2016年上場を果たしたユーザベースの梅田優祐氏が語る共同経営の裏側

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この記事は2017年4月発行のREVOLVING DOOR vol.15より転載・再編しております。

株式会社ユーザベース取締役CCO/株式会社ニューズピックス取締役

梅田 優祐氏

戦略系コンサルティングファームの株式会社コーポレイトディレクションにて製造業、商社を中心とした全社成長戦略、再生戦略の立案・実行支援、食品メーカーなどのBPRを中心に従事。その後、UBS証券投資銀行本部にて、事業会社の財務戦略の立案、資金調達支援、自己勘定投資に従事。

2008年、高校からの友人である稲垣裕介(代表取締役(共同経営者))とUBS時代に知り合った新野良介(代表取締役共同経営者)と共に株式会社ユーザベースを設立し、2009年に「SPEEDA」を、2013年に「NewsPicks」をローンチ。

現在、上海、シンガポール、香港、スリランカに拠点展開。2016年10月、東京証券取引所マザーズ市場へ上場を果たす。

昨年10月に東京証券取引所マザーズ市場へ上場を果たしたユーザベース。
「経済情報で、世界をかえる」をミッションに、企業・業界分析を行うビジネスパーソンのためのオンライン情報プラットフォーム「SPEEDA」と、ソーシャル機能を兼ね備えた経済ニュースプラットフォーム「NewsPicks」の2つの事業で急成長する新しいカタチの企業です。

3人の創業者による共同経営をはじめ、エンジニア、編集者、デザイナー、アナリストなどのプロフェッショナルが集結した組織で、同社独自の企業バリューである「7つのルール」のもと、自由をテーマにさまざまなチャレンジを試みています。
今回は創業者の1人である梅田氏に、同社のビジョンや大切にしていることなど、さまざまな観点から魅力に迫ってみました。

 

共同経営を保つ、夫婦のような決め事。

須原:上場、おめでとうございます。相当お忙しいのでは?p04_05_03_2

梅田氏:共同経営者がいるおかげで、あまり変わりはないですね。

須原:役割分担ができていると。

梅田氏:はい。この2年半くらいは私が「NewsPicks」を担当、新野と稲垣が「SPEEDA」というフォーメーションでしたが、今年はまた変えようと思っています。

須原:はじめてお会いしたころには、新野さんが海外担当でしたよね。

梅田氏:そうです。当時は日本と海外で分けていました。創業者3人で、サッカーのポジションみたいに毎年、戦略に合わせてフォーメーションを変えています。

須原:面白いですね。3人でやることは起業時から決まっていたのですか?

梅田氏:はい。最初にはじめた「SPEEDA」の事業は、私がコンサルティングファームで働いていたときに抱いた問題意識が発端でした。

業界や企業の分析の際に国会図書館へ出かけては大量の資料をコピーしてデータを入力するという、なんてアナログで非合理な作業なんだと感じていて、それがUBSへ行ってもまったく同じ問題があり、だったらいっそのこと起業してサービスを提供しようと、代表取締役(共同経営者)の稲垣に相談したのが最初です。

彼は高校からの友人で、私にはない技術の知見があるだけでなく、絶対に裏切らない人物で、苦しいときも彼なら一緒に乗り越えてくれると確信していました。UBSで出会った新野も同じ問題意識があり、信頼の置ける人間でしたので、じゃあ一緒にやろうと。

須原:梅田さんとしては無意識かもしれませんが、3人で役割分担できるように選ばれた?

梅田氏:いいえ。考えたわけではなく、最終的に一緒にやってくれる人がその2人だけでした(笑)。たまたまいいメンバーに恵まれただけなんです。役割でいうと、私が登る山を決めて。

ただ、私1人だと勝手に突っ走って誰もついてこない(笑)。だから、新野が登る意義をみんなに説いて、稲垣は具体的な登り方を考える。こんな分担です。でも今はお互いの強み弱みを把握しているので、毎年フォーメーションを変えています。

須原:なるほど。では、もしかしたら、3人のうちの誰かが新しいインプットをするために一服したいと言い出すこともありえますよね。

梅田氏:それは絶対にありますね。一時期、新野が体調を崩したときは、私と稲垣の2人体制を組みました。3人の共同経営はそういう体制を築けることが強みですね。とはいえ、喧嘩もよくしていまして。年末に私と新野が喧嘩して、私の今年最初のメールは新野への謝罪みたいな(笑)。

須原:熱いですね(笑)。

梅田氏:はい。いまだ感情的に(笑)。3人ではじめてもう10年になるのですが、よく周囲からうまくいっているよねと言われていまして、関係性が良好なのは2つのルールのおかげだと思っています。

須原:それは3人の中で決めたルールですか?

