• ホーム
  • CFOセンス
  • コンプライアンス最前線vol.1 独占禁止法上の優越的地位の濫用によって億単位の課徴金を課されないために

コンプライアンス最前線vol.1 独占禁止法上の優越的地位の濫用によって億単位の課徴金を課されないために

この記事は2017年4月発行のREVOLVING DOOR vol.15より転載・再編しております。

コンプライアンス最前線vol.2 米国反トラスト法違反による計り知れないダメージに注意
コンプライアンス最前線Vol.3 下請法違反による経済的負担を避けるためになすべきこと

 

企業経営において経営陣が知っておくべきコンプライアンス・イシューにはさまざまなものがありますが、今回は、独占禁止法上の「優越的地位の濫用」について簡単に説明します。

 

1.優越的地位の濫用を理由とした億単位の課徴金が課されています

優越的地位の濫用への対処は、近年、公正取引委員会が力を入れて活動している分野です。この優越的地位の濫用規制違反は、平成22年1月施行の独占禁止法改正によって、課徴金納付命令の対象になりました。

この課徴金の金額は、高額なものになりやすく、実際にも、これまで納付を命じられた課徴金の金額は、下記の通り巨額なものとなっています。

そのため、優越的地位の濫用規制は、企業における重要な経営上の課題になっているといえます。そこで、以下では、優越的地位の濫用規制の内容と、課徴金納付命令を受けないためのコンプライアンスについて概説します。

優越的地位の濫用規制に係る課徴金額

対象事業者課徴金額違反行為の概要
山陽マルナカ2億2216万円①納入業者が納入する商品以外の商品を含む店舗の商品の移動等を行わせるため、納入業者の従業員等を派遣させていた。
②新規開店等の実施の際の協賛金を納入業者に提供させていた。
③クリスマス関連商品を納入業者に購入させていた。
④独自に定めた販売期限を経過した商品について納入業者に返品していた。
⑤割引販売を行う商品について納入価格を不当に減じていた。
日本トイザらス2億2218万円①売上不振商品等を納入業者に不当に返品していた。
②売上不振商品等を納入した業者に対し、支払うべき代金を不当に減額していた。
エディオン40億4796万円①新規開店等に係る搬入等について、納入業者の従業員等を派遣させて使用していた。
ラルズ12億8713万円①新規開店等のセールのための協賛金名目で納入業者に金銭を提供させていた。
②仕入担当者から納入業者に対し、購入すべき数量を示すなどしてスーツ等を購入させていた。
③新規開店等に際し、従業員等を派遣させて使用していた。
ダイレックス12億7416万円①新規開店等に際し、従業員等を派遣させて使用していた。
②閉店セールに際し、販売した商品の割引額相当額の一部または全部の金銭を納入業者に提供させるなどしていた。

※注: 日本トイザらスに対しては、平成23年12月13日付けで課徴金を3億6908万円とする課徴金納付命令が下されたが、その後、平成27年6月4日付け審決(平成24年(判)第6号および第7号)により、課徴金額が2億2218万円に減額されている。

 

2.優越的地位の濫用規制の内容について

①課徴金の金額は高額になりやすいものとなっています

上記の通り、平成22年1月施行の独占禁止法改正によって、優越的地位の濫用規制の違反に対しては、違反行為を止めることなどを命じる排除措置命令のみならず、課徴金の納付を命じる課徴金納付命令も行われるようになりました。

この課徴金の金額は、法律上、濫用行為が行われた期間(最長3年。以下「違反行為期間」という。)における相手方との間の売上合計額(仕入取引の場合は購入合計額)の1%に相当する額と定められています(独占禁止法20条の6)。

しかしながら、この点に関して公正取引委員会は、1つの企業が複数の取引先に対して濫用行為を行った場合であっても、それらの行為が組織的・計画的に行われた場合には、それら行為を一体的に評価するとしたうえで、その結果、違反行為期間は、これら一体的に評価された複数の濫用行為のうち最初のものが行われた日から、これらの濫用行為がなくなったと認められる日までになると考えています。

そのため、例えば、取引先Aに対して1月10日、2月22日、3月7日に不当な返品(濫用行為)がなされ、また、取引先Bに対して3月1日に不当な返品(濫用行為)がなされたような場合には、1月10日から3月7日までAからの購入額の合計額(注:仕入取引の場合)のみならず、当該期間中のBからの購入額の合計額も課徴金額の計算の基礎となり、それらの合計額の1%が課徴金の金額となるのです。

優越的地位の濫用規制違反は、特定の取引先のみならず、当該取引先と同様の立場にある取引先一般に対しても行われ易いものです。そのため、上記の例のような事態も生じやすいことから、課徴金の金額は、容易に高額なものになってしまいかねません。

es_p12_13_170323_1

②優越的地位の濫用規制の要件も認定されやすい運用となっています

このように課徴金は高額になりやすいものですが、それにとどまらず、課徴金の原因となる優越的地位の濫用規制違反も、認定され易いものとなっています。すなわち、優越的地位の濫用規制は、以下の①から④のいずれにも該当した場合に違反になるものとされていますが、そのうち③と④は、①(優越的地位)と②(濫用行為)が認められた場合には、通常認められるものと考えられています。

