• ホーム
  • インタビュー
  • 経営者に求められるのは人と組織の能力を引き上げること。USEN-NEXT HOLDINGS 取締役副社長 COO 島田 亨氏

経営者に求められるのは人と組織の能力を引き上げること。USEN-NEXT HOLDINGS 取締役副社長 COO 島田 亨氏

この記事は2018年2月発行のREVOLVING DOOR vol.18より転載しております。

アセット 5

アセット 2株式会社 USEN-NEXT HOLDINGS 取締役副社長 COO 島田 亨氏

1987年、株式会社リクルートに入社。2年後の89年に株式会社インテリジェンスを宇野康秀、鎌田和彦、前田徹也らと創業、 95年取締役副社長に就任。99年に退社後はエンジェル投資家として活動し、株式会社シーズホールディングス代表取締役、株式会社日光堂(現株式会社BMB)取締役副社長、株式会社楽天野球団代表取締役社長、楽天株式会社取締役執行役員 プロスポーツ事業カンパニー社長、フュージョン・コミュニケーションズ株式会社代表取締役社長、楽天株式会社 アジアRHQ準備室担当役員、代表取締役副社長などを歴任。2017年、株式会社U-NEXT取締役副社長COOに就任し、同年12月より新しい持株会社である株式会社USEN-NEXT HOLDINGSの取締役副社長COOに就任。

映像配信事業などを手がける株式会社U-NEXTと音楽配信事業などを手がける株式会社USENが統合し、2017年12月1日付で株式会社USEN-NEXT HOLDINGS(東証一部上場)が誕生しました。同社を率いるのは宇野康秀氏とともに株式会社インテリジェンスを立ち上げた島田亨氏です。かつての盟友が再びタッグを組み、新しいビジネスに挑み始めました。島田氏はこれまでエンジェル投資家として若いアントレプレナーのメンター役を担いながら、株式会社楽天野球団の立ち上げをはじめ、楽天株式会社の代表取締役副社長を務めるなど数々の経営を担ってきたプロ経営者です。氏の原点やCOOの役割、今なぜ盟友とタッグを組んだのかなど、氏の考え方に迫りました。

興味があればすぐにやる。 竹の子族も。

須原 : 島田さんの著作にも触れられていますが、改めて、子どものころになりたかった夢を教えてください。

島田氏 : 小学生のときは天文学者になりたいと思っていました。図鑑などをよく眺めていて、イギリスのグリニッジ天文台が時間と天文の基準になっていることを知って、すごく憧れました。その割には、そこからまったく深掘りはしませんでしたが(笑)。

須原 : 子どもらしい夢ですね。あと、非常に興味深いのは、今の島田さんからは想像もつかないのですが、竹の子族だったというエピソードがあります。

島田氏 : はい。あの頃はとにかく勉強が嫌いで、授業で起きていた記憶がないほどです。だから当然、成績は悪い(笑)。進学校だったこともあり、自分の居場所が見つけられず、それで、たまたま当時流行っていた竹の子族に居場所を求めたんです。

須原 : それが島田さんの原点?

島田氏 : 竹の子族が原点というのはどうでしょう(笑)。でも、そういう意味でいくと、竹の子族のようなことをやっていると周りの人がいろいろと言うんです。あんなことやって恥ずかしくないのかとか、逆に楽しそうで憧れるとか。しかし、そういう割には皆さん誰もやりませんよね。僕は興味を持ったらすぐに何でもやってしまう。原点はそこかもしれません。僕は好奇心が旺盛過ぎるのですが、今は茶道、華道、ボクシング、DJ、ゴルフ、クラシックカーレースのミッレミリアにもハマっていて、仕事する時間がないほどです(笑)。興味を持つと恐れることなく、すぐ飛び込んで行ってしまう習性なんです。

人生の選択で逆算はしない。

アセット 1須原 : 島田さんは大学卒業後、新卒でリクルートに入られ、入社2年目で起業をしましたが、商売を始めるタイミングは事前に決めていたのですか?

