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【平成29年度版】税制改正大綱についての重要事項3点をまとめました

この記事は2017年4月発行のREVOLVING DOOR vol.15より転載・再編しております。

Ⅰ.本改正大綱の主な項目

平成28年12月8日に閣議決定されました平成29年度税制改正大綱においては、「格差の固定化につながらないよう機会の平等や世代間・世代内の公平の実現、簡素な制度の構築」という考えの下、個人において多様な働き方が可能となるよう、社会の発想や制度を大きく転換するため、就業調整を意識しなくて済む仕組みを構築する観点から、配偶者控除・配偶者特別控除といった個人所得課税の見直しが行われます。

また生産性を抜本的に向上させるために、企業による「攻めの投資」を後押しするとともに、コーポレートガバナンスの強化を促すことで、「イノベーション」による企業収益の拡大が雇用の増加や賃金の上昇につながり、ひいては消費や投資のさらなる増加に結びつくという経済の「好循環」を強化するため、地域中核企業向けの設備投資促進税制を創設する等、中堅・中小事業者を支援するとともに、地方拠点強化税制を拡充する等、地方創生を推進するような改正となっております。

本稿では、今回の改正大綱のうち実務的に重要度が大きいと考えられる下記の項目について説明しております。

1.個人所得課税

①配偶者控除および配偶者特別控除の見直し
②金融・証券税制

2.法人課税

①競争力強化のための研究開発税制等の見直し
②賃上げを促すための所得拡大促進税制の見直し
③コーポレートガバナンス改革・事業再編の環境整備
④中堅・中小事業者の支援

3.資産課税・国際税務

①取引相場のない株式の評価の見直し
②外国子会社合算税制の改正

Ⅱ.本改正大綱の主な内容および注意ポイント

1 個人所得課税

①配偶者控除および配偶者特別控除の見直し

●内容および注意ポイント

・配偶者控除
合計所得金額が900万円超となった場合には、その所得金額に応じて控除対象配偶者または老人控除対象配偶者に係る配偶者控除の額が従来の38万円から減額されます。

・配偶者特別控除
配偶者特別控除の対象となる配偶者の合計所得金額の上限が76万円未満から123万円以下まで引き上げられます。(給与収入のみの場合の収入金額の目安は201万円)

【注意ポイント】
配偶者控除および配偶者特別控除は、本人の合計所得金額が900万円(給与収入のみの場合の収入金額は1,120万円)を超えると控除額が減少し、1,000万円を超えると控除額が0になります。(給与収入のみの場合の収入金額の目安は1,220万円)

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es_p14_15_170323_1
(万円)

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(万円)

●適用・廃止時期

平成30年分以後の所得税から適用されます。

②金融・証券税制

●内容および注意ポイント

居住者等が非課税口座を開設し、累積投資勘定を設定した場合には、設定した年の1月1日から20年を経過する日までの間に支払を受けるべき累積投資勘定に係る公募等株式投資信託に係る配当所得および譲渡所得等が非課税となります。

【注意ポイント】
現行のNISAと選択して適用することになります。現行のNISAが非課税年間投資上限額120万円・非課税期間最長5年間であるのに比べ、非課税年間投資上限額が40万円未満・非課税期間20年間と少額かつ長期にわたる運用期間となります。

●適用・廃止時期

平成31年分以後の所得税および平成32年分以後の個人住民税について適用されます。

2 法人課税

①競争力強化のための研究開発税制等の見直し

●内容および注意ポイント
内容改正前改正案
税額控除率(総額型)

試験研究費割合が10%以上の場合

・・・10%

増減割合が5%超
増減割合が5%以下
増減割合が-25%未満

・・・9%+(増減割合-5%)×0.3
・・・9%-(5%-増減割合)×0.1
・・・6%

試験研究費割合が10%未満の場合・・・8%+(試験研究費割合× 0.2)※控除率の上限は14%(2年間の時限措置 原則10%)※増減割合=試験研究費増減差額/比較試験研究費※試験研究費増減差額=試験研究費の額-比較試験研究費
試験研究費の
範囲
製品の製造または技術の改良、考案若しくは発明に係る試験研究のために要する原材費、人件費および経費のほか、他の者に試験研究を委託するために支払う費用などの額左記に加えて「対価を得て提供する新たな役務の開発(新サービス開発)に係る試験研究のために要する一定の費用」を追加
中小企業技術基盤強化税制における①税額控除率②控除限度額①税額控除率・・・12%試験研究費の増加割合が5%を超える場合(2年間の時限措置)
②控除限度額・・・法人税額×25%

