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【特別対談】新創監査法人 統括代表社員 柳澤 義一先生に聞く人財交流とこれからの会計士の在り方

この記事は2017年7月発行のREVOLVING DOOR vol.16より転載しております。

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新創監査法人と株式会社エスネットワークスでは、2016年9月より人財交流プロジェクトを発足し、お互いの社員を出向させ、監査法人とコンサルティングのノウハウをぶつけ、昇華させる取り組みを始めました。

今回は柳澤 義一先生にお時間をいただき、人財交流をはじめ、これからの会計士のあり方について、弊社代表 須原伸太郎と執行役員 下村雄一郎とともに語り合っていただきました。

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新創監査法人 統括代表社員
柳澤 義一先生

弊社代表の須原と20年来のお付き合いのある公認会計士 柳澤 義一先生は日本公認会計士協会の本部理事、東京会会長、品質管理委員会委員など数々の公職を歴任され、現在は日本公認会計士協会本部副会長、日本内部統制研究学会理事等をされている日本の公認会計士を代表する先生のおひとりです。

また、新創監査法人の統括代表社員として、クライアントの発展につながる監査を常に考え、東証の有名企業などの会計監査人や、社外役員をされています。

柳澤先生との偶然の出会い。

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下村:須原との出会いは、いつになりますか?

柳澤先生:須原さんが外資系広告代理店に勤められていたころですよね。

須原:そうです。90年代の終わりです。

柳澤先生:日本公認会計士協会が50周年事業を行うときにご協力いただいたのですが、その広告代理店に会計士がいるということで、須原さんが担当としていらっしゃったのが最初の出会いです。妙に話が合って、飲みにも行きましたね。

須原:はい。会計士だとは言わずに代理店に勤めていたのですが、どこからかそういう話になってアサインされまして(笑)。でもご縁だなと思いました。当時から自分で身を立てたい。と考えていたので、先生と飲んだときも、「どうやったらそんなBIGクライアントを取れるんですか?」みたいな質問をしていた記憶が…

柳澤先生:世間的にはわかりやすいクライアントが多いだけで、なんとなくいろんな企業をやっていますね、と思われてしまいますが、エスネットワークスさんのほうがよほど幅広くて、そこはうちが見習わなくてはいけないところです。

下村:不思議なのは、出会ってから今回の人財交流が始まるまで約20年間、おふたりはどんなつきあいをされてきたのですか?

須原:どちらかというと私が先生に頼ることが多く、例えば採用のご相談だったり。

柳澤先生:定期的にはお会いしていましたね。須原さんが海外展開するあたりから、うちの若いスタッフを使っていただいて経験を積ませたらどうだろうと思っていたんです。

須原:食事をしながらご相談をさせていただいて、人財交流も私たちから相談をさせていただきました。

柳澤先生:3年前になりますかね。

須原:公職でお忙しかった時期ですよね。

柳澤先生:当時は日本公認会計士協会の副会長をやりながら、東京会の会長をやって、全国の地域会も担当していましたね。

須原:今は本部の副会長として活動されて。

柳澤先生:そうですね。今は副会長として、組織内会計士をターゲットにした施策や税理士として活動している公認会計士へのサービスを考えたり、中小会計事務所の監査に対するフォローや中小企業に対して会計士が何をすれば良いのかというコンサルティング的な部分の施策を担当していて、本当にいろいろやらされています(笑)。

須原:そうなると公職と新創監査法人のお仕事の割合は?

柳澤先生:3年前は会務のほうが割合は7割程度でしたが、今は3〜4割程度に減りました。

須原:先生に公職の立場としてお伺いしたいのですが、東芝のニュースを見ていて、日本公認会計士協会の選任会計監査人、つまり国選弁護人のような国選監査人制度があれば良いのではないかと思ったのですが。

柳澤先生:さすが須原さんですね。実はある著名な先輩会計士とも、そういう制度は必要だと話していたところです。マーケット的にも潰してよい企業ではありませんから、会計士も国選弁護人的なレスキュー隊、すなわち救急医療的な制度は必要だと思っていました。

須原:そうなんですね。引き受けた監査法人はどんな大義名分があっても不利になる。対して東芝は東芝で、監査法人を選んでもオピニオンショッピングと言われる。

柳澤先生:そうですね。これは一概には言えないのですが、たぶん須原さんたちの世界だと当たり前ですが、マーケットがクライアントをどう見ているかとか、監査法人はそこを考えなくてはいけないわけです。それによって路頭に迷う人がたくさん出る。もしくは日本経済が混迷に陥る。さらに技術を含め流出してしまうような事態を招いたとするならば、国益にならないですから、うまい着地点を見つけてほしいですね。

