IPO Market Review Vol.2 ~アルヒ株式会社様~スペシャルインタビュー

この記事は2018年2月発行のREVOLVING DOOR vol.18より転載しております。

2017年下半期のIPO銘柄一覧

スクリーンショット 2018-03-07 17.51.23

 

2017年下半期および通期のIPOマーケット総括

2017年の下期のIPO達成件数は51件、通期では90件となった。昨年が83件であることから、直近の日経平均株価の堅調な動きなどを踏まえても現実的な範囲での順調な伸びということができよう。全体としては東京オリンピックが開催される2020年までのIPOを志向する企業も多いこともあり、引き続き来期も順調な伸びが期待される。なお、東証としてもIPO件数増加には積極的と聞くが、その中にあって監査法人との監査契約締結が高いハードルとなっている状況が散見される。

 

スクリーンショット 2018-03-07 18.18.44

平成29年12月14日に東京証券取引所市場第一部に上場を果たした アルヒ株式会社の取り組みを伺いました。

 

「お客さま視点の住生活プロデュース企業」として

スクリーンショット 2018-03-07 18.03.35Q : アルヒ株式会社(以下、アルヒ)様の成り立ちをお聞かせください。

細野常務取締役CSO :当社は平成12年にSBIグループのグループ会社として創業いたしまして、大きな企業グループの1事業子会社として住宅ローン事業を行っておりました。当時はSBIモーゲージ株式会社という社名で事業を運営しておりましたが、平成26年に主要株主がSBIホールディングスからカーライル・グループへ変わり、平成27年に現在の社名であるアルヒ株式会社として新たなスタートを切っております。

Q : アルヒ様の事業内容をお聞かせください。

細野常務取締役CSO :当社の主な事業内容は、家を買いたいお客さまに対して住宅ローンをご融資することです。一般に住宅ローン事業といえば住宅ローン債権から発生する金利収入で収益を得るビジネスモデルとなりますが、当社の住宅ローン事業は原則として自社で住宅ローン債権を保有せず、従って住宅ローン債権がバランス・シートに計上されない点に特徴があります。換言すると、当社の主な収益は金利収入ではなく住宅ローン融資実行に伴う事務手数料収入で構成されているため、自社商品にこだわらずに、お客さまの視点に立って様々な住宅ローン商品を提供できる点、及び住宅ローン債権を自社バランス・シートで計上する際に発生する様々なリスクを取らずに済む点に特徴があり、これが当社にとっての強みとなっております。現在では、全期間固定金利型住宅ローンであるフラット35のマーケットにおいて、7年連続でシェアNo.1を獲得しております。

 

 

韓国上場からTOBによる非公開化を経て東京証券取引所への上場

Q : 過去韓国で上場をされていましたが、非公開化に至るまでの経緯をお聞かせください。

細野常務取締役CSO : 当社は平成24年から平成27年にかけて韓国取引所有価証券市場(KOSPI)に上場しておりました。当時、当社は成長戦略の一環で韓国へ上場するという手段を採りましたが、結論としては韓国での事業展開を再検討する必要があるという判断に至るとともに日本国内の事業においても過去急成長を果たしてきた中でやや成長スピードが鈍化してきたという背景の中で、今一度成長戦略を見直して自らを大きくトランスフォームする必要性を感じておりました。また、このような変革期を迎えるにあたっては、一時的に多額のコストが発生することも考えられますし、株式マーケットに対するリターンを考えながら大きな変革を推進するよりは、むしろカーライル・グループさんのお力を借りながら速やかに抜本的な変革を遂行することを重視し、非公開化することを選択いたしました。

Q : 非公開化後、TOBによりカーライル・グループが主要株主となりましたが、どのような変化があったかお聞かせください。

細野常務取締役CSO : 最も大きな変化としては、これまでの大企業グループの1社ではなく独立した企業となったということだと思います。これは社名をアルヒ株式会社に変更したことにも現れていますし、体制面でもSBIグループの一員であった時はグループのシェアード・サービスを利用して管理系業務を運営しておりましたが、独立後はこれらの業務を運営する体制も自前で構築してきました。また、現社長である浜田が新しく参画し、当社のビジネスモデルの変革がスタートしました。これまでの住宅ローン業界では、自前のチャネルで自前のプロダクトを販売するというモノライン・モノチャネルのビジネスモデルが当たり前でしたが、当社はこれに消費財のマーケティングの考え方を取り入れ、お客さま視点に立ち、お客さまに最もマッチしたプロダクトを、お客さまの行動パターンに合ったチャネルでご提供するというフルライン・オムニチャネルの考え方を住宅ローン業界に持ち込みました。現在当社では、自社商品か否かに関わらず、様々な種類の住宅ローン商品を、リアルチャネルである直営店舗やフランチャイズ店舗のみならず、Webチャネルでもご提供させていただいております。

