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CFOの視点で考えるダイバーシティ&インクルージョン ~障害者雇用~

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皆さんは、『ダイバーシティ&インクルージョン』と聞くと、どのようなイメージを持たれるでしょうか。
CSRのイメージ…人事部門が担当のイメージ…等々、様々な回答が挙がるかと思います。

 

ダイバーシティ&インクルージョンは、近年注目されている“働き方改革”の中でも注目されている観点のひとつです。
一見、本メディアで取り上げている「CFO」とは関係が浅いように感じるかも知れませんが、
経営者のひとりとして考えるべきであることはもちろん、管理部門を統括することが多いCFOにとっては、実は非常に重要なポイントでもあります。

今回はその中でもとくに“障害者雇用”にフォーカスをあて、直近の障害者雇用状況集計結果も踏まえ、お伝えしたいと思います。

≪経営者視点でのダイバーシティ&インクルージョン≫

経営者にとって、ダイバーシティ&インクルージョンに取り組むことは、どのような課題を解決することなのでしょうか。
以下をご覧ください。これはダイバーシティ&インクルージョンで解決できる課題について調査した結果です。

D&I図1

出展:「平成28年度産業経済研究委託事業(働き方改革に関する企業の実態調査)報告書」より

 

これを見ると、経営者・役員クラスの人にとって、
ダイバーシティ&インクルージョンによって解決できる課題の第1位は『人材の確保』となっています。
ダイバーシティ&インクルージョンによって、
人材(労働力)の確保を推進していく、という観点は、これからの経営にとって重要な観点のひとつといえます。

 

他の記事でも述べていますが、日本の将来の人口は2050年には、総人口1億人を割り、生産年齢人口も5,001万人まで減少、
総人口に占める生産年齢人口の割合は51.5%まで低下すると推計されています。以下のグラフをご覧ください。

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(引用)総務省ホームページ 「我が国の労働力人口における課題」より

生産年齢人口がピークを記録していた1995年と比較すると、総人口は1億2,557万人、生産年齢人口8,717万人、
総人口に占める生産年齢人口の割合69.4%と大きな変化が起こっていることが見て取れます。

 

日本の経済・産業に大きな影響を与える“人材(労働力)の減少”という課題については、
その対策として、
①労働力を増やす施策、
②生産性を高める施策
の2点で検討されており、
その中でも企業の経営においては、
『働ける力があるにもかかわらず環境等様々な理由によって現在働くことができていない人材をより積極的に活用していく』という議論が
以前よりも活発になされていると感じます。

働ける力があるにもかかわらず環境等様々な理由によって現在働くことができていない人材とは、
女性や外国人、障害者、高齢者(アクティブシニア) 等を指していることが多いですが、
経済産業省の調査によると具体的に以下の人材が“活用が重要だと思う人材”として注目されているようです。

D&I図2

出展:「平成28年度産業経済研究委託事業(働き方改革に関する企業の実態調査)報告書」より

その中で、今回は、「障害者雇用」について掘り下げてみたいと思います。

上記の調査結果を見てみると、経営者・役員クラスにとって、「障害者」は、“活用が重要だと思う人材”として、決して注目度が高いとはいえません。
では、なぜ、上記の調査結果で注目度があまり高くない「障害者雇用」を掘り下げるのか、これから解説させて頂きます。

 

≪法律で義務付けられている障害者雇用≫

障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)において、企業は『法定雇用率』を超えて障害者を雇用することが法律で義務付けられています。
平成29年12月時点の民間企業の法定雇用率は2.0%であるため、
企業は、常用雇用労働者数の2.0%以上の人数の障害者を雇用することが義務付けられている、ということになります。

さらに、障害者雇用においては、毎年1回状況を報告することが定められています。
そして、その報告に基づき、不足数に応じた納付金制度(不足1ポイント*につき月額5万円**)があったり、
障害者雇用状況が思わしくない企業においては厚生労働省(労働局)からの指導がある等、法制面としても整備されています。

また、法定雇用率については今後引き上げることがすでに発表されており***、国としての注目度が高いことが伺えます。
それにもかかわらず、経営者・役員クラスの注目度が低いことは、今後の企業経営にとってのひとつのネックとなる可能性があるのです。

 

≪障害者雇用における影響≫

では、CFOにとって、障害者雇用が未達成である影響はどのようなところに出るのでしょうか。
事例も踏まえてお伝えします。

ひとつめとしては、不足数に応じて支払う「納付金」です。先述の通り、不足1ポイントにつき月額5万円、年間で60万円を支払うことになります。
とある企業では、株主総会において、この納付金の金額が大きいことを指摘する声が挙がったという事例もあります。
企業規模や上場しているか否かにもよりますが、管理部門を統括するCFOにとっては自分自身の責任となるところも大きいのではないでしょうか。

ふたつめは、公共事業等に入札をしている企業にとって大きい問題となりますが、
自治体によっては、障害者の法定雇用率を達成していることを入札案件の要件に定めているところもあります。
業種によっては大きな影響となることもあるかもしれません。

