東証1部上場クロス・マーケティングCFOが語る。CFOの本質

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株式会社クロス・マーケティンググループ 取締役CFO 小野塚 浩二 氏

世の中のヒット商品や目に留まるような広告ができるまでには多くの工程を経ていることは言うまでもないだろう。その中でも特に裏舞台として人の目に付くことはほとんどない、しかし極めて重要な役割を担うのがマーケティングリサーチである。

マーケットの現状を調査・分析することは勿論、そこから考え得る未来を予測することが付加価値の種になる。マーケティングリサーチ業界でグローバルに活躍する、クロス・マーケティンググループは今年2018年3月27日に東京証券取引所マザーズ市場から東京証券取引所市場第一部へ市場変更し、ますます成長を加速しようとしている。

今回は同社のCFOとしてグループ全体を支える小野塚氏の軌跡をたどってみようと思う。

 

結果としてのCFO。問題は肩書きではなく機能を果たせるか。

 

―CFOへの道を歩み始めたきっかけはどんなことでしたか?

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私にとっては司法試験合格を目指していたことがCFOの第一歩だったかもしれません。実際は合格には至らなかったのですが、その後就職を考えたときにそれまで勉強してきたことを少しでも生かしたいと思い、法務とか総務系で職を探していました。未経験で管理部門という募集はその当時はあまり多くはなかった中で、出合ったのがフィールズ株式会社でした。当初から自分自身がCFOになるとも、目指そうとも思っていませんでした。ただ、振り返ってみるとCFOとしての職責を果たすためのスキルは、今からお話しするような実務経験によって培うことができたのだと思います。また、もう一つ大切なこととして、社長のすぐそばで仕事をさせてもらえたことも私の視座を上げるきっかけになりました。すぐそばに居たことで、多くの優秀な経営者やその道の第一人者の方々とお会いすることが多く、彼らの話を私はただただ聞くだけでしたが、社会人のスタート地点で経営者として持つべきマインドを生の声から学べた貴重な機会でしたね。

 

―経営現場や過酷な世界の第一線で活躍する方々のリアルな経験談や考え方が小野塚さんのマインド形成に大きな影響を与えたんですね。ではフィールズの管理部門ではどのようなご経験をされていたのでしょうか。

まずは総務に配属されました。ただ、正直やっていることは「何でも屋」でした(笑)。私が入社したころは売上規模として90億円くらいでしたが、新しい事業をどんどん立ち上げ、またグループ会社も急速に増やしていく最中でした。私は、総務全般の担当というポジションで入社しましたが、その急拡大に伴い総務だけでなく経営企画や人事、経理や法務も何でもやっていたというのが実状です。ですので、新規事業立ち上げも、M&A後のPMIも幅広く経験を積んできました。もう無我夢中でしたね。

経験や知識がなかったとしても、結果を出すためにとにかく頑張ってやるしかないという気持ちでした。

 

―そんな中で、転職を考えたのは何か思い描いたキャリアなどあったのですか?

キャリアを考えたというわけではないのですが、一度自分を見つめ直した方が良いとは思いましたね。多忙な中でも、自分で判断できるような責任ある仕事ができることは恵まれた環境だと思っていました。ただ同時に社長直轄で遮二無二仕事をしてきたことに対し、危機感も覚えていたというのが本音です。そのような感覚がある中で、ちょうど私が管理していた会社のM&A案件が終わり、組織再編もひと段落したタイミングで退職を決意しました。その頃私は28歳。フィールズは売上1,000億を越えたころでした。振り返ってみて、そういう会社の急成長に出会えたのは本当に良い経験だったと思います。

その後、知人と共に起業に参画したり、上場企業の子会社社長、上場している人材系の企業で経営企画室長などいくつかの会社や事業に関与し自分の仕事の幅を広げていく中で、クロス・マーケティングに出会いました。

 

―入社の決め手はどんなところでしたか?

いくつかの会社からオファーは頂いていましたが社長の五十嵐との波長があったというか、彼の言葉が自分にとって一番共感できたからですね。その当時は成長過程にある会社の社長さんと面談させていただくことが多かったのですが、その際に共通の質問をぶつけてみたんです。「会社の成長と人の成長って大体が人や組織が追いつかないと思うんですけど、どうお考えですか?」と。結構意地悪な質問だったと思います。ただ私が見てきた限り、例えば創業メンバーが昔は活躍していたけれども、今はそうではないってことは良くあることですし、そこに対してどんなことを考え、実行しているかを聞いてみたかったんです。答えに詰まるような質問ですが、皆様それぞれ回答していただいた中で、五十嵐は少し変わった反応でした。端的に言うと「分からない」と。同時に「困っている」とも言っていました。それを聞いて、もしかしたら自分がその課題に対して何かできることがあるんじゃないかと思い入社を決意しました。ちょうど6年前(2012年)くらいの話ですね。

 

―クロス・マーケティングに入社して最初の業務はどんなことでしたか?