Q : 非公開化を経て、この度東京証券取引所へ上場する目的はどのようなものかお聞かせください。

細野常務取締役CSO : 当社はコンシューマービジネスということもあり、住宅ローンを借りたいお客さまに対する信用力や認知度の向上を期待しております。また、当社の成長のカギである人材確保の観点からも、上場することはとても大きなメリットがあると考えています。

 

上場へ向けた具体的な準備について

Q : 平成29年12月に上場を果たされましたが、具体的に上場準備を開始した時期や取り組み内容についてお聞かせください。スクリーンショット 2018-03-07 18.16.24

市川執行役員 :当社が本格的に上場準備を進めるにあたってまず着手したのはグループ会社の整理からでした。カーライル・グループがTOBにより当社株式を取得した際のエンティティである「特別目的会社(SPC)」を最終的に合併する方向で検討を進めてきておりましたが、これには貸金業法等に基づく許認可や会計上の「のれん」の対応等対処すべき課題が多く、本格的にグループ会社の整理に着手したのが平成28年12月頃だったと思います。その後、当局や監査法人等との協議を経て様々な課題をクリアにしていきながら、おおよそそれらを解決して具体的な上場準備手続である主幹事証券会社の中間審査を開始したのが平成29年3月頃でした。

Q : 上場準備にあたって、最も苦労した点についてお聞かせください。

猪股経営企画部長 : 過去韓国に上場した際には経理部長として上場準備に携わっていましたが、今回の上場準備/審査は過去に比して非常にタイトで分量も多く、感覚値としては3倍くらい大変だったという感想です。また過去経験の無いグローバル・オファリングを実施するということで、当初はその意味も分からないまま、大量のQA対応をしたり、英語で目論見書を作ったりと、非常にハードな1年間でした。そのような中で、今回上場するにあたって最も大きな山場はいかに早く決算を締められるかでした。具体的には、当社の上場スケジュール上目論見書を平成29年10月末頃までに校了する必要があり、そのためには9月末の中間決算の四半期報告書を、実質2週間程度で作成しなければならず、さらに日本語版と英語版両方を同時並行で作成しなければならないという、非常にタイトなスケジュールであった点が最も印象に残っています。監査法人さんに突貫作業でご対応いただけたことがこのスケジュールを乗り切れた最大のカギだったと思います。スクリーンショット 2018-03-07 18.17.33

細野常務取締役CSO :上場準備に関しては、猪股が申し上げたとおり大量のタスクを短期間で仕上げなければいけない中、私どものスタッフが一つ一つのタスク消化にかかり切りになる中で、全体的な目線で各作業に目配りしながら進捗を管理する役割がどうしても疎かになりがちでした。そこにエスネットワークスさんに入っていただいたことは、上場作業を完遂する上で非常に重要な要素だったと考えています。

 

今後のアルヒ様の目指す姿をお聞かせください。

スクリーンショット 2018-03-07 18.17.00

細野常務取締役CSO :当社は現在「ライフソリューションプラットフォーム企業」というコンセプトを掲げて事業展開を行っております。消費財の世界ではどの企業さまも、お客さまといかに深く長く繋がるかが課題となる中で、住宅ローンの場合はご融資からご返済まで通常30年以上の長期の関係性が継続する特徴を有しています。当社は、この長い期間の中で住宅ローンだけに限らずお客さまに対してどこまでたくさんのお手伝いができるのかという発想から、「ライフソリューションプラットフォーム企業」への脱皮を追求し始めました。具体的には、当社で住宅ローンを借りてくださったお客さまと、これらのお客さまに商品やサービスを提供したい企業さまをお繋ぎする「プラットフォーム」に当社がなることで、新たな価値を創ることができるのではないかと考えています。家を買いたいお客さまや家を売りたい不動産会社さまのみならず、お金を貸したい、又は営業チャネルが欲しい金融機関さまや商品・サービスを売りたい消費者向けメーカー・サービス業者さまを、当社のお客さまとお繋ぎする「架け橋」の役割を担うことで、金融機関の枠を超えてお客さまに寄り添い、お客さま一人ひとりの豊かな住生活の実現をお手伝いできる新しいタイプの企業になりたいと考えております。

執筆者

NEXT CFO 編集部

 NEXT CFO編集部

経営者・管理職にCFOの役割を広めたい!CFOが活躍する社会をつくることで、日本経済を活発にしたい!そんな想いでNEXT CFOのメディアを運営しています。