年々厳しさを増す地方銀行の経営環境について(後編)

この記事は2017年8月発行のREVOLVING DOOR vol.17より転載しております。

『年々厳しさを増す地方銀行の経営環境について(前編)』の後編記事となります。

都市部に各拠点を置く都市銀行と違い、地方銀行は地域金融の中心的な存在。しかし、地方銀行を取り巻く環境は年々厳しさを増している。地方銀行の経営統合や再編の発表が続くなかで、地方銀行の経営環境について、資料等を基に簡単にまとめてみた。

 

地方銀行平成28年度決算概況

地方銀行(一般社団法人全国地方銀行協会加盟行64行)の平成28年度決算概況は、資金利益が貸出金利回り低下による貸出金利息の減少、有価証券利息配当金(投資信託の解約益、株式配当金等)の減少、また役務取引等利益が保険販売手数料、投資信託販売手数料の減少といった要因から、コア業務純益は前年度比▲12.6%(▲1,531億円)の1兆660億円。

コア業務純益減少に加え、国債等債権関係損益が国債等債権売却損の増加などから、業務純益は▲18.5%(▲2,353億円)の1兆348億円。

業務純益減少に加え、不良債権処理額が幾分増加(120億円)したことから、経常利益は▲18.5%(▲2,574億円)の1兆1,316億円。当期純利益は▲15.4%(▲1,449億円)の7,954億円となった(図表1)。

また、個別行での決算状況は経常利益での減益行が60行、当期純利益での減益行が52行と前期より大幅な減益移行数となった(図表2)。

尚、貸出金(末残・国内)は3.5%の年率での増加となったが、マイナス金利政策の通期決算から、貸出金利の低下が大きく影響し、また平成29年度通期業績予想も前述の経営環境から多くの銀行が今年度も厳しい決算内容を予想している。

図表1:業務純益、コア業務純益、経常利益、当期純利益

業務純益、コア業務純益、経常利益、当期純利益

(資料)一般社団法人全国地方銀行協会


図表2 個別行の決算状況(単位:行)

年度 平19平20平21平22平23平24平25平26平27平28 
経常利益黒字 61336263636364646464
うち増益200613946345551384
うち減益413312416299132660
赤字 33120110000

当期純利益

黒字 62356261636364646464
うち増益1665835344853485212
うち減益4629426281511161252
赤字 22922110000

(資料)一般社団法人全国地方銀行協会

 

人口減少と貸出業務の将来

金利は様々な要因で決定されることから、将来の金利動向予測は困難だが、これまでの預金残高と貸出残高の差額(預貸ギャップ)と預貸金利鞘の関係を見ると、高い関連性が認められる。また、その貸出や預金の残高は、人口動態等と高い関連性があると見られる。

このことから、これらの関連性が今後も続くと仮定した場合、地域銀行の中長期的な収益構造がどのように変化するかを金融庁は分析している。

その分析結果から、顧客向けサービス業務(貸出・手数料ビジネス)の利益率を試算すると、2015年3月期においても、当該利益率は4割の地域銀行がマイナスであったが、さらに、2025年3月期では6割を超える地域銀行がマイナスとなるとしている(図表3)。

図表3:2025年における顧客向けサービス業務(貸出・手数料ビジネス)の利益率の試算

2025年における顧客向けサービス業務(貸出・手数料ビジネス)の利益率の試算

(資料)金融庁

尚、銀行の収益性は、こうした顧客向けサービス業務以外に、有価証券運用による収益等も勘案する必要があり、収益力の低下が直ちに財務の健全性問題につながる訳ではない。

しかしながら、上記の点を踏まえれば、今後、人口減少等により借入需要の減少が予想される中、顧客のニーズを捉えた特徴あるビジネスモデルを志向することなく、従来のように、担保・保証等で保全がされている先、信用力に問題のない大企業等を中心に単純に貸出残高を積み上げることで、収益を拡大することは、更に困難となる恐れがある。

また、図表3から、一般的に中小金融機関ほど営業経費等で規模の利益が働きにくく、早期に自らのビジネスモデルの持続可能性について真剣な検討が必要であるとも示唆している。

尚、以上の計数や試算等は全体としての傾向を記載したもので、個々の銀行状況や経営上の対応には相応の差異があり、このような一般的な記述が等しく該当するものではないが、総じて地域銀行の経営課題が深刻な状況下にあることは認識できるところである。

 

金融庁の企業ヒアリング

企業ヒアリングの趣旨・目的として、金融庁は金融機関に対し、担保・保証に依存しない企業の事業性評価に基づく融資や、企業の経営改善・生産性向上等の支援に積極的に取り組むよう促している。

他方、地域の中小企業等からは、依然として、「金融機関の対応は何も変わっていない」、「相変わらず担保・保証に依存している」といった厳しい意見が多く聞かれることから、金融機関の取組の実態を把握するため、財務局及び財務事務所による企業ヒアリングが実施されている(図表4)。

図表4:企業がメインバンクに求めるもの

企業がメインバンクに求めるもの

(資料)金融庁

以上のとおり、金融庁は、地方銀行の経営状況と将来性について人口減少を考慮し、且つ企業へのヒアリング内容から、中長期的に持続可能なビジネスモデルの策定・実行を求めるという重要な指針を発するに至った。

執筆者

NEXT CFO 編集部

 NEXT CFO編集部

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