島田氏 : いいえ、決めていません。いつまでに何をやるという目標設定を決めたことは、これまでほとんどないですね。

須原 : それは意外です。島田さんは手帳も緻密に記録されている方なので、すべて逆算しているイメージがありました。

島田氏 : 仕事の段取りについては逆算します。でも人生の選択で逆算はしないですね。

須原 : 今も、ですか?

島田氏 : はい。今もしていません。例えば、目の前に次々といろんな機会が来ますよね。もちろんある程度の取捨選択はしますが、直感で面白いと思ったものは、全部やってみるんです。逆算で計画をしてしまうと、計画の幅の中でしか選択できないですよね。だから、僕はその幅の外も関係なく選びます。そのほうが時代にあった一番旬なものを拾っていける可能性が高いですし、僕はその機会を活かせる力はあると思っているんです。なので、結果的にその時代、時代で一番面白いことをつまみ食いしてきた。そんな人生ですね。

須原 : それはまさに島田さんの投資活動そのものですね。ご自身ではできない部分をアントレプレナーの目標や夢にリンクさせています。茶道や華道をやるのとも似ています。

島田氏 : そうですね。だから僕にとって投資は事業ではなく、ライフワークなんです。僕はアントレプレナーが「やりたい!」と思っていることを聞かされると、「あっ、これは面白い」って思ってしまうんです(笑)。

楽天野球団という転機。

須原 : 今でもすごく覚えているのですが、島田さんが当社にいらして「野球をやることになりました」と報告をいただいたことがありました。あれは、楽天の三木谷会長からの一本の電話で、面白そうだと思い、すぐに楽天野球団を引き受けられたのですか?

島田氏 : さすがに即断はできませんでした。一週間ほど考えましたね。

須原 : あの日「僕は野球にまったく詳しくない。それが逆に良いかもしれない」とおっしゃっていたんです。楽天野球団は島田さんの中でも大きな転機でしたか?

島田氏 : 今はライフワークであるエンジェル投資家を続けながら、最前線で事業経営もするスタイルを確立しましたが、このスタイルを確立するきっかけとなった大きな転機だと思います。あの頃はインテリジェンスを辞めて5年くらいエンジェル投資家をしていて、自分の手を動かして仕事をすることから離れていました。5年ぶりに会社をゼロからつくる疑似体験をもう一回させてもらった。すごく貴重な経験でしたね。

須原 : 楽天野球団は初年度から黒字化を果たされ、そして楽天へと入って行かれましたが、マネジメントスタイルの点からインテリジェンスと楽天は似ていましたか?

島田氏 : まったく異なるものでした。楽天は基本的に管理型マネジメントで、フレームワークがあってきちんと管理するスタイル。インテリジェンスは数字の管理は徹底していましたが、それ以外のことは基本自由。どちらが良いと言うことではありませんが、ある程度のスケールの組織を回していくには、フレームワークは最低限必要であることを学びました。両極端のスタイルを見たので、僕の中では良い状態で融合できましたね。

おもちゃ箱状態の新会社

須原 : 今回また宇野社長とUSEN-NEXT HOLDINGSを一緒にやられる。私の中では島田さんが戻って来たという感覚ですが、なぜこのタイミングで戻ろうと思われたのですか?

島田氏 : 戻ってきたという感覚は、イエスでもノーでもありません。ニュートラルな感覚です。ひとつはプロ経営者として見たときに、楽天野球団から楽天に入ったときはものすごい成長プロセスにあり、積極的にM&Aも行う経営が面白かったんです。それと同じように今のUSEN-NEXT HOLDINGSという新しい企業体は、僕にとってはおもちゃ箱状態。アセットがいっぱいあり、繋げたらすごく面白いものができる。これは非常に魅力でした。あとは盟友である宇野さんの事業をより良い形で短期間で仕上げるためにサポートするということは、自分の人生において一定期間割いても意義のあることだと思っています。事業としても魅力的ですし、宇野さんをこの局面で助けたい。その両方があります。

須原 : 島田さんはプロ経営者として、いわゆるエスタブリッシュな企業に行くのだろうと思っていましたが、その選択をしないのは、やはり島田さんらしいです。

島田氏 : 本当にプロ経営者を目指しているのであれば、そっちに行くと思うんです。しかし、僕はプロ経営者になりたいわけではなく、自分も一人称として事業を楽しみたいし、エンジェル投資家としても楽しみたい。事業を楽しむときには、一緒にやる人と楽しむ材料が重要で、宇野さんと一緒にやるのは最高のコンビネーションですし、やりやすい上に、素晴らしい材料も手元にある状態ですから、わざわざエスタブリッシュな企業に行かなくても楽しめます。

大事な仕組みはメンタリング

アセット 3

須原 : 新しい企業ではどのようなマネジメントスタイルをお考えですか?

