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「ローカルベンチマーク」「金融仲介機能のベンチマーク」2つのベンチマークの持つ意味とは?

この記事は2017年1月発行のREVOLVING DOOR vol.14より転載・再編しております。

※ベンチマークとは:本来は測量において利用する水準点を示す語で、転じて金融、資産運用や株式投資における指標銘柄など、比較のために用いる指標を意味する。
また、広く社会の物事のシステムのあり方や規範としての水準や基準などを意味する。(参照:Wikipedia)

 

2つの「ベンチマーク」※

2016年、官公庁から2つの「ベンチマーク」が発表された。

1つ目は3月に経済産業省が公表した「ローカルベンチマーク」。これは企業経営者と金融機関・支援機関等がより活発な「対話」を行うきっかけとなる「企業診断ツール」としての役割を担っている。

2つ目は9月に金融庁が公表した「金融仲介機能のベンチマーク」。特に地域における金融機関の役割として重要視されてくるであろう「金融仲介機能」を、どのように発揮していくのか、そしてその進捗がどのような状況なのかを金融庁と金融機関、そしてその投資家が「対話」するための「金融機関診断ツール」としての活用が期待されている。

ポイントはこの作成者がどちらも「金融機関(及び支援機関)」であるということである。さらに、この2つのベンチマークは当初から連携が意図されているということだ。

これは下図の「ローカルベンチマークについて」(2015年12月:経済産業省)という資料に明確に記載されている。金融庁が設置している「金融仲介の改善に向けた検討会議」第5回の議事要旨においても2つのベンチマークの関係についての質疑が掲載されている。

2つのベンチマークの連携イメージ

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2つのベンチマークの連携イメージ


ローカルベンチマークの内容

地域の経済・産業の視点と個別企業の経営力評価の視点の2つから構成される。

第1段階:地域の経済・産業の現状と見通しの把握

把握すべきデータ
(例)
・地域の産業構造
・雇用状況
・内外の取引の流れ
・需要構造    など
地域の産業の分析
各企業の地域経済の与える影響等の把握
重点的に取り組むべき企業の特定


第2段階:個別企業の経営力評価と経営改善に向けた対話

情報収集財務情報 … 企業の過去の姿を映すもの
非財務情報 … 企業の過去から現在までの姿を映し、将来の可能性を評価するもの

ライフステージと取組方法

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※黒字ながら先細りが見える・潜在的成長力がありながら苦戦 など

 

個別企業の経営力評価と改善に向けた対話(企業の健康診断):財務情報と非財務情報から、企業の経営力や事業性を理解・評価する。

財務情報 → 事業価値把握に有用

6つの指標

❶売上高増加率 … 売上持続性
❷営業利益率 … 収益性
❸労働生産性 … 生産性
❹EBITDA有利子負債倍率 … 健全性
❺営業運転資本回転期間 … 効率性
❻自己資本比率 … 安全性

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非財務情報 → 事業価値の源泉把握・財務情報の裏付けに有用

4つの指標

❶経営者への着目
❷事業への着目
❸関係者への着目
❹内部管理体制への着目

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上記を基本的な枠組み、「入口」として、それぞれの企業や金融機関・支援期間が独自の視点・手法で、
より深い対話や理解を進めることが期待される。

 

ベンチマークを通じて実現しようとしていること

では、この2つのベンチマークを通じて政府は「なに」を実現しようとしているのだろうか。あくまで筆者の個人的見解だが、以下、推察してみることとする。

1.地域経済を活性化

まず1つは「事業に対する理解を当事者全員が深め、対話することで、地方企業の価値向上を促し、ひいては地域経済を活性化すること」である。すなわち、これまでの地方企業と地域金融機関においては、それぞれの事情から対話が分断されている傾向にあった。

つまり、地方企業はバブル崩壊やリーマンショック、少子高齢化による内需減少、そしてバブル崩壊後の金融機関による債務者区分・格付けの導入による「画一的対応」という経営の大きな荒波に孤立を深め、ひたすら失敗しないこと、生き残ることに精力を注ぐという「防衛」優先のかじ取りを強いられていた。

