上場企業に必須の経理企画という機能

この記事は2015年5月発行のREVOLVING DOOR vol.08より転載しております。

2014年は日経平均の上昇による証券市場の活況により新規に株式公開した企業数が77社となり、
2015年も年度末で100社を達成する見込みである。

上場企業は投資家利益を保護するため、不特定多数の株式投資家へ適時適切に正確な会社情報を提供しなければならず、
そのためのガバナンスや経理の仕組みは未上場企業と比較して高度で精緻な仕組みでなければならない。

未上場企業と上場企業のガバナンスや経理の仕組みの違いに係る論点は多岐に渡るが、
今回は経理企画という機能に着目してみたい。

税務会計に依って会計処理されている未上場企業とは異なり、上場企業は財務会計に依って会計処理をすることが求められる。
ただ、財務会計には税務会計では存在しない「会計上の見積り」という概念が存在するのが特徴的であり、
当該概念が上場企業の予算や業績を含め企業経営に多大な影響を与えている。

本稿では、私が所属する会計・財務コンサルティング会社の株式会社エスネットワークスが取り組む株式公開支援業務ないし
上場企業に対する常駐支援業務から、成長スピードが速い上場企業を念頭に、
経理企画の機能の充実が会社の成長スピードに追い付いていない会社で生じる課題とその対策を解説したい。

 

税務会計

法人税額を算定するための会計ルール。企業間の公平性を担保するためルールの適用が厳格かつ画一的に定められている。
収益・費用は現金の収支に基づき算定・集計される。

財務会計

企業の経営状況を明らかにするための会計ルール。経営状況は企業ごとに異なるため、ルール適用の原則が主に定められている。
収益・費用は現金の収支に縛られず算定・集計される。

上場企業 経理計画 財務会計

※ 会計上の見積り
 将来起こり得る損失を現時点で合理的な予測をもとに算定し財務諸表に反映させること。

 

 

課題の指摘

上場企業 経理計画 課題

上場企業は、ガバナンスを通じて権限移譲をし意思決定スピードを早め、権限者が責任を果たせているか業績(予算)統制により検証され、
検証のために必要な実績を経理が集計するという1つの流れが構成されている。

成長スピードが速い企業における論点は、会社の売上規模の拡大に管理体制全般の整備が追いつかず、
ガバナンス、業績、経理の制度設計不備及び運用不備が累積的に積み重なっており、当該不備が最終的には業績の低迷を引き起こすことになる。

 

 

課題の原因

通常、権限者は、新規の契約形態の取引や新規事業(以下、「新規事業等」)を立ち上げるケースにおいて、
市場・事業性、開発・調達・物流等の多岐にわたる項目を精緻に分析し、当該分析結果に基づいて事業計画、
KPI※及び投資実行額(以下、「事業計画等」)を決定している。

一方で財務会計が及ぼす影響、具体的には「会計上の見積り」及び「会計処理仕訳情報収集の仕組み構築」の検討は行っていない、
ないし行っていても財務会計の専門知識や経験が十分な者に行わせているケースは希である。

また、当該専門知識や経験を持ったものが関与していたとしても、
権限者自体が「会計上の見積り」及び「会計処理仕訳情報収集の仕組み構築」の検討の重要性を認識していないケースが多く、
新規事業等が動き出す間際になって備忘的に検討するというケースが多い。

※KPI:Key Performance Indicators 事業計画の達成度合いを測るために設定されている指標。例えば、売上高のKPIは売上単価や販売量がKPIとなる。

 

 

課題が及ぼす具体的な影響

上記のような事業計画等に基づいて、社内では業績(予算)統制が行われることになるが、
上場企業が一般投資家等に対して開示する業績実績は財務会計に基づいた「会計上の見積り」を含んだ数字であるため、
「会計上の見積り」を原因として事業計画等と業績実績が乖離すると、新規事業等の事業計画等の妥当性に対する会社としての疑義や、
「会計処理仕訳情報収集の仕組み構築」の不備による経理が集計する数字に対して新規事業等の権限者から疑義が生じてしまい、
結果として数字で行っている業績(予算)統制の信頼性が毀損したり、また権限者が業績数字へのコミットメントが希薄に、
ないし業績未達になることに対して詭弁を弄することにつながってくる。

 

 

課題の解決策

上場企業 経理計画
課題解決

財務会計の専門知識や経験が十分な者に、
新規事業等の「会計上の見積り」の要否及び影響並びに「会計処理仕訳情報収集の仕組み構築」のデザイン設計を
新規事業等の立案段階から十分に関与させ、事業計画及びKPIに「会計上の見積り」による業績への影響を折込み、
またビジネスモデルの中に「会計処理仕訳情報収集の仕込み構築」を行っておくことが適当である。

執筆者

NEXT CFO 編集部

 NEXT CFO編集部

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