 

なんでもありの人財交流。

須原:人財交流の話に戻りますが。

柳澤先生:そうですね。今回、成功でしたと言えば、簡単に聞こえてしまいますが、スタートするまでに時間がかかりましたよね。そうは言ってもどういう人が出せるのかというのは悩みどころでした。

下村:私たちも悩ましかったです。

須原:私たちはコンサルティング会社ですから、メンバーたちは企業内会計士としてコンサルティングの世界に入ったものの監査をしたことがない。会計士になったからには一度はやってみたいという声が多かったので、これを解決する妙案が、先生へのご相談のキッカケでした。おかげさまで、弊社メンバーがお世話になり、今回の人財交流は弊社の採用にとっても大きなメリットでした。

柳澤先生:一度は監査をやれる、あるいはやってみたいという希望が持てますよね。

下村:実は弊社から出向したメンバーは、当初「行きたくない」と言っていたんです。「弊社に入社するにあたり監査をしないものと決めていたので、監査をと言われても心がすっきりしません」と。でも、それが今では「本当に行って良かった。監査のチェックの仕方や業務の標準化の仕方がすごく勉強になった」と言っています。本当に良い交流だったと思っています。

柳澤先生:手を上げればいつでも監査法人にも行けるんだというパイプがあるのは、メンバーの安心感にもつながりますよね。逆に監査法人からすると、監査経験しかないというのは、ある意味、外の世界を知らないことになりますので、やっぱり2〜3年のコンサルティング経験で公認会計士としての幅を広げたい。だから、コンサルティングファームに出て行けるという安心感は私たちも同じです。

しかしそうは言っても、監査現場を離れてコンサルティングの現場に出るというのはとても勇気がいるし、もっと言ってしまえば、それで自分がどうなるのかというのが見えないわけです。でも、やってみてうちのメンバーも一皮むけたと思いますね。

須原:新創監査法人さんから来ていただいた方には、弊社の中でも新規事業を担当していただきました。しかし新規事業ですから、想定外のことがたくさん起こるんです。そんなときでも、彼が弊社のメンバーに落ち着けと諭してくれて。

柳澤先生:きっと仕切りたいところがあるんですよね。ルーティン的に手続きが組まれている監査の仕事は、自分の仕切りはなかなか出せないところなんです。極端な話をすれば、チェックリストを埋めれば、それで形ができてしまう。クリエイティビティのある人にはフラストレーションが溜まりやすい。だから、彼は出向したほうが良いと感じていました。

それと今回、良かったのは須原さんの提案です。なんでもありでいきましょう。ダメならキャンセルもありで、ごめんなさいで済ませましょうと。私もまったくの同意で、それぞれの立場でいい人を出せば良いので、それが双方にとってイコールである必要はまったくない。それが良かったと思います。

須原:そう言っていただけるとありがたいですし、逆になんでもありでできたのは、たぶん先生と20年来のお付き合いを続けてきた信頼関係があってのことだと思います。

柳澤先生:これは本当にお世辞じゃなくて、広告代理店にいた当時から須原さんはすごいポテンシャルをお持ちの方だと思っていたので、いずれ独立していろいろおやりになるだろうと感じていましたし、たぶん独立すればどんどん伸びていくだろうと。今まさにその通りに進まれていますし、人財交流は本当にそこからの信頼感ですよね。出向した者は本当に一皮むけたと思いますね。

下村:来ていただいて、非常に助かっています。

 

むしろ監査が嫌いなメンバーを選ぶ。

p14_01須原:弊社のメンバーは先生から見て何が強みでしたか?

柳澤先生:あくまでもイメージですが、彼はすごく柔軟性がありますよね。見た目と違うのですが(笑)。実は現場に入るとかなり粘着性があって、真面目な部分と押しの強い部分の両方を持っているタイプなんです。

これはとても大事で、押しが強いだけだと周りが反発する。真面目なだけだと折れてしまう。一見真面目、ソフトだけど、実は粘り腰があるという点で、昔風に言えば根性がある。だから、非常に適応力が高いです。

須原:そのイメージわかります。

下村:正直、誰がいいのか悩んだんです。悩んだ末、やっぱり先生に言っていただいたような腰の強そうな、むしろ監査が嫌いではないかというメンバーを選んだというのがあるんです。それがうまくいきました。