島田氏 : ディテールの話になってしまうのですが、基本的には人を育て、伸ばしていく組織にしたいと思っています。今までは商品の力に頼る部分が大きかった事業体でしたが、これからは人の能力、組織力で勝負していかなくてはいけない時代だと考えています。既存の人も、これから新しく入ってくる人も、その能力を伸ばして、事業のパフォーマンスを出していくという仕組みにしていかなくてはいけません。それをやっていく一番大事な仕組みは、やっぱりメンタリングだろうと思っていて、経験のある人が次の人に対してきちんと適正な頻度でコミュニケーションできる職場にしていきたいです。

須原 : 私の島田さんのイメージは、ノーとはハッキリ言わない。けれど、結果として島田さんのイメージ通りに動いているように見えます。

島田氏 : どうでしょう?僕はイエスしか言わない、究極のイエスマンなのですが(笑)。

須原 : でも、イエスと言いながらも、その通りにはやらない

島田氏 : そういう意味で言うと、僕は宇野さんなら宇野さん、三木谷さんなら三木谷さんの意をくんで、現実的なやり様に仕立て上げるということをやっているんだと思います。彼らのやりたいこととやり方をそのまま通すのではなく、やりたいことは尊重しながら、やり方は変えるということかもしれませんね。

須原 : トップに対してもメンタリングをしている。

島田氏 : 僕が考える一番強い会社は、究極を言えば、プライベートカンパニーだと思っています。上場していてもオーナー色が強い会社というのはやっぱりイノベーティブです。しかし、ガバナンスの視点からすると上場オーナー会社はすごく微妙なバランスだと思いますが、オーナーがこれまで事業をつくってきた嗅覚や勘、センス、そして人がやらないものに度胸を持って挑む姿勢などは尊重すべきで、それを薄めることはナンセンスです。だからオーナー会社を組織的な会社にすべきではない。オーナー会社としてもっとエッジを効かせていくべきです。ただ、逆にいうと、オーナーが現場をわかってしまうと制限もわかってしまうので、斬新なアイデアを言えなくなってしまう。宇野さんにしても、三木谷さんにしても、様々なインプットをもって、次はこれだとバシッと出されると、「これはすごい!」と言う声も、「そんなことをやらなきゃいけないの?」と言う声も現場から出てきます。そのときに、それを押し戻すのではなく、現場としてどうやれば実現できるのかを、きちんと会話していくのが僕の役目なんです。宇野さんなり、三木谷さんなりが実現したいと思っていることを、現場に対して、「これだったらできるよね」、「これだったら今までより遠くへ泳げるかもしれない」、そんなことを彼らに腹落ちさせて形にしていくことが、COOの役割だと考えています。

須原 : ただ、それを実践できるCOOはそう多くはいません。私は戦略不足で伸びない会社よりも、オペレーションしきれず伸び悩んでいる会社の方が圧倒的に多いと感じていますし、私たちのコンサルティング業界でも今、COOが注視されています。

島田氏 : COOとして一番困っていること、助けて欲しいことは明確にあります。戦略にかかる時間は全体の仕事の中で言えば2~3%ですが、そこで決まった話を実際のオペレーションに落としていくとなると、誰に何をやってほしいのかを整理して、それをその人に対して腹落ちをさせて、今の仕事と調整しながら、なおかつ横の調整も行う。それを全部仕立て上げるのは、決まったこと1に対して、かかる工数は30ぐらいあるんです。10あったら300になります。これを組織に対して、どうやって効果的に効率的に転化させて、横同士のコンフリクトを調整して動かすのかということが一番大変です。

須原 : その重責を負いながら新会社をオペレーションしていかれるわけですが、今後どれくらいの事業規模にしようとお考えですか?

