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将来の労働力を確保するための高齢者雇用における有効性と課題、解決策

タブレットを持つビジネスマン

政府による働き方改革実行計画の発表

安部晋三首相は2016年8月の内閣改造で「働き方改革」を政権の主要テーマとして打ち出しました。

日本経済を成長させるために労働市場の多様な課題に対して対策を検討する内容でしたが、
日本経済における大きな課題のひとつとして挙げられているのが、「人口の減少と少子高齢化」です。

表1のとおり、2017年4月1日時点の日本の総人口は1億2,676万1千人、生産年齢人口は7,616万4千人、
総人口に占める生産年齢人口の割合は60.08%、65歳以上の高齢者人口は3,489万8千人でした。

また、総人口や生産年齢人口等が減少している一方で、高齢者人口のみ増加傾向になっていました。
さらに、図1のとおり、日本の総人口が初めて1億人を下回る2050年において、生産年齢人口は現在よりも2,615万4千人減少し、5,001万人になり、
且つ、高齢者人口は、現在よりも278万2千人増加し、3,768万人になるという推計が出ています。

この「人口減少と少子高齢化」により、日本の労働力人口が減少していくと考えられており、
政府としても大きな課題のひとつと認識し、取り組んでいるといえます。

 

 <表1:2017年の日本の人口推計>
2017年日本の人口
(引用)総務省統計局 「人口推計(平成29年(2017年)4月確定値,平成29年9月概算値)」より

<図1:日本の人口推移>
04
(引用)総務省ホームページ 「我が国の労働力人口における課題」より

それでは、少子高齢化がこのまま進んだとした場合、経済・産業への影響を大きくしないためにどのような施策が考えられるでしょうか。
現在、以下の2つの視点から対策が検討されています。

  • ①労働力人口を増やす
  • ②労働生産性を高める

 

歴史から紐解く日本の人事評価制度の特徴と今後の展望』でも解説しましたが、
①の「労働力人口を増やす」施策の中にはさらに2つの視点があり、ひとつは出生率をあげること、
もうひとつは、働ける力があるにもかかわらず環境等様々な理由によって現在働くことができていない人材をより積極的に活用していくというものです。

働ける力があるにもかかわらず環境等様々な理由によって現在働くことができていない人材とは、
女性や外国人、障害者、高齢者(アクティブシニア) 等を指していることが多いですが、
こういった人材の活用について、少しずつ取り組みが進んできています。本記事では、その中でも高齢者にスポットを当てて解説していきたいと思います。

 

 

高齢者雇用が労働力を増やすのに有効である理由

今日、高齢者雇用による労働力の確保は待ったなしといった状況にあります。
高齢者の雇用が労働力の強化に有効である理由は、主に以下の3つの大きな理由があるからです。

  • ①平成28年版高齢社会白書によると、60歳以上の人の71.9%が65歳以上においても就労を希望しているが、
    実際に就労できているのは13.5%に留まっている
  • ②2050年に向けて65歳以上の高齢者の人口は278万2千人増加していく見込みである
  • ③経験豊富な人材を活用することで即戦力としての活躍が期待できる

 

①については、現在の日本において『働きたいにもかかわらず働けていない高齢者が一定数いて、労働力として活用しきれていない』可能性があるということを示唆しています。
もちろん、現在働けていない理由は様々ですので、一概に“高齢者を積極雇用すれば労働力問題は解決する”とはいえませんが、
今後の労働力減少を考えてみると、有効な解決策のひとつであると考えることができます。

「働く意欲があっても働けていない高齢者が一定数存在する」という状況を追い風に今後の会社経営においては、
積極的に高齢者雇用に取り組んでいきたいところです。そのためには、ボトルネックになっている課題を考え、解消していくことが重要となります。

次に②について解説します。
冒頭でもお伝えしたとおり、2017年現在、65歳以上の高齢者の人口は3,489万8千人おりますが、
これが2050年には現在よりも278万2千人増加し、3,768万人になると推計されています。

仮に、①のとおり「65歳以上でも働きたいと考えている高齢者が71.9%いる」という状況が、今後も継続していったとするならば、
65歳以上の就労希望人口は2050年にはさらに増加している可能性もあります。

また、今後ますます健康寿命が延びていく可能性もあり、高齢者への労働力としての期待は高まっています。

そして③の「経験豊富な人材を活用することで即戦力としての活躍が期待できる」という点についてですが、
長年の経験と蓄積したノウハウを有する高齢者人材を雇用することは、企業にとっても大きな価値です。

実際に、定年退職後の高齢者とそういった経験やノウハウを欲している企業を結びつけるビジネスも増えてきており、注目度も高くなっている傾向があります。

 

高齢者雇用のハードルと対策

 次に高齢者雇用のハードルとなっている課題について考えてみます。
以下の図3と図4 は企業が考える高齢者雇用に必要な仕組みについてアンケートをした結果です。

ここでは、特徴的である、60代後半(65歳から69歳)の雇用に必要な仕組みと、
70代前半(70歳から74歳)の雇用に必要な仕組みについて取り上げてみたいと思います。

 