① 税額控除率

・・・12%+(増加割合-5%)×0.3
※控除率の上限は17%

② 控除限度額

・・・法人税額×35%
※上乗せ措置の高水準型と選択適用
上乗せ措置<増加型>税額控除額=増加試験研究費の額×増加割合(5~30%)<高水準型>試験研究費の額のうち平均売上金額の10%超の部分×控除率※控除率=(試験研究費割合-10%)×0.2 ただし、法人税額×10%を限度とする。廃止左記の高水準型または総額型の控除限度額に下記を上乗せ法人税額×(試験研究費割合-10%)×2ただし、総額型の控除限度額の上乗せについては、法人税額×10%を上限とする。
特別試験
研究費の対象

①共同研究および委託研究に係る相手方が支出する費用で自己が負担するもの 

原材料費、人件費、旅費、経費および外注費に限定

①同左 →限定列挙の廃止

②契約変更前の支出費用

その契約に係るものであり、かつ、支出日と契約変更日が同一の事業年度内にある場合、特別試験研究費の対象となることを明確化

【注意ポイント】
第4次産業革命の実現を推進するため、試験研究費の範囲について、一部追加されます。
・「総額型」の税額控除率が見直され、売上高対比の研究開発費割合でなく、研究開発費の増減率に応じた減税の仕組みとなります。
・中小企業者等が取り組む研究開発については、手厚い減税措置が講じられています。
・上乗せ措置である「試験研究費の増加額に係る税額控除(増加型)」が廃止されます。
・上乗せ措置である「平均売上金額の10%を超える試験研究費に係る税額控除(高水準型)」の適用期限が、2年間延長されます。

●適用・廃止時期

平成29年4月1日以後に開始する事業年度に適用されます。

②賃上げを促すための所得拡大促進税制の見直し

●内容および注意ポイント
内容改正前改正案
適用要件①雇用者給与等支給額≧基準雇用者給与等支給額
 ×適用年度に応じた割合
【適用年度に応じた割合】
・平成27年4月1日〜平成28年3月31日までの間に
 開始する適用年度  103%
・平成28年4月1日〜平成29年3月31日までの間に
 開始する適用年度  104%
・平成29年4月1日〜平成30年3月31日までの間に
 開始する適用年度  105%
②雇用者給与等支給額≧比較雇用者給与等支給額
③平均給与等支給額>比較平均給与等支給額
①改正なし
②改正なし
③【中小企業者等以外】
 (平均給与等支給額-比較平均給与等支給額)
 ÷比較平均給与等支給額≧2%
 【中小企業者等】
 改正なし
控除税額雇用者給与等支給増加額の10%【中小企業者等以外】
雇用者給与等支給増加額の10%+(雇用者給与等支給額-比較雇用者給与等支給額)×2%(注)
【中小企業者等】
(平均給与等支給額-比較平均給与等支給額)
÷比較平均給与等支給額≧2%の場合のみ
雇用者給与等支給増加額の10%+(雇用者給与等支給額-比較雇用者給与等支給額)×12%(注)

(注)雇用者給与等支給増加額-比較雇用者等支給額≧2%の場合2%を上限
・雇用者給与等支給額とは、国内雇用者(一定のものを除く)に対する給与等の支給額をいいます。
・比較雇用者給与等支給額とは、前期の雇用者給与等支給額をいいます。
・平均給与等支給額とは、雇用者給与等支給額を、適用事業年度における給与等月別支給対象者(一定のものを除く)の数の合計数で除した金額をいいます。
・比較平均給与等支給額とは、比較雇用者給与等支給額を、前期における給与等月別支給対象者(一定のものを除く)の数の合計数で除した金額をいいます。

【注意ポイント】
・付加価値割における所得拡大税制においても法人税に準じた改正となります。
・控除税額は、法人税額の10%(中小企業者等は20%)までを限度とされます。

