたことを活かして既にいくつかのプロジェクトをスタートさせている。 創業支援施策のうち、交流の場「スタートアップカフェ」、相談の場所として「雇用労働相談センター」が用意されている。 また、都市開発計画にも特区を活用している。 航空法の高さ制限に関する特例承認を勝ち取ったほか、地下鉄の延伸やエリアマネジメントにかかる道路法の特例など、次々と手が打たれており、活況を呈している。

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しかし、これらは九州の中でも福岡に限られた話である。 特に人口に関しては九州各県から福岡への転出超過が顕著となってきているとともに、九州全体でみても生産年齢人口の九州域外への転出が進行しており、深刻な問題となってきている。 福岡市における創業特区によって企業数が増え、結果として雇用が増加すれば人口流入を期待できるが、現在でも雇用人員に対する判断DIが圧倒的な人員不足を表しており(2015年3月全産業-22pt)、決して人余りの状況にあるわけでは無い。 東京を中心とした経済中心エリアに集まる情報や人、そして仕事に負けない魅力を九州内で創造できるかが、九州経済浮沈のカギだろう。 筆者は九州を行動基盤にして未だ3年目であるが、一次産業から三次産業までをカバーできるポテンシャルと、先進的なテクノロジーを取り込もうとする行動力には期待するところ大である。 各県にはそれぞれ食の名産、観光名所、特徴的な産業が沢山ある。 九州域外の方も是非、九州を訪れて頂き、その魅力とポテンシャルを感じて頂きたい。 もし福岡に訪れるのであれば、福岡空港から経済圏迄の距離に可能性を感じずにはいられないはずだ。

執筆者

岩瀬 雄太郎 氏

 岩瀬雄太郎 氏