梅田氏:はい、まず1つ目はお互いのガバナンスとして、お互いがクビにできる権利を持つ。多数決ではなく、責務を果たしていないからクビだと言われたら、絶対に辞めなければいけない。これで緊張感を持たせました。

2つ目はどんな小さなことでも不満に思ったことがあれば必ず言う。影で言わない。心の中で思わない。思ったことは必ず言うというこのルールは弊社が掲げている“7つのルール”の中の“フェアでオープンなコミュニケーションを徹底する”というものにつながりました。

須原:夫婦のような決め事ですね。

梅田氏:男3人で気持ちが悪いのですが(笑)。でも、一般的に経営者は1人ですべてを負うことが多いですから、同じ目線で同じ問題意識を共有できる相棒が常にいるというのは本当に恵まれていると思っていますし、経営のスピードは間違いなくあります。

2013年に「NewsPicks」のスタートと「SPEEDA」の海外展開という2つのチャレンジが同時にできたのも、2人の社長がそれぞれの事業に集中したからこそ加速させることができました。常に3人で合議するというデメリットもありますが、そんな小さなデメリットを軽く超えるくらいのメリットだと思います。

須原:3人が合意しない場合は?

梅田氏:意見が分かれることはあって、例えば2人がやると決めて1人が反対する場合は、反対者が2人を100%支援するという形で進めます。時間を止めることのほうが会社の損失になりますので。ただ、それで失敗したときはきちんと報酬に反映して責任を取ります。

 

参入障壁の高いビジネスニュースへの挑戦。

p06_07_02_1須原:2013年にはじめた新規事業「NewsPicks」へ投資するために、上場の延期を決められました。それも合議だと思いますが、どういう判断だったのでしょうか?

梅田氏:我々は創業時からビジネスコンテンツのプラットフォームをつくろうと決めていました。特にビジネスニュースはビジネスコンテンツの中でも最も大事な要素なので、いずれ必ず手がけようと考えていました。

ただ、ビジネスニュースの領域は大手が中心で非常に競争が激しく、スタートアップ企業の参入が難しい。なので、我々はまず法人向けの「SPEEDA」から入り、ビジネスニュースの領域へ入るタイミングを見極めていました。そのタイミングとはスマートフォンの普及です。スマートフォンの台頭はメディア業界の構造が大きく変わるチャンスでした。

このタイミングを逃したらチャンスはないと思い決断したのです。「SPEEDA」が海外展開する時期でしたが、上場を延期してでもやろうと決断した。振り返ると、あのタイミングを逃していたら、参入できていなかったかもしれません。

須原:「NewsPicks」はローンチから4年ほどで約200万人の会員を持つ経済ニュースのプラットフォームとなりました(2016年12月末時点)。元東洋経済Online編集長を招かれるなど、クオリティの高いニュースサイトでいつも楽しんでいます。

梅田氏:ありがとうございます。編集長の彼が来てくれなかったら、ソーシャル要素をメディアに組み込んだビジネスモデルもここまで加速しなかったと思います。1人の才能が入ることで会社はどんどん変わっていくことを教えてもらいました。

ソーシャルを組み込むモデルは「The New York TIMES」をはじめ大手メディアがあきらめた分野ですが、我々はどうすれば良質なコメントとコンテンツを融合できるか、チャレンジを続けていきます。

 

組織の拡大と自由の維持という永遠のテーマ。

須原:話は遡りますが、梅田さんは子供のころから社長になろうと思われていましたか?p06_07_01_2

梅田氏:いいえ、それがまったくなくてですね。実は夢というものも持ったことがなく、熱中したものもあまりない少年期でした。唯一熱中したのは小学生のときの野球です。

しかしそれも、だんだんと自分の実力がわかってきて、高校のときは練習が辛くて2週間で部を辞めました(笑)。大学でも熱中できるものを追い求めて、体育会のサーフィン部へ入りましたが、これも辛く辞めました(笑)。どれも続かなかったですね。

