年々厳しさを増す地方銀行の経営環境について(前編)

この記事は2017年7月発行のREVOLVING DOOR vol.16より転載しております。

都市部に各拠点を置く都市銀行と違い、地方銀行は地域金融の中心的な存在。しかし、地方銀行を取り巻く環境は年々厳しさを増している。
地方銀行の経営統合や再編の発表が続くなかで、地方銀行の経営環境について、資料等を基に簡単にまとめてみた。

 

地方銀行の経営概況

地域銀行(金融庁分類の定義:地方銀行、第二地方銀、埼玉りそな銀行)の2015年3月期決算は中核業務の貸出金を中心とした運用資産が引き続き増加となるものの、利鞘の縮小により資金利益は減少、実質業務純益は前期比で減少となった(▲2.7%)。一方で当期純利益は与信関係費用が減少したこと等から、前期比横ばいと引き続き高い水準を維持している状況である(図表1)。

また、不良債権比率は低下が続いており、不良債権開示の開始(1999年3月期)以降の最低水準となっており、自己資本比率も安定的に推移している状況である(図表2)。

貸出金残高の増加は、従来からの貸出金増加が個人向け、大・中堅企業向け、地方公共団体向け貸出で支えられてきたが、近年は中小企業向け貸出の増加が貢献している状況にはあるものの、貸出金残高の増加で資金利益をカバーできない状況にある(図表3、5)。

しかし、資金利益は低迷しているものの、足下の地域銀行の健全性は総じて確保されており、将来的にもこの健全性が維持されることが重要となってくると金融庁は指摘している。

■図表1:地方銀行の損益の推移

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(資料)金融庁


■図表2:地方銀行の不良債権比率•自己資本比率

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(注)13/3以降の自己資本比率は国内基準行の比率 14/3から新国内基準の適用開始 (資料)金融庁


■図表3:地域銀行及び第二地方銀行の貸出増価額(対前年比)の内訳

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(資料)日本銀行

 

ビジネスモデルの中長期的な持続可能性

前述のとおり貸出は緩やかに増加しているものの、貸出金利回りは年々低下傾向にある(図表4)。この低下は過去に融資した比較的利回りの高い貸出が順次償還され、低金利の新規貸出に置き換わることによるものとみられ、また、銀行間の融資シェア競争による金利低下があげられる。

よって国内の金利水準の低下を受けた貸出利鞘の縮小によって、資金利益は連続で減少が続いている状況(図表5)(資金利益はコア業務純益のうち、資金の運用により得られた利益で貸出金利息や有価証券利息配当金などの収益から、預金利息等の資金の調達費用を差し引いたもの )。

この推移から、金融庁は各行の貸出業務の今後の収益動向をみるために、貸出金利息収入の増減が経常利益に与える影響について、一定の仮定を置いて、機械的に試算( 収益シミュレーション )をしている。

仮定の前提条件は

①今後の新規約定金利、新規貸出取組高および貸出金残高は過去3カ年の平均的なペースで増減すると仮定
②過去の貸出金が償還・返済され、新規の貸出金に置き換わる際、償還・返済される貸出金の金利水準は、2年前の新規約定金利と仮定しての試算。

この結果、各行により相当のバラツキがあるものの、2018年3月期の経常利益( 試算値 )が現状( 2014年3月期 )の半分以下の水準となる地域銀行が2割程度あると試算されている( 図表6)。

また、昨年2月のマイナス金利政策を受け、貸出金利の低下が加速していることは前提条件を更に悪化させている。この試算は地方銀行のビジネスモデルの持続可能性を示唆している。

■図表4:地方銀行の貸出金利回り等の推移

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(資料)金融庁


■図表5:地域銀行

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(資料)金融庁


■図表6:地域銀行の経常利益の増減率の分布(試算)

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(注 )18/3 経常利益(試算値 )の14/3経常利益に対する増減率の分布状況 (資料 )金融庁

 

次回『年々厳しさを増す地方銀行の経営環境について(後編)』へ続く

執筆者

NEXT CFO 編集部

 NEXT CFO編集部

経営者・管理職にCFOの役割を広めたい!CFOが活躍する社会をつくることで、日本経済を活発にしたい!そんな想いでNEXT CFOのメディアを運営しています。

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