①自己の取引上の地位が相手方に優越していること
②独占禁止法第2条9項5号に定める行為(濫用行為)を行うこと
③濫用行為が(自己の取引上の地位を)利用して行われたこと
④正常な商慣習に照らして不当であること

また、①(優越的地位)についても、②(濫用行為)が認められた場合には、その濫用行為を取引相手が受け入れたことが、①(優越的地位)の認定において重要な要素になると解されています(日本トイザらスに対する公正取引委員会審決(平成27年6月4日付審決・平成24年(判)第6号および第7号))。

すなわち、例えば、正当な理由のない返品を取引相手が受け入れたという事実自体が、当該取引相手に対する優越的地位の認定にあたっての重要な要素になるとされているのです。

これらの解釈の結果、優越的地位の濫用規制違反の有無に関しては、②(濫用行為)の存否が決定的に重要なものとなっており、これが認められれば優越的地位の濫用規制違反も認められる可能性が高いものとなっています。

もっとも、②(濫用行為)についても、公正取引委員会が典型的な濫用行為として想定する行為(例えば、正当な理由を欠く、対価の減額や対価の支払遅延等、公正取引委員会の平成22年11月30日付「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」(優越的地位の濫用ガイドライン)に記載されている濫用行為)がなされた場合には、通常、当該行為は濫用行為と認定されます。

そのため、そのような行為が問題となった場合には、優越的地位の濫用規制違反が認定されることとなるおそれが高いのです。

 

3.事前のコンプライアンスと万が一の場合に課徴金を減ずる方法

①優越的地位の濫用に関するコンプライアンス体制を構築しておくべきです

このように優越的地位の濫用規制は、企業にとって大きなリスクとなり得るものです。そのため、企業としては、巨額の課徴金を課されることのないようするため、あらかじめコンプライアンス体制を構築しておく必要があります。

そして、このコンプライアンス体制の構築にあたっては、優越的地位の濫用規制違反の認定において濫用行為の存否が重要な役割を果たしていることを踏まえ、濫用行為と評価される行為が行われることを防ぐための手を打っておくことが重要です。

具体的には、自らの事業活動の内容から、行われるおそれのある濫用行為の洗い出したうえで、そのような行為がなされることを防ぐためのコンプライアンス・マニュアルを用意することや、関係社員の教育等を行うことが必要になるのです。

②万が一の場合には課徴金を減ずるために公正取引委員会への申告を検討するべきです

また、万が一濫用行為と評価されうる行為が発見された場合には、公正取引委員会へ自発的に申し出を行うことを検討する必要があります。
すなわち、公正取引委員会は、優越的地位の濫用となる行為が下請法にも違反する行為である場合には、下記の①ないし⑤のいずれにも該当するのであれば、優越的地位の濫用に係る規定を適用しないものとしています。

濫用行為は、同時に下請法の違反行為にもなり易いものです。そのため、そのような行為について自発的な申告を行うことができれば、その行為については優越的地位の濫用に関する規定が適用されないことになりますので、優越的地位の濫用を理由とした課徴金も課されないこととなります。

従って、優越的地位の濫用を理由とした課徴金を課されないようにするために、公正取引委員会への申告を検討することが必要となるのです。

①公正取引委員会が当該違反行為に係る調査に着手する前に、公正取引委員会に対して、違反行為を自発的に申し出ていること。

②当該違反行為を既に取りやめていること。

③当該違反行為によって下請事業者に与えた不利益を回復するために必要な措置※1を既に講じていること。

④当該違反行為を今後行わないための再発防止策を講じることとしていること。

⑤当該違反行為について公正取引委員会が行う調査及び指導に全面的に協力していること。

※1: 「下請事業者に与えた不利益を回復するために必要な措置」とは、下請代金を減じていた事案においては、減じていた額の少なくとも過去1年間分を返還することとされている(公正取引委員会の平成20年12月17日付「下請法違反行為を自発的に申し出た親事業者の取扱いについて」)。

 

4.終わりに

このように優越的地位の濫用規制は、重大な経営リスクを生じさせうるものとなっています。そのため、企業においては、優越的地位の濫用規制違反を生じさせないためのコンプライアンス体制の構築と、万が一そのような問題を発見した場合の公正取引委員会への申し出を行えるようにしておく必要があります。

なお、このような対応については、専門的な知識を要するところでもありますので、専門家へ相談しておくべきと思われます。

 

関連記事

コンプライアンス最前線vol.2 米国反トラスト法違反による計り知れないダメージに注意
コンプライアンス最前線Vol.3 下請法違反による経済的負担を避けるためになすべきこと

執筆者

NEXT CFO 編集部

 NEXT CFO編集部

経営者・管理職にCFOの役割を広めたい!CFOが活躍する社会をつくることで、日本経済を活発にしたい!そんな想いでNEXT CFOのメディアを運営しています。

COMMENT

* が付いている欄は必須項目となりますので、必ずご記入をお願いします。

内容に問題なければ、下記の「コメントを送信する」ボタンを押してください。