02本文内素材営業企画の立ち上げ。これが私にとって当社での最初の仕事です。実際は経営企画室長という肩書で入社し、入社直後からその機能を果たしていたわけですが、私としては余力を残している状況の中で、自分は何ができるかということを日々考えていました。入社して3,4カ月が経過した頃、営業の数字管理に課題感を持ち始め、そこを強化していこうと動き出したのが私にとっての最初のミッションという感覚ですね。

案件ごとの利益管理の考え方は既にありましたが、もっと深堀りし、戦略的に実行すべきと考え、営業企画を立ち上げて粗利率やKPIの設定・管理をはじめ、部員の意識改革のための勉強会などを開き営業部門の強化を計りました。

 

―管理部門に留まらず、現場の営業力強化に尽力されたのですね。

はい。ただ、それから1年半ほど経過した頃、組織は拡大の中で持株会社化に向けた動きがスタートしており新たな課題が浮上してきました。急速な成長・事業拡大に伴い管理部門の体制強化が喫緊の課題でした。そのような状況で持株会社化後、専任として経営管理体制の構築・強化を推し進め、結果的に今のCFOのポジションに就くことになりました。

 

―小野塚さんにとってCFOとはどんな存在ですか?

会社の価値を最大化する人ですね。先ほど申した通り、私自身が管理部門だけでなく事業畑にも深くかかわってきましたので、特にそう思います。管理はあくまでも手段であり目的になってはいけない。経理部長の延長にCFOがあると思っている人は多いように思えますが本当の意味でのCFOの機能は違うんじゃないかと思っています。CFOは専門職の側面もありますが、一方で幅広い知識や思考も求められます。事業を理解しながら管理部門の視点だけでなく営業にも積極的に関与し自らが動いていくくらいの気概が必要なんじゃないでしょうか。CFOになってから、もしくはCFOになるために経営陣に参画するのではなく、経営陣に参画してその中の機能・役割分担としてCFOをやる、という感じですかね。

 

―CFOの役割を果たすうえで必要になるスキルという意味ではいかがでしょうか。

企業ステージによっても異なってくるとは思いますが、上場企業においては「判断力」だと思います。時には限られた情報の中でも意思決定しなければならない局面がありますが、そのような状況下でもCFOとしての会計やファイナンス・タックスなどといった専門性は元より、人事や法務、経営そのものに関する知識・経験のバックボーンをフル活用し迅速且つ正しい判断をする必要があります。

ある意味、割に合わないですよね(笑)意思決定するうえで網羅的な情報がなかったとしても組織として誤った判断をしたとすれば、当然責任は問われますので。そういう意味ではCFOはなりたいと思ってなるものではなく、自分がビジネスマンとして研ぎ澄まされていく過程の中で、結果的にCFOの肩書きがついてくるものです。なので、会計士やコンサル出身でなくてもCFOにはなれると思いますよ。

 

―バックオフィスだけでなく、フロントにも積極的に関わってきたなかで、クロス・マーケティングが同業他社と違うなと感じる部分はどんなところにありますか?

03本文内素材この業界は非常に差別化が難しいと思います。それぞれの企業が独自のサービスを展開されてはいますが、代替できないサービスばかりかといえば、そんなことはないと感じるのが正直なところです。ただ、当社の場合はその中でもお客様が人につくことが多いです。それはリサーチャーであったり営業であったり。この人に対応してほしいと指名が入ったりするくらいです。我々は他社がお断りするような手間のかかるような案件でも泥臭く一生懸命やるんですよね。そこを評価してもらえていることが一つ他社とは違うところなのかと思いますし、私が好きな社風でもあります。

また、当グループは日本の中で同業他社と比較すると、グローバル展開が進んでいます。人数規模で言うと、グループ全体で約1,400名のうち、海外拠点が700名。M&Aによる拡大もありますので、その分多様なノウハウが蓄積されてきていますし、海外のリサーチの品質については頭一つ出ているのではないかと自負しております。

 

―御社にとって“ヒト”は最も大切なように感じましたが、理念や社風について教えてください。

我々の経営理念は事業創造です。マーケティングリサーチの会社ですので、お客様が事業を創造するうえでの意思決定を支援していくという意味合いもありますし、我々自身がどんどん新しい事業を創っていき世の中に新しい価値を生み出していこうという想いもあります。

ただ、そのような理念を強く押し出して社内外に謳っている感覚はあまりなく、どちらかというと創業以来「みんなで頑張ろうぜ」という輪を大切にしながら結果的にそのビジョンに向かっているような気がしています。勿論、“ヒト・組織”についてはかなり深く考えているところであり、組織の拡大と共に、大切にすべき根幹部分は残しつつ緩やかに多様性を受け入れていっています。柔軟であるが故に価値判断の線引きは難しいところもありますけどね。特に経営に関わる事項は、本当に良く五十嵐と議論して最適解を都度求めています。

 

―会社の未来についてCFOとしてどのようなことをお考えか可能な範囲で教えてください。

CFOが見る指標は色々あると思いますが、それらを意識しながらも、まずは営業利益率を一定まで高めていくということを向こう3年の目標としています。その先に拡大再生産ができるステージがあるんじゃないかなと。そして5年後、10年後にはこのマーケティングリサーチという景気の波の影響を受けやすい業界の中でも、事業創造の精神を持って強固な組織を作って持続的に成長していきたいですね。

 

―最後にCFOの可能性についてお考えをお聞かせください。

自分がそうなれているかは、まだわかりませんが、本当の意味でのCFOがもっと増えていけばいいですよね。CFOというポジションを目指すというよりは、一人の経営者・経営陣としてその有する専門性を活用しながら事業価値を最大化することを突き詰められる人財=CFOがもっと増えれば日本の経営現場はもっと面白くなっていくんだろうなと思っています。私も日々研鑽しなければいけませんね。

 

―貴重なお話しありがとうございました。

執筆者

NEXT CFO 編集部

 NEXT CFO編集部

経営者・管理職にCFOの役割を広めたい!CFOが活躍する社会をつくることで、日本経済を活発にしたい!そんな想いでNEXT CFOのメディアを運営しています。

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