官民ファンドの現状と活用のポイント

この記事は2018年2月発行のREVOLVING DOOR vol.18より転載しております。

01 官民ファンドの現状

アベノミクスにおける官民ファンド
先の衆議院議員総選挙においても、一部政党から官民ファンドの改廃を含めた見直しにつき議論がなされたのは記憶に新しい。
平成24年12月に発足した第二次安部政権が掲げる経済政策、いわゆるアベノミクスの「日本再興戦略」の中にも、官民ファンドが同戦略を推進する役割を担うものと明記されており、引き続き当該状況は継続するものと推察される。

官民ファンド活用の遅れ
一方で、各ファンドは設立から数年が経過し、必ずしも有効に活用されていないケースが見受けられる。その背景には活用する企業・事業体側が、各ファンドの特徴やメリットを理解をしていないこと、また企業側に、補助金の類との混同があることや民間ファンドよりも投資検討のハードルが低いとの誤認もあり、その有効的な活用が進んでいないようにも思われる。
そこで、一般的なファンドの性質、特徴とともに、官民ファンド活用のポイントを概説する。

各官民ファンドの存在意義
各ファンドの目的や投資対象は様々だが、共通するテーマは不足する民間機能を補完することであり、特に民間金融機関では対応できない領域、例えば政策的に育成を要するスタートアップ企業、事業再生、海外展開、雇用機会の確保に繋がる新規投資の喚起等に官民ファンドがリスクマネーを供給することで、経済を活性化させる点に存在意義があるものと考える。

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02 適合するファンドの見極め

官民ファンドであっても投資利益の確保を前提としているため、投資検討の目線は民間のファンドと変わることはない。そこで、官民ファンドに限らず、ファンドから資金を調達するうえで、理解しておくべき基本的な特徴を説明したい。一般的に、企業の成長ステージによって、適合するファンドの種別は異なる。また、ファンドの種別により、議決権比率や経営支配権の獲得スタンスやEXIT手法の想定が異なるため、基本的な内容を理解することが肝要である。

各PEファンドの比較代表例

◆議決権比率と経営支配権
ベンチャーキャピタル(VC)やグロースファンドは持株比率50%未満のマイノリティでの投資を前提としており、通常、既存株主の経営権は維持される。一方で、バイアウトファンドや再生ファンドは、マジョリティ(議決権の過数)を確保し経営支配権を獲得することが一般的であり、その経営関与のスタンスは大きく異なる。スクリーンショット 2018-02-23 17.10.34

◆投資リターンとEXITの想定
一般的にバイアウトファンドはIRR(投資利回り)20%超を想定し、EXITについても市場売却(IPOによるEXITを含む)もしくは第三者への売却を前提として投資を行う。VCは事業基盤が確立する前の主にスタートアップ期に投資を行うため、事業の成否に関する不確実性を伴い、投資のリスクはより高く、求めるリターンも更に大きくなる。

◆経営支援機能
経営権の獲得スタンスとも連動するが、バイアウトファンドはファンドが経営支配権を獲得するため、経営陣の過半は自らが指名した役員、及び経営支援の人材を適宜派遣して企業価値の向上を目指すため、経営体制に大幅な変更をもたらす。

 

03 官民ファンド活用のポイント

①目的適合性(資金使途と調達手法)

官民ファンドに限られた話ではないが、ファンド側の投資形態に応じた活用手法を選択する必要がある。  

◆ファンドのEXIT視点
ファンドは投資のEXIT手法を投資の入口の段階から検討する。そのタイプは①市場もしくは第三者への売却を想定する手法と②償還株式(一定の期間が経過した後,配当可能利益をもって会社が取得することを前提として発行される株式)のように会社による現金償還を想定する手法に大別される。通常、①のケースはファンド側の想定する投資リターンは高くなり、②は予め決められた一定額のリターンを想定する。  

◆ファンド利用者側の視点
被投資側の企業から見た場合、何を目的にファンドの活用を検討するべきか。

資金と資本

単に「資金」を調達する場合、銀行借入等の有利子負債による調達は、株式などの資本性資金の調達より会社が直接負担するコストは優位となる。資本性資金を調達する目的は何か。それは、中長期の安定的な資金を調達することにある。
他方、調達資金のコストのみならず、会社「資本」の充実という観点では、株式を中心とした資本性資金の調達を検討することになる。
一般的に、金融機関等の債権者、及び取引先は、対象企業の中長期の財務安全性を評価する指標として自己資本比率を重視する。 その為、企業の与信力確保の観点からは一定の自己資本比率の維持に努めることが重要であり、何らかの事情で自己資本比率が低位におかれている局面においては、資本性資金の調達によって、会社資本の充足を図ることが業績の波動性を吸収し、安定的な経営基盤を確立する観点から重要となる。

コスト

スクリーンショット 2018-02-23 17.12.47投資家たる株主は、金融機関等の債権者よりもリスク許容度が高いため、投資家が求めるリターンは当然債権者よりも高くなる。ただし、投資の形態により、ファンド投資家の求めるリターンは異なるため、その構造を理解することも重要となる。市場もしくは第三者売却を前提した投資類型(普通株式等)であれば、議決権を保有することに加え、リターンとしては配当によるインカムゲイン、及び株式の取得から売却までの株価上昇による利益のキャピタルゲインを投資のリターンとして想定する。他方、会社による現金償還を前提とした配当優先株式等の場合には、通常、無議決権の配当優先種類株式として発行され、インカムゲインとしての一定の確定利回り等を求めることが一般的である。
すなわち、ファンドの投資に伴い保有する議決権の比率と会社が直接負担する調達コストは、通常トレードオフの関係にある。

ガバナンス、経営支援機能資金

外部資本を受け入れることで、ファンドによる適切な監督機能が発揮され、経営に適度な緊張感が生まれることで、より健全な成長を促進する機能をもたらす。さらに、ファンド投資家の機能として、経営人材の派遣機能や国内外を問わず有効な相手先とのアライアンスの促進が図られることが期待される。

②中立性

冒頭述べたように、官民ファンドの役割として、民間の金融機関等では投融資が困難な分野や民間の機能が不足する領域に対して、民間の金融機関やファンドが本来果たすべき機能を補完とするために政策的に資金供給を行うことが期待される。民間ファンドが投資収益の最大化を目的に投資検討・実行を行うのに対して、官民ファンドは政策的な投資目的や社会的な影響力を考慮し過度なリターンを追及しないため、既存経営者や株主によっては、資金調達手法の選択の幅を広げることになる。
また、官民ファンドによる資金拠出と企業への関与により、対象企業への与信力強化や事業領域に対する民間金融機関等の理解が高まることにより、対象企業に対する民間資金の流入を誘発する、呼び水効果が期待される。

③支援内容

官民ファンドは、民間ファンドより充実した経営支援機能を有することも特徴といえる。官民ファンドの政策的な位置づけにより、投資先企業においては、専門人材の派遣、アライアンスの促進、海外進出支援など、様々な経営支援を受けられる可能性が広がる。
また、地域企業に対する資本性資金(リスクマネー)の供給については、地域金融機関や地方に拠点を有する証券会社との親和性が高く、官民ファンドとの補完関係を構築しやすい。具体的には、地域金融機関と協調した資金拠出、及び人的な支援を含めた経営支援機能は、地域金融機関に不足する機能を補完し、地域企業は官民ファンド活用の窓口として地域金融機関を利用することで、その有効的な活用が期待される。

執筆者

NEXT CFO 編集部

 NEXT CFO編集部

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