さらに、何よりも、『働き方改革』がこれだけ議論されている現代において、義務化されているほど注目度が高い障害者雇用が未達成であることは、
女性活躍や高齢者の再雇用の問題と並び、大きな遅れを取っている企業として、世間に認知されてしまうこともあるかもしれないのです。
障害者雇用が著しく進んでおらず、指導を経ても改善されない場合は、企業名を公表されることになっていますが、
これから先、『働き方改革』・『一億総活躍社会』・『少子高齢化』・『労働力減少』等々がさらに叫ばれていく中においては、
企業名公表は、これまで以上に悪い意味でのインパクトになりうると想定されます。

 

≪直近の障害者雇用状況≫

平成29年12月12日に、最新の障害者雇用状況集計結果が発表されました。
それによると、全国の民間企業の平均障害者雇用率(実雇用率)は、1.97%となっています。
対前年比で0.05ポイント上昇しており、法定雇用率に着実に近づいている結果となりました。
法定雇用率を達成している企業の割合は50.0%で、こちらも対前年比1.2ポイント上昇という結果でした(出展:厚生労働省「平成29年障害者雇用状況の集計結果」より)。

こちらも着実に改善傾向が見られますが、まだまだ継続的な取り組みが必要といえると思います。
さらに、従業員規模別の実雇用率を見てみると、500人以上の企業の平均障害者雇用率は法定雇用率をクリアしているという結果が見られました。
これは中小企業における改革が必要であることをあらわしているといえます。

 

≪人材確保と戦力としての障害者雇用≫

現在、新卒採用市場においても、学生の売り手市場傾向が強くなっており、とくに中小企業の人材確保が困難といわれています。
転職市場の有効求人倍率を見ても、人材確保が難しい時代であることは顕著です。
そしてこの傾向は少子高齢化が進む限り、今後も続いていくことが予想されます。

さて、ここで思い出してください。

この記事の冒頭でご紹介したとおり、経営者・役員クラスは、ダイバーシティ&インクルージョンに取り組むことで解決できる課題として、
『人材の確保』をもっとも多く挙げていました。
加えて、“活用が重要だと思う人材”としては、障害者よりも、女性・高齢者・外国人の方が注目度は高くなっていました。

ダイバーシティ&インクルージョンに期待している“人材の確保”ですが、女性・高齢者・外国人等の、どの企業もどの経営者も注目する観点だけでは、
自社の人材確保がスムーズに進められるとは限りません。

だからこそ、本記事では、障害者雇用を取り上げました。障害者を戦力として活用していく取り組みは、法律で義務化されているという観点だけではなく、自社の事業を支え拡大していく上での人材確保として、重要な視点となります。

 

ひとつの着眼点として、現在の障害種別ごとの雇用者数について、ご紹介します。
身体障害者・知的障害者・精神障害者・発達障害者等、障害の種類もさまざまですが、
障害者雇用のカウントは障害者手帳****の有無によってカウントされます。

先述の障害者雇用状況集計結果を見ると、身体障害者は333,454.0人(対前年比1.8%増)、
知的障害者は112,293.5人(同7.2%増)、
精神障害者は50,047.5人(同19.1%増)という雇用数になっています(出展:厚生労働省「平成29年障害者雇用状況の集計結果」より)。

精神障害者の雇用数伸び率は年々上昇しておりますが、絶対数を見るとまだまだ雇用は進んでいない状況です。
障害者数としては、身体障害者数:約3,937,000人、知的障害者数:約741,000人、
精神障害者:約3,924,000人(出展:内閣府「平成28年障害者白書参考資料」より)となっているため、
精神障害者(この中には発達障害者も含まれていますが)の活用が大きなポイントとなるでしょう。

とはいえ、CFOも含まれる経営者・役員クラスの意識として、ダイバーシティ&インクルージョン推進のための障壁もあります。

D&I図3

出展:「平成28年度産業経済研究委託事業(働き改革に関する企業の実態調査)報告書」より

障壁として捉えられているのは、第1位:中間管理職の意識の問題、第2位:多様な人材に対するマネジメントスキルの不足となっており、
中間管理職へのアプローチがダイバーシティ&インクルージョン推進の肝といえるでしょう。

以上、本記事では、ダイバーシティ&インクルージョンと障害者雇用について解説させて頂きました。

もちろんハードルもありますが、CFOがこういった視点を持っているか、こういった知識を持っているか、
こういった分野に関心を持てるかが、未来の経営において大きな意味を持ってくるのではないでしょうか。

 

*:障害者雇用数は、「重度であるか否か」や「就業時間」によって、1人で2人分の雇用としたり0.5人分とする等の換算がなされており、単位が“ポイント”とされています。

**:基本的には月額5万円ですが、時期や企業規模に応じて減額される措置があります。

***:平成30年4月1日より民間企業の法定雇用率は2.2%に引き上げられます。遅くとも平成33年4月までには、さらに0.1%引き上げられることが決まっています。

****:障害者手帳は、身体障害者手帳・療育手帳(知的障害)・精神障害者保険福祉手帳の3種類です。発達障害者はその障害の内容によって、療育手帳または精神障害者保険福祉手帳を所持しています。障害がある方であっても、すべての方が手帳を取得しているとは限りません。

執筆者

武内 栄希 氏

 武内栄希 氏

筑波大学第二学群人間学類卒業。筑波大学大学院教育研究科修了。事業会社にてBtoB営業およびダイバーシティマネジメントに関するコンサルタントとして従事。自社の評価制度策定および人材育成体系構築、研修講師等を担当した後、株式会社エスネットワークスにて、組織・人事全般のコンサルティングを行う。

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