<図3:60代後半(65~69歳)の高齢者雇用に必要な仕組み(複数回答あり)>
高齢者仕組
(引用)独立行政法人 労働政策研究・研修機構「調査シリーズ No.156 高齢者の雇用に関する調査」より

 

<図4:70代前半(70~74歳)の高齢者雇用に必要な仕組み(複数回答あり)>
高齢者仕組2
(引用)独立行政法人 労働政策研究・研修機構「調査シリーズ No.156 高齢者の雇用に関する調査」より

 

上記を見ると、60代後半と70代前半のいずれにおいても、高齢者雇用に必要な仕組みは「健康確保措置」が第1位、
「継続雇用者の処遇改定」が第2位となっています。
双方の第3位についても共通しており、「とくに必要な取組みはない」という結果ですので、上位2つが大きな課題であることは間違いないといえます。

また、もう一点注目すべきは、70代前半になると60代後半と比べて、「健康確保」を必要な仕組みと回答した割合が増え、
「継続雇用者の処遇決定」を必要な仕組みと回答した割合が減っていることです。

こちらについては、当然の結果ともいえますが、実感値ではなくアンケート結果として明確に出ていますので、認識しておく必要があるといえます。

それでは「高齢者の健康確保措置」についてはどのように対策すればいいのでしょうか。
「健康」については世界保健機関(WHO)によって定義されており、
日本WHO協会によって『健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、
肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態にあることをいいます。』と訳されています。

「肉体的に満たされた状態」についてはイメージしやすいかと思いますが、病気や怪我といった物理的・肉体的な問題がない状態のことを指します。
近年注目されている「健康経営」の視点は高齢者雇用を考える企業においても重要な視点といえそうです。

健康診断・予防接種・スポーツジムの無料利用や割引を福利厚生としている企業もありますが、
これらの施策は将来の労働力確保という観点でも有効な施策であるといえるでしょう。

「精神的に満たされた状態」とは、いきいきと自分らしく生きるための重要な条件であり、
落ち着いていて心のゆとりがある状態のことを指します。
具体的には、自分の感情・気持ちに気づけること・表現できること、状況を適切に捉え、現実的な問題解決ができること等です。

適度な運動や、バランスのとれた食生活・日光にあたること・十分な睡眠をとること・ストレスと上手につきあうこと等が心の健康にとって重要な要素といわれています。

「社会的に満たされた状態」とは、充実した取り組みがなされている企業とそうでない企業のばらつきが大きくなっているといえるかもしれません。
社員同士がお互いに交流を深めることで健康増進を図る「互助」の発想が重要であり、具体的な取り組みにしていくには企業努力が必要です。

例えば高齢者のコミュニティ形成はいかがでしょうか。
近年の会社経営において、従業員構成の若返りが注目されがちですが、
高齢者が同じ立場にある高齢者同士で交流できる場の形成や若手社員と高齢者の交流の機会を意図的に増やす等、
高齢者が会社組織の中で居場所を感じられる状態を作っていくことが重要となるでしょう。

最近は減少傾向にある社内イベント(社員旅行・社員全員参加の懇親会等)についても、有効な手段のひとつとも考えられます。

最後に「継続雇用者の処遇改定」についてですが、こちらの施策としては同一労働同一賃金の施策などが挙げられます。
働き方改革で政府が打ち出す「同一労働同一賃金」制度は、労働者が意欲を持って働けるよう、正規労働者と非正規労働者の不合理な待遇の差をなくそうとする制度です。

政府は2016年12月、基本給や賞与などについて、どのような待遇差の付け方が不合理かを示すガイドライン案を作成しました。
制度の実現に向け労働契約法、パートタイム労働法、労働者派遣法の3法を改正し、ガイドライン案に実効性を持たせます。

厚生労働省が法案の作成作業を進めており、19年度にも制度が導入される見通しです。
ガイドライン案では、基本給を決める要素を「職業経験・能力」「業績・成果」「勤続年数」の3つに分類しており、
それぞれの要素が正規雇用と非正規雇用で同一の内容であれば同一の支給金額になることを原則としました。

賞与も「会社の業績などへの貢献に応じて支給する場合、貢献に応じた部分は同一」と定めました。
通勤手当や出張費ほか、社員食堂や更衣室の利用といった福利厚生なども同じにすることを定めています。

高齢者の雇用にあてはめると、高齢者雇用においては、再雇用前と同様の業務内容であるにもかかわらず待遇だけが変わるといったケースもあり、
課題のひとつとなっています。
本課題が解決に向かえば、高齢者の労働意欲の向上が図れると考えられます。

 

 

まとめ

本記事では、これからの日本の労働力確保における高齢者雇用の有効性や課題、解決策についてご紹介しました。
働き方改革の中で注目を浴びる高齢者雇用ですが、まだまだノウハウが蓄積しておらず、様々な工夫の可能性がある領域です。

経営者・高齢者・若手従業員・政府といったあらゆる方面の人が協力して高齢者雇用の推進に取り組むことで、
日本の経済成長を支えていくことが可能になるのではないでしょうか。

執筆者

NEXT CFO 編集部

 NEXT CFO編集部

経営者・管理職にCFOの役割を広めたい!CFOが活躍する社会をつくることで、日本経済を活発にしたい!そんな想いでNEXT CFOのメディアを運営しています。

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