③コーポレートガバナンス改革・事業再編の環境整備

●内容および注意ポイント
内容改正前改正案
法人税申告
期限の見直し
原則・・・事業年度終了の日から2月以内
特例・・・事業年度終了の日から3月以内
原則・・・改正なし
特例・・・事業年度終了の日から6月以内

【注意ポイント】
法人事業税においても同様の要件を満たせば、特例による申告の延長期限が事業年度終了の日より6月以内に見直されるため、法人事業税の延長についても考慮する必要があります。

④中堅・中小事業者の支援

●内容および注意ポイント
内容中小企業投資促進税制(改正案)中小企業経営強化税制(拡充措置・新設)

適用期間

平成31年3月31日までに取得等(適用期間2年間延長)平成29年4月1日から平成31年3月31日までに取得等
対象資産下記資産のうち一定のもの
・機械装置
・工具(※器具備品は対象外)
・ソフトウエア
・車両運搬具
・船舶
下記資産のうち特定経営力向上設備等に該当し、指定事業の用に供したもののうち一定のもの
・機械装置
・工具
・器具備品
・建物付属設備
・ソフトウエア
特別償却基準取得価額×30%取得価額×100%(普通償却含む)
税額控除【中小企業者等】
適用なし
【特定中小企業者等】
基準取得価額×7%
【中小企業者等】
取得価額×7%
【特定中小企業者等】
取得価額×10%

・中小企業者等とは、資本金の額または出資の額が1億円以下の法人等(資本金が1億円以上の法人に発行済み株式の
 50%以上を保有される一定の法人等を除く)で青色申告書を提出するものをいいます。
・特定企業者等とは、中小企業者等のうち資本金の額または出資金の額が3,000万円以下の法人等をいいます。

【注意ポイント】
・法人税法の中小法人等と租税特別措置法の中小企業者ではその対象企業が異なります。
・中小企業者等に係る軽減税率の特例の適用期限が2年延長となります。


・小企業向けの各租税特別措置について、平均所得金額(前3事業年度の所得金額の平均)が年15億円を超える
 事業年度の適用不可となります。

特定区分中小企業経営強化税制(新設)
法人税①法人税率の軽減(所得800万円以下の部分に対する税率19%)
②欠損金の控除制限(所得金額のうち一定割合を控除限度とする)
③欠損金の繰戻還付制度の不適用措置の除外
④特定同族会社の特別税率の適用除外措置
⑤貸倒引当金の損金算入制度の適用
租税特別
措置法
①法人税率の軽減(所得800万円以下の部分に対する税率19%)
②欠損金の控除制限(所得金額のうち一定割合を控除限度とする)
③欠損金の繰戻還付制度の不適用措置の除外
④特定同族会社の特別税率の適用除外措置
⑤貸倒引当金の損金算入制度の適用
●適用・廃止時期

平成31年4月1日以後に開始する事業年度に適用されます。

3 資産課税・国際税務

①取引相場のない株式の評価の見直し

●内容および注意ポイント
内容改正案
取引相場のない
株式の評価の見直し
・類似業種の上場会社の株価について、現行に課税時期の属する月以前2年間平均が加わります。
・類似業種の上場会社の配当金額、利益金額および簿価純資産価額について、連結決算を反映させたものとなります。
・配当金額、利益金額および簿価純資産価額の比重について1:1:1となります。

類似業種比準方式の計算式

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【注意ポイント】
・評価会社の規模区分の金額等の基準について、大会社および中会社の適用範囲が拡大されます。

●適用・廃止時期

平成29年1月1日以後の相続等により取得した財産の評価に適用されます。

②外国子会社合算税制の改正

●内容および注意ポイント

軽課税国の外国子会社等を通じて日本国内における税負担の軽減を図る行為を防止するために、一定の要件を満たす外国子会社の所得を、その株主である日本親会社の所得に合算して課税することになります

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執筆者

NEXT CFO 編集部

 NEXT CFO編集部

経営者・管理職にCFOの役割を広めたい!CFOが活躍する社会をつくることで、日本経済を活発にしたい!そんな想いでNEXT CFOのメディアを運営しています。

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