須原:意外ですね。

梅田氏:それで大学時代にバックパックで世界中を旅しました。熱中できるものはないかと追い求めましたが、特にわかりませんでした(笑)。でも、旅の中でわかったことがあります。それは“自由”が自分にとって快適であること。

自由に行き先を決めて旅することが実に快適で、これは職業を選ぶうえでもキーワードになると思いました。ちょうど読んでいたビジネス書にも、組織に属さずとも仕事が自由にできるのは、プロフェッショナルの職業だとありました。

須原:それで、戦略系コンサルティング会社へ入社され、プロを目指された。

梅田氏:はい。しかし、コンサルティング会社でも、UBSでも、一生の仕事として没頭できるか?幸せになれるか?と自問すると違うと思いました。そんな中で、ようやく熱中できるものに出会えたと思ったのが、ユーザベースの起業です。小学校の野球以来の出来事でした(笑)。

須原:熱中できるものを探し求めてようやく辿り着いたんですね。梅田さんがおっしゃられた“自由”というのは、確かにユーザベースのオフィスの雰囲気や“7つのルール”、投資家に対するコミットメントにも表れているような気がしています。

梅田氏:確かにそれはあると思います。我々が掲げている“7つのルール”の1つ目にある「自由主義で行こう」というのは、我々のすべての大前提になっています。ただ、自由の組織って難しいんです。管理した組織のほうがマネジメントは楽なことはわかっているのですが、自由を大事にしています。

組織が拡大しても自由であり続けるためには、すべてのメンバーが高い倫理観と責任感を持っていることが大前提となります。かつ、メンバーをルールではなく原則で縛ること。“7つのルール”を基本に、あとの細かいことは自分たちで考えようというスタンスです。組織の拡大と自由の維持。これは我々の永遠のテーマですね。

須原:わかります。弊社も原理原則の下、明文化することなく組織を運営していきたいのですが、人数が増えるに従い、細かなルールを決めないと弊害が出てきます。

梅田氏:それは、おっしゃる通りです。我々もまだ未完の組織ですが、そういう方針を持つことが大事だと思っています。ユーザベースが成り立っているのは一人ひとりの才能あるメンバーのクリエイティビティです。エンジニア、編集者、アナリスト、デザイナーと、これまで1つの組織に集まることのなかったプロフェッショナルが一堂に会して、プロダクトをつくっています。

こういったメンバーの才能は、管理で縛った途端に発揮されなくなる。いかに自由に彼らが自ら考え、自ら行動し、決めていけるか、環境を担保できるかが、我々の強みをつくるうえでの源泉になります。その強みを最大限に発揮していくためにも、規模を拡大しながら自由を維持していくためにも、我々マネジメントは常にカルチャーを最重要テーマに掲げています。

具体的には、組織横断のカルチャーチームをつくり、ユーザベース独自のカルチャーを維持し発展させていくミッションを担っています。

須原:それは面白いですね。専属のチームですか?

梅田氏:はい。カルチャーチームではモチベーションが下がっているチームを見つけたら、そこに入っていき、問題を見つけて改善したり、グローバルのオフィスへも状況を聞きに行っています。昨年は、カルチャーの状態を可視化するための仕組みを入れて定量化する試みを行いました。

今後この数値をどこまで上げていけるかが、今年のカルチャーチームのコミットメントです。カルチャーの維持発展はコストと時間をかけることでしか解はないと思いますので、試行錯誤でやっていこうと思っています。

 

自由という組織文化は性善説で成り立つから。

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須原:これまでお話を伺っていて、やはり梅田さんの個性が、会社や事業のすべてに行き渡っている気がします。その源泉となるのは、やはり幼少期にあるのではと思うのですが、何か思い当たることはありませんか?

梅田氏:そうですね。私はアメリカで生まれ、5〜9歳のころもアメリカにいました。そこでの環境は、スクールバスの中でチョコレートが買えたりと非常に自由でした。その後、日本へ戻って愛知県の小学校へ転入したのですが、そのときに出会った先生が非常に素晴らしかったんです。

私は多数決のときもどちらでもないと手を挙げる子でしたが、「どちらでもないという意見は素晴らしい」と先生は私の考え方を大切にしてくれました。今でも覚えていますが、卒業文集に「1+1が2にならないような梅田くんの発想は、先生、羨ましかったよ」と言葉を寄せてくれた。

これが非常に嬉しくて、私が自由を求める原体験なのかもしれません。

須原:いい先生ですね。まさに原体験。

梅田氏:そうですね、いい先生に恵まれました。だから、自由を大事にしたいのかもしれません。自由という組織文化は性善説で成り立つものです。

どんなに小さなことでも嘘をついたら性善説の文化が壊れてしまう。だから嘘をつきたくないというよりは、私のすべては自由を守りたいための行動なのかもしれないですね。

須原:では、梅田さんの今後のビジョン、5年、10年後はどのようなイメージですか?