柳澤先生:そういう意味では、監査の面白さというのは1年や2年ではわからないのですが、自分が深掘りしようと思うところは、いくらでも突っ込みどころ満載なわけです。やっぱりそこの腰の強さは絶対に必要で、そういう面においては、短い時間でしたけど、多少経験していただけたかなと思います。

うちが受け入れるタイプとしてはまだそれほど経験のない若手で、真っ白な状態で見られる人がベスト。言い方は悪いのですが、ボール磨きができるくらいの人です。一方で、エスネットワークスさんに出すのはボール磨きじゃ使えませんよね。すぐに代打で出番がある。

すると出すほうとしては、ある程度の即戦力じゃないと使えないだろうと考えました。そこは人財交流の難しさであるのですけど、今回はお互いがちょうどいいタイプがはまったので、成功できたかなと思いますね。

 

公認会計士の新しい道のり。

須原:また公職としての先生のご意見を伺いたいのですが、最近、会計士に対する魅力が落ち始めていると感じています。会計士=AIに代替される説もある中で、数字のリテラシーを持った公認会計士を、もっとこの業界に引き込むにはどうすれば良いのか?大きなテーマだと思いますが、どのようなお考えをお持ちですか?

柳澤先生:これは非常に難しい質問で、私たち会計士協会も悩んでいますが、本当は会計リテラシーを持っている人こそが経営者にもなれると思うんです。私が協会で採用推進の担当をやっていたときは、上場企業に対して会計士を経理部に入れる必要はありませんと言いました。

会計士は傾向と対策と数字に非常に強いですから、営業でもなんでもできますとね。やっぱり経営者があの会計士に助けられたとか、会社を支えてくれているのは会計リテラシーを持っている人だという認識が深まれば、会計士に対するリスペクトは高まると思います。会計士=経営がわかる人と世間に理解されれば、なりたいと思う人が増えてくるはずですよね。

ところが残念ながら、粉飾決済のような事件が起きるたびに監査法人が処罰され、なんとなく負のイメージができてしまう。本当だったら、誰が何て言おうが私の責任で意見を出すんだ!というほうが、人気が上がると思うのですが、そういう面が出しづらいのも現状です。

だからこそ、須原さんのような会計士でありながら起業している人やクリエイティビティの高い世界で活躍する会計士が増えてくるといいですね。監査をひとつのキャリアパスとしながらも、いろんな世界に展開する人が増えていることをアピールしていきたいです。p15_01

須原:そうですよね。たとえば専門学校の意識も変えてほしいとずっと思っていまして、専門学校は会計士受験者を集めるときに必ず「監査法人説明会」と銘打つんです。つまり合格=監査法人と、キャリアパスがひとつしかないように見えてしまう。

そこをたとえば、「大企業の企業内会計士説明会」と銘打って、上場企業が説明会を開き、それとは別に、私たちのようなコンサルティングファームも集まって説明会を開く。そうすれば、結果的に彼らが監査法人を選んだとしても、パスがいくつもある見せ方ができると思うんです。

下村:私たちからも専門学校に提案していますが、ようやく変わりはじめて来ましたね。

柳澤先生:これは須原さんたちと一緒に研究したいのですが、現状として試験合格者のほぼ100%が監査法人へ入りますが、10年以内に約7割が辞めてしまうんです。この現象に対して、どういうキャリアパスがあるべきかを考えないといけないと思います。

本筋からは逸れてしまいますが、私の大胆な構想をご紹介すると、会計士になる道筋は医学部と同じ6年教育だと思っています。4年間の学部と2年間の大学院で教育を行い、6年間の修了者だけが試験を受けられる。合格したら研修生という形で監査法人に2年間勤務し、そこで臨床教育を行う。その後に就職先を決めるという仕組みです。

コンサルティングファームや一般企業へいくのも、監査法人に残るのもいい。トータル8年間の教育をすれば、次が見えやすく、動きやすいはずです。今のような入り口での取り合いが解消できると思っています。須原:弊社も新卒採用で「監査法人と迷っています」と言われたら、監査法人を勧めています。迷ったまま入れば、それをずっと抱えますから。だったら監査法人へ行ったほうがいい。今辛いのは、入り口でそれを決めなければいけないということです。

柳澤先生:日本経済のためにも、新しい仕組みをつくっていかないとですね。私がさらにもう一石投じたいのは、監査現場に合格者だけを使う必要はないということです。資格のない人でも入れるように構造自体を見直さないといけません。全部合格者で固めようとするから頭数だけになってしまい、教育が疎かになってしまうんです。

さらに言えば、日本の経済社会において、税理士と会計士を分ける必要は本当にあるのか?という議論もすべきです。税理士と会計士を一本化した制度をつくり、そこに夢のある会計プロフェッションという資格を確立して、国がバックアップする。そういう制度設計を根本からやる必要があるんじゃないかと考えています。