一方、地域金融機関も1998年から始まる金融恐慌から端を発して導入された債務者区分・格付けを最優先するという考えが主流となり双方の対話の喪失が「保証協会に依存した貸出」「担保・保証依存」「勝ち組企業における無借金経営傾向」などの歪な状況を招いた。

この反省を踏まえ、双方の対話の復活、ひいてはこの対話のベースとなるツールの提供こそが地域経済の活性化の契機となるとの考えが根底にあると推察される。

ちなみに、2つのベンチマークに共通するキーワードは「事業性評価」である。例えば「ローカルベンチマーク」においては経済産業省のHPにおいて各データを入力することで診断結果がでるツールを提供しているが、ここでは「財務情報」として6つの指標を、「非財務情報」として4つの視点を提示している。

経済産業省の説明によれば6つの指標は「企業の成長性や持続性等を把握し、対話のきっかけとなる指標を絞り込んだ」とし、「これらを評価する上で、事業価値すなわち事業から生み出されるキャッシュフローを把握することがその根幹にある」ことから選定したとしている。

また、非財務情報の把握の必要性に関しては①財務情報の限界、すなわち決算情報はあくまで企業の「過去」を分析するツールでしかなく現在の姿を十分に把握し、将来に向けた可能性を評価することが難しいことを補うため、さらには②財務数値の裏付けとして企業の強み、弱みの源泉を把握することが可能だからということがその理由となっている。

また、「金融仲介機能のベンチマーク」においては全地域金融機関が把握を求められる「共通ベンチマーク」において「ローカルベンチマーク」に記載のある財務指標等が改善した取引先数、融資額の推移や、事業性評価を行っている与信先数、融資額及びそれらの割合の開示を求めていることからもその意図は明らかであろう。

2.各金融機関の独自性の確立

2つ目は「各金融機関の独自性の確立」である。従来、金融行政自体が「護送船団方式」と呼ばれる横並びの意識が非常に強い業界であるが、地方創生が叫ばれる昨今、各エリアの特性を理解することが地域金融機関にも求められるため、「横並びの意識の撤廃」が喫緊で要求される。

「ローカルベンチマーク」においてはその手続きの第1段階として「地域の経済・産業の現状と見通しの把握」を求めている。その把握のために政府はRESAS(地域経済分析システム)の活用を促し、さらには金融機関と自治体の対話を求めている。

さらにこの第1段階には「重点的に取り組むべき企業の特定」というプロセスが求められている。その前提をもって、各個別企業は、先述のツールなどを使って対話を促進することを想定している。

一方、「金融仲介機能のベンチマーク」は50項目の「選択ベンチマーク」が用意され、各金融機関の状況に応じて選択、あるいは別途追加できるようにしてある。「ローカルベンチマーク」の第1段階を踏まえて、地域の特性等を考慮に入れながら独自の経営戦略を構築していくことを求めているからだろう。

なお、「金融仲介の改善に向けた検討会議」では「金融機関の仲介機能の発揮状況を(ベンチマークを使って)ディスクロージャーすることにより、よくやっている金融機関が見える化されることを通じて、マーケットメカニズムが働いていくよう、(中略)この取組みを徐々に進化させていきたい」(当局)とある。

現在の金融庁が「ルールベースからプリンシプルベースに」を標榜し、金融検査等においても過去の債務者区分・格付け依存型からの脱却を図り、各金融機関の独自性を尊重する流れに歩調を同じくしていると考えられる。

 

まとめ

金融円滑化法により、抜本的な再建が先送りされている企業や、社長が高齢で事業承継問題を抱える企業、内需減少で海外進出を図らなければ尻つぼみとなる企業、一方でマイナス金利で収益力が低下し、融資のみでは立ち行かなくなってきている地域金融機関。

このような環境において、各当事者が「危機感をもって」自主的に対話を積極化することで生き残りを図り、ひいては地域が活性化することを期待しての導入といえる。これらのベンチマークが本当に活きたものとなるには、まずは各当事者がこのことを十分に理解しておく必要がある。

執筆者

NEXT CFO 編集部

 NEXT CFO編集部

経営者・管理職にCFOの役割を広めたい!CFOが活躍する社会をつくることで、日本経済を活発にしたい!そんな想いでNEXT CFOのメディアを運営しています。

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