梅田氏:今までもそうだったのですが、5年後というのはリアルなイメージができなくて、とにかく目の前の目標を1つひとつクリアにしていくことを考えてきました。「SPEEDA」をはじめた2008年はiPhoneが出るか出ないかの時代で、まさかその5年後に「NewsPicks」をはじめているとは思っていなかったので。

しかし、常に考えているのは最終的に到達したい世界。「経済情報で、世界をかえる」というビジョンで規定しているのは、世界中の人たちに我々のサービスを使っていただくこと。そして、世界中のビジネスパーソンの意思決定を支えているインフラであること。

この2つの条件を満たしているような状態が到着点です。そこへのステップは明確ではありませんが、まず目の前の山を登ろうと思います。とりあえずはこの1、2年で「NewsPicks」をグローバルに。「SPEEDA」はアジアで基盤ができましたので、次は欧米に広げていきます。日本とアジアのユーザベースから、世界のユーザベースとなる土台をつくっていきたいです。

 

世界中の誰よりも事業を愛せているか?

須原:では、最後に全国の中堅中小企業の経営者の皆さまへ応援メッセージをいただけますか?

梅田氏:大層なことは言えないのですが、先日、某企業から相談がありまして、パートナーである経営者の皆さまに「NewsPicks」に掲載中の日本交通の川鍋一朗さんの記事を読んでほしいので契約をしたいという話をいただきました。

川鍋さんも事業を引き継がれた立場ですが、ご自身で新しいモビリティビジネスを立ち上げられています。私の友人にも引き継いだ事業に思い悩む経営者がいるので、彼には2割でもいいから自分の好きなことに挑戦して、情熱をかけたチャレンジをするだけでも変わるんじゃないかと伝えました。

須原:まったく新しいことでなくていいから、既存の事業の技術を応用して、陸王(※)のように新規事業へ挑戦する道もありますよね。

梅田氏:はい。やっぱり好きでやっている人には勝てないと思うんです。私も自問自答し続けないといけないと思うのは、世界に何十億人といる誰よりも、自分のやっている事業に情熱を持てているのか、愛せているのか。そこがない限りは情熱を持っている人に負けてしまうし、自分にも負けてしまう気がします。事業への愛は大切な出発点だと思いますね。

須原:私も自問自答し続けます(笑)。ありがとうございました。

※「オレたちバブル入行組」をはじめ数々のヒット作を手掛けた池井戸潤氏の作品。地下足袋製造の中小企業社長となった主人公が、地下足袋の製造技術をランニングシューズに応用し、レースでの勝利を目指して、ランナーや社員らと共に奮闘する姿を描いたヒューマンドラマ。

編集後記

“世の中にある不便をなくす”。起業家が、ビジネスを立ち上げる基本的な動機です。ユーザベースも、同じ。B2C情報へのアクセスは、Yahoo!やGoogleが劇的に改善させたにも関わらず、B2B情報を提供している既存プレイヤーは、利用者目線に立っていない。

「ユーザー」目線のB2B「データベース」を作ろう!SPEEDAが誕生したコンセプトは、基本に忠実でした。実際、梅田さんは、いつも“基本に忠実”な方。はじめてアポイントをもらった日に、あいにく上陸した台風の影響で、梅田さんとのミーティングがリスケになりました。その際、メールではなく私の携帯電話に「すみません、リスケさせてください。」と、梅田さんから直接ご連絡があった次第。

わざわざ私の電話番号を調べて、連絡をくれた律儀さ。この梅田さんの律儀さや基本に忠実な所作が、自由でクリエイティブなユーザベース社の隠れたスパイス、もっといえば、強みの源泉なのではないか、と考えています。SPEEDA&NewsPicks利用者の1人として、これからもユーザベースの展開に注目していきます。

執筆者

NEXT CFO 編集部

 NEXT CFO編集部

経営者・管理職にCFOの役割を広めたい!CFOが活躍する社会をつくることで、日本経済を活発にしたい!そんな想いでNEXT CFOのメディアを運営しています。

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