島田氏 : 今の段階では裏付けがありませんが、売上規模で約1,000億円、5年後くらいには3,000億円くらいまで持っていきたいと思っています。

次なるアンディ・ウォーホールを探して

須原 : 最後の質問となりますが、島田さんが今後の人生でやりたいことを教えてください。

島田氏 : 次はもう決めているんですよ。

須原 : なんだろう? DJじゃないですよね(笑)。

島田氏 : 違います(笑)。答えを言いますね。僕はモダンアーティストのインキュベーションをやりたいんです。これからはアートの時代だと思っていて、現代作家さんが好きなんです。ファイブハンドレッド・スタートアップスのように、現代作家さんが創作・制作をするインキュベーションの施設をつくって、その中のコミュニティでコラボレーションさせる。ドイツのバウハウスのようなイメージです。施設運営が目的ではなく、世界各国のモダンアーティストをインキュベーションしていく投資をしていきたいと思います。アセット 4
須原 : アートは見極めるセンスがないと難しいですよね。

島田氏 : そうですね。好きであることと一定のセンスは必要ですが、次なるアンディ・ウォーホールをどう見つけていくのか。これはビジネスとして大きな可能性を秘めていますので、アントレプレナーと会っているのと同じように、ニューヨークやロンドン、南米に行って、作家さんと直接会って話を聞き、好きなアートだったら投資を決めて、インキュベーションする。そういう人生だと時間も自由で楽しいだろうなと思っています。

須原 : しかし、どのお話を聞いても島田さんワールドですね。インキュベーションはまさにベンチャーであり、新会社で人を育てることと作家さんを育てることは一緒の発想です。

島田氏 : 実は、育てるという言葉は、僕の中でまだ腹落ちしていないんです。誰もが良い教育を受け、高い能力を持っていますが、やって良いことの判別というか、何か新しいものを自分でつくってしまうことに対して、自由に表現することが日本の教育ではできていないんですね。だから、彼らが近くでそういうことやっている人を見れば、やってもいいんだと思えるはずです。例えば、堀江貴文さんの近くにいれば、「なんだ、世の中そんな堅苦しく考えないでこんなことやっていいんだ」とわかりますよね。それで良いと思うんです。僕はそういう体験をさせていく機会がたくさん必要だと思っています。

須原 : そのためには教えてもらうのではなく、反応しようとする姿勢が必要ですよね。

島田氏 : そうです。だからメンターなんですよね。何か良いアイデアを持っていて、それをやりたいと思っているのにやってない。そういう人が世の中には多いんです。だから、やればいいんです。制約条件を外してやるということがどれだけ楽しいことか。ただ、やるからには責任があるので、やり切らなきゃいけないということを、どうやってこの新しい組織の中で根付かせていくか。これから試していこうと思っています。

須原 : わかりました。本日はありがとうございました。

編 集 後 記

お付き合いは、かれこれ20年。いまさらながら、月日の過ぎゆくスピードに驚かされます。島田さんは、ベンチャー企業家であり、大規模組織を率いる事業家であり、事業と人を目利きする投資家でもあります。加えて、多彩な趣味人であり、多くの友人を持つ社交家でもある。いくつもの顔をごく自然に共存させ、短期長期で自在に操るキャパシティーの広さ。島田さんの強みは、4次元ポケットといってもいいほどの人としての容量の大きさ、ではないでしょうか。振り返ってみれば、いつも笑顔でいる印象で、一度たりとも叱られたことがありません。一方で、ひとたび依頼される相談ごとについてのこだわりや要求水準は高い。他者への寛容さと自己への徹底したこだわりを併せ持つのも、島田さんらしさ。
これからも公私ともに気の置けないお付き合いをよろしくお願いします。

 

 

執筆者

NEXT CFO 編集部

 NEXT CFO編集部

経営者・管理職にCFOの役割を広めたい!CFOが活躍する社会をつくることで、日本経済を活発にしたい!そんな想いでNEXT CFOのメディアを運営しています。