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コンプライアンスの最前線vol.4 景表法違反の広告がもたらす経営リスク

この記事は2018年2月発行のREVOLVING DOOR vol.18より転載しております。

コンプライアンス最前線vol.1 独占禁止法上の優越的地位の濫用によって億単位の課徴金を課されないために
コンプライアンス最前線vol.2 米国反トラスト法違反による計り知れないダメージに注意
コンプライアンス最前線vol.3 下請法違反による経済的負担を避けるためになすべきこと

企業経営に関して経営陣が知っておくべきコンプライアンス・イシューとして、今回は、商品の販売や役務の提供に関する広告等について問題となることが多い、不当景品類及び不当表示防止法(以下「景表法」といいます。)上の不当表示について簡単に説明します。

01 平成28年4月1日施行の改正景表法により景表法にも 課徴金制度が導入されました

景表法は、商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘因を防止することを目的として、過大な景品類の提供及び不当表示を禁止しています。 このうち、本稿の主題である表示※1に関しては、商品や役務(以下、商品と役務を併せて「商品等」といいます。)の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に反して他の事業者の商品等よりも著しく優良であると示す表示(優良誤認表示)や、商品等の価格その他の取引条件について、実際のもの又は他の事業者の商品等よりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示(有利誤認表示)等が禁止されています※2スクリーンショット 2018-03-30 17.37.35

※1 顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示であって、内閣総理大臣が指定するもの(景表法2条4項)をいいますが、その範囲は極めて広く、事業者が顧客を誘引するために使用するものは、口頭によるものも含めてこれにあたると考えて差し支えありません。

※2 その他に、特定の商品又は役務について内閣総理大臣が指定した不当表示(例えば、商品の原産国に関する不当な表示)が禁止されていますが、課徴金の対象とならないこともあり、本稿においては割愛します。

不当表示に関しては、従前より違反事業者に対する措置命令が出されていました(景表法7条。具体的には、違法行為を行わないことや一般消費者の誤認を排除するための公示、再発防止措置等が命じられることになります※3。)。しかし、平成28年4月1日施行の改正法(平成28年改正)は、この措置命令に加えてさらに課徴金の納付も命ずるものとしたのです。

平成28年改正により導入された課徴金制度の概要は、以下のとおりです (景表法8条) 。

ア.課徴金対象行為:優良誤認表示及び有利誤認表示※4
イ.課徴金額の算定方法:課徴金対象期間(最長3年)に取引した課徴金   対象商品等の売上額の3%※5

この課徴金制度は、平成29年9月30日現在で既に合計5件の適用事例が存在し、例えば、自動車メーカー(三菱自動車工業)に対する4億8,507万円もの課徴金納付命令や、健康食品メーカー(日本サプリメント)に対する3,073万円及び2,398万円の課徴金納付命令が出されています。

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※3 一般消費者の誤認を排除するための公示としては、通常、日刊新聞紙2紙への社告の掲載が必要となることから、その掲載費用も事業者にとっての経済的負担となります。
※4 この課徴金の納付を命じるにあたっては違反事業者の主観的要素が要件となっています。具体的には、違反事業者が課徴金対象行為をした期間を通じて当該課徴金対象行為に係る表示が不当表示に該当することを知らず、かつ、知らないことにつき相当の注意を怠った者でないと認められる場合には、当該事業者に対する課徴金納付命令は出されません。
※5 但し、この計算の結果、課徴金額が150万円未満となる場合には、課徴金は賦課されません(景表法8条1項)。

 

02 課徴金による経済的負担を減らす方法

このように景表法に違反する不当表示は、違反事業者に対して多額の経済的負担を生じさせ得るものともなりました。 もっとも、景表法においては、課徴金による経済的負担を軽減し得る以下の方法が存在します。

ア.自主申告による課徴金額の減額(景表法9条)

課徴金対象行為をした事業者が、当該行為についての調査がなされる前に、課徴金対象行為にかかる事実を景表法の定めに従い自主申告した場合、課徴金額の2分の1が減額されます。

イ.返金措置の実施による課徴金の額の減額(景表法10条・11条)

違反事業者が、景表法に定めに従い課徴金対象商品等の購入者に対する自主返金のための計画を作成し、これに対する内閣総理大臣の認定を受けたうえで、当該計画に従った返金を実施した場合、当該返金合計額が課徴金額から控除されます※6。この返金措置は、これを実施することで、違反事業者におけるコンプライアンス・消費者保護の姿勢を示すことができるのみならず、(課徴金が税務上損金とならないのに対し)返金が事業者の損金となり得る点で、事業者の経済的負担を減らすことにつながります。

そのため、事業者が、万が一、不当表示を行ってしまった場合には、これら制度によって課徴金による経済的負担を軽減することを積極的に検討すべきことになります。また、このような万が一の事態にも対応できるように、次に紹介する体制の構築(後記3.⑦等)も予め行っておくべきです。

※6 返金合計額が課徴金額以上となれば、課徴金の納付も命じられないことになります。

 

03 不当表示に関するコンプライアンス体制の構築の必要性

不当表示違反に対する措置命令や課徴金納付命令は、消費者庁のウェブサイトで企業名とともに公表されるほか、報道されることも少なくありません。これら命令を受けること自体が、対象事業者のレピュテーション・対象商品等の評判に対する重大な悪影響を生じさせることになるのです。 このような事業活動に対する重大な悪影響や課徴金等による多額の経済的負担を避けるためには、事業者において、不当表示を防止するための(また、万が一のときには迅速に対応するための)コンプライアンス体制を構築する必要があります。

この点、景表法は、平成26年12月1日施行の改正法によって、事業者に対し、景品類の提供及び表示の管理上の措置を講ずることを義務づけるとともに(景表法26条1項)、内閣総理大臣が、当該措置に関し、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を定めるものとしました(景表法26条2項)。
この規定に基づき定められた「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」(「管理措置指針」平成26年11月14日内閣府告示第276号)によれば、事業者は、その規模や業態、取り扱う商品又は役務の内容等に応じ、必要かつ適切な範囲で次に示す7つの事項(下記の①~⑦)に沿うような具体的な措置を講ずるべきとされています。

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なお、上記措置を採ることは、景表法上の課徴金制度との関係においても重要です。これは、(i) 違反事業者が課徴金対象行為をした期間を通じて課徴金対象行為に係る表示が不当表示に該当することを知らず、かつ、知らないことにつき相当の注意を怠った者でないと認められる場合には、課徴金は課されないものとなっていること(景表法8条1項)、また、(ii) 上記の管理措置指針に沿う具体的措置を講じていた場合には、「相当の注意を怠った者でない」と認められるものとされていること(「不当景品類及び不当表示防止法第8条(課徴金納付命令の基本的要件)に関する考え方」(消費者庁・平成28年1月29日))によるものです。
そのため、事業者においては、不当表示を防止し、また、万が一の際にもその影響を可及的に小さくするため、上記の管理措置指針を参考とした表示の管理のための具体的措置を構築し、着実にそれを実施していくことが必要です。 もっとも、これら対応は、景表法の解釈を前提として、各事業者の表示や商品等の具体的な内容、業務内容等も踏まえて行う必要があります。そのため、適宜その分野に明るい弁護士の助言・チェックを受けることが肝要です。

執筆者

NEXT CFO 編集部

 NEXT CFO編集部

経営者・管理職にCFOの役割を広めたい!CFOが活躍する社会をつくることで、日本経済を活発にしたい!そんな想いでNEXT CFOのメディアを運営しています。