須原:先生には国会に出てほしいですね。

柳澤先生:そんな気はまったくありませんよ(笑)。

 

経営者に寄り添うという根っこは同じ。

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柳澤先生:今回の人財交流も小さな私たちの個別の話ではありますが、よくよく考えてみれば、今の議論と全部つながるんです。やっぱり何を勉強して、どんな力を付けたいのかを考えたときに、監査なのか、コンサルティングなのか、どんなキャリアパスなのか。どうやって育てていくのか。そういう土壌をつくっていくきっかけとして、今回の人財交流は非常に意義があると思っています。

須原:振り返ってみれば、先生にご相談してきたのはそういうことだったと思います。企業活動は、ミクロでやっていることとマーケットのマクロが必ず絡むものですから、そこで立ち止まって考えなくてはいけないときに、折に触れてご相談をしてきた気がします。

柳澤先生:そうですね、その点から、私が会計士協会の役を務めていることをプラスに言うならば、周りに対して単なる情報提供だけでなくマクロ的視野で語ることができる、目に見えない形でメンバーに良い効果が出ているのかなと思っています。

そういうことをしないと、ただの小さな個人事務所になってしまいますので。理想とすべき監査法人とは?という課題を持っていれば、経営においてもそこは活かされる。いや、活かしたいと思っています。須原さんだと、監査法人という枠がないだけに、会計に軸足を置きながらなんでもありの世界をつくるというのはアイデンティティをどう持つべきか、難しいところですよね。

須原:そうですね。社内でも同時多発的に横に広げ過ぎだと怒られるんです(笑)。

柳澤先生:でも、事業アイデアが良いですよね。

下村:手前味噌ですが、ここまでチャレンジしつづけている会社は、業界でも少ないと思っています。それが社風や文化、考え方に表れている気もしています。

柳澤先生:きっとメンバーも背中を見て育っていくから、一生懸命、自分でアイデアを出してクリエイティブなことをしたい、もっとこうしたいとか、増えてくるのでしょうね。

須原:そうなんです(笑)。でも、やりすぎ。と言われます(笑)。

柳澤先生:それは須原さんの頭の中では面なんですよね。CFO SALONやCFO’s Eyeも点と点をつないで面にしている良いアイデアですよ。エスネットワークスさんはいろんなことにチャレンジをされて、それが働く人にとって面白みややりがいにつながっていると思います。だから羨ましいです。監査みたいな規制業種とは違い、自分のアイデアでやれる。マニュアルがないって言えば、マニュアルがない。それはすごくやりがいがあるんだろうと感じます。

下村:毎年、何かしら新規事業ができていますからね。

柳澤先生:失敗が許されると言ったら大変失礼ですが、失敗して学んでいくところがあるわけじゃないですか。それが許される業態は、我々からするとすごく羨ましいのです。監査は失敗の許されない世界。失敗したら資格取り消しですから(笑)。そこは監査の辛いところで、失敗から学ぶことはほとんどないから、主体性や自律性がなかなか育ちにくい。

須原:そういう中でメンバーに対して、もっとチャレンジングにとは言いづらいと思いますが、どんな風にモチベートされているのですか?

柳澤先生:でも、そこはむしろ根っこはエスネットワークスさんと一緒なんです。監査法人ではあるけれども、大手ではない良さを生かして、経営者目線で監査をするとか、いかに経営者に寄り添うのかということです。

須原:監査とコンサルティングという違いはあれど、根っこは同じですよね、先生。

本日はお忙しいところ、本当にありがとうございました。

 

新創監査法人のご紹介

p15_03ロゴのiは[愛]を表すとのこと

p15_04いろいろな芸術作品が並ぶエントランス

大監査法人でも個人事務所でもない総勢100人規模の公認会計士を中心とした専門家集団を目指す新創監査法人。長年にわたり、東証1部・2部等上場会社の金融商品取引法監査、会社法監査、私立学校法人監査、公益法人監査など多くの法定監査を行っている。監査にあたり、監査をする側、される側という立場のみの一方通行ではなく、クライアントの発展につながる監査を常に考える。「会計は経営に役立ってこそ真価を発揮する」がポリシー。

新創監査法人 
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執筆者

NEXT CFO 編集部

 NEXT CFO編集部

経営者・管理職にCFOの役割を広めたい!CFOが活躍する社会をつくることで、日本経済を活発にしたい!そんな想いでNEXT CFOのメディアを運営しています。