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オプジーボで増収率トップ 「小野薬品工業」|企業解説

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2016年11月23日の日本経済新聞朝刊で、小野薬品工業が2016年4~9月期の増収率トップ企業として紹介されていました。その大きな要因は使用領域が広がり、売り上げが18倍に膨らんだ抗がん剤「オプジーボ」です。この記事では、世界・日本の医薬品市場と、その中で小野薬品工業がどのような戦略を取っているか、小野薬品工業における「オプジーボ」の大きさについて解説していきます。

世界・日本の医薬品市場

小野薬品工業についてお話しする前に、まずは世界と日本の医薬品市場動向を見ていきましょう。

世界の製薬市場は人口増加や高齢化によるニーズの増加、新薬の開発によってこれまでに治せなかった病気の治療が出来るようになったことなどにより、上昇を続けており、これからも伸び続けると予想されます。

次に、日本の医薬品市場についても下記の図のように上昇が続いています。これにも高齢化や新薬開発が背景にあるでしょう。

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また、ここで注目してほしいのが一般医薬品と医療用医薬品の市場規模です。

一般医薬品とは、薬局やドラッグストアで医師の処方箋なしに購入できる医薬品で、医療用医薬品とは服用に医師の処方箋が必要な医薬品です。この2つを比べると、圧倒的に医療用医薬品の市場規模が大きいことがわかりますね。

それでは、この情報を踏まえて、次は小野薬品工業について見ていきましょう。

小野薬品工業の概要

あまり耳慣れない製薬会社である、小野薬品工業。どんな会社なのでしょうか。

小野薬品工業は大阪市に本社を置く会社で、1717年に薬種仲介業者として創業し、その後医薬品製造会社を設立、吸収合併して現在の医薬品の製造・販売を自社で行う事業形態となりました。かつては一般用医薬品を製造販売していましたが、現在は一般用医薬品から撤退し、医療用医薬品と検査試薬・機器の製造販売を行っています。

先ほど述べたように、一般用医薬品と医療用医薬品の市場規模は10倍以上の開きがあるため、小野薬品のように医療用医薬品のみに注力している製薬企業は実は他にも多くあります。そのような一般用医薬を販売していない企業は、名前を薬局で見かけたりCMで見かけたりすることもないため、一般的な知名度があまり高くないのですね。

小野薬品工業における「オプジーボ」

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小野薬品の直近5年間の業績をまとめてみました。2016年3月期(=2015年度)に売上高が急増していることが見て取れます。やはり「オプジーボ」が売上げを牽引しているのでしょうか。その売上高とその他の主力製品の販売状況を見ていきましょう。

下記の表からもわかるように、2015年度のオプジーボの売上高は前年比741.0%上昇と、最も売上げが伸びています。

また、2016年の売上見込みのうち、約半分程度がオプジーボによって占められています。正確には、2,590億円の売上収益を見込んでいるうち、1,260億円がオプジーボによるものです。小野薬品の売り上げはオプジーボに頼るところが大きく、この売り上げが経営状況に直結するといえるでしょう。

小野薬品工業 主力製品の売上高
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小野薬品工業HPより

そんなオプジーボが異例のスピード値下げ

薬価の見直しは基本2年に1回が原則で、本来なら次の見直しは2018年度からです。しかし、今回特別に2017年度2月から50%値下げを行うことが16日に厚生労働省が開いた中央社会保険医療協議会(中医協)で決定されました。

オプジーボは患者ひとりに1年間使うとおよそ3,500万円かかり、非常に高額で、さらに現在利用できる病種が拡大しており、このまま放置していると医療費が急増していきます。そこで、今回厚労省は、1,000億円以上売れた薬を値下げできる「市場拡大再算定」というルールを使いました。この仕組みは、販売額が1,000億~1,500億円なら最大25%、1,500億円超なら50%値下げ出来るというものです。

オブジーポの予想売上高は出荷ベースで1,260億円の見込みです。当初は25%の値下げを行うこととなっていましたが、米国でのオプジーボの薬価は日本の4割、英国では2割程度にとどまっており「25%の値下げでは不十分」との批判が相次ぎました。これを受け、厚労省はオプジーボの予想販売額を独自に再計算し、1,516億円以上と算出し、50%の値下げに踏み切りました。

小野薬品工業はこれによって想定外のマイナスの影響を受けることになりました。今回の厚労省の計算は客観性を欠くものとして、製薬業界からの反発を受けています。

まとめ

日本国内でのオプジーボの値下げによる大きな影響を受けた小野薬品ですが、今後オプジーボの適用範囲はさらに広がっていくことが想定されています。

今後も、小野薬品の「オプジーボ効果」はまだまだ続きそうですね。

執筆者

山原 一晃 氏

 山原一晃 氏

京都大学大学院農学研究科所属。就職活動を始め、自分が世の中を知らなさすぎることに気づき、Next CFO記事インターンを志願。将来を模索する日々を過ごしている。