JR東日本、インバウンド需要強化へ

2016年11月22日の日本経済新聞朝刊にて、東日本旅客鉄道(以下、JR東日本)は、鉄道事業においてインバウンド関連の売上高を2021年3月期に前期の2.4倍である300億円にするという方針を公表しました。2020年には東京オリンピックを控えている日本にとって、訪日客の消費活動が日本経済に与える影響は大きいと考えられます。本日は、近年のインバウンド動向を踏まえた上で、JR東日本のインバウンド需要拡大という方針から見える収益モデルについてまとめたいと思います。

近年のインバウンド動向

近年、インバウンド市場への注目は非常に高まっています。下記の図は、訪日外国人客数の推移を示したグラフですが、2012年から急速に訪日外国人が増加し、2015年には1973万人に上っています。

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この急速な伸びの主な要因としては、以下の4つが挙げられます。

・2012年以降の円安傾向
・アジア各国向けのビザの免除/緩和
・免税制度の拡充
・LCCやフェリーなど訪日路線の増加

特にアジアから来日する外国人が多く、2007年以降は中国・韓国・台湾が上位を占めています。訪日客の増加は、日本国内の消費活動が増えることを意味します。

訪日客の支出は大きく買い物代とサービス代(交通費、飲食費、宿泊費など)に分けられます。下記の図は、訪日客の費用別支出額の伸び率の推移を示したものです。買い物代の伸び率が低迷し、サービス代は横ばいであることがわかります。

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インバウンド消費を日本の経済発展に寄与させるためには、インバウンドを増やすことだけでなく、一人当たりの支出額を増やすことも重要視しなければならないでしょう。特に伸びしろがあるのはサービス消費です。交通インフラの拡大や地方への呼び込みによって、交通費や滞在費が増えていく可能性は十分にあります。

JR東日本のインバウンド需要拡大

近年のインバウンド動向はざっくりと掴めたでしょうか。ここからは、JR東日本がどのような経緯でインバウンド領域を広げる選択をしてきたかについて見ていきましょう。

JR東日本は、新幹線や鉄道などの運輸事業のイメージが強いですが、その他にも駅スペース活用事業、ショッピング事業、オフィス事業なども手がけています。下記は直近5年間の業績ですが、売上高・営業利益ともに右肩上がりで勢いが続いています。

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しかし、この勢いは今後必ずしも続くとは限りません。なぜなら、2031年度から行う東北・上越新幹線の大規模改修に伴う費用の一部を、2016年度から引当金として積み立てていくからです。

東北・上越新幹線は2031年に開通50年を迎えます。超長期使用のインフラですので、もちろん日々の点検作業が行われていますが、それでも経年劣化は避けられず大規模な改修が必要となります。改修に必要な費用は1兆円を超える見通しであり、そのうち約3分の1の3,600億円を引当金として15年間にわたって積み立てます。この引当金の計上により毎年の営業費用は240億円増加するため、JR東日本は売上高をさらに伸ばしていかなければなりません。

そのための施策のひとつが、今回発表されたインバウンド売上高の拡大だと考えられます。

JR東日本は、インバウンドの思考がモノの消費からコトの体験に移ってきているのをにらみ、東北地方の祭りや北陸地方の食などをアピールしていく予定です。特に、宿泊した外国人が2015年でも50万人程度にとどまっていることから、東北地方を伸びしろの高い市場と捉えています。今後の観光誘致策に注目です。

執筆者

小比田 桃子 氏

 小比田桃子 氏

東北大学理学部化学科在学中。生物化学を専攻している。現在は就職活動中。2017年夏に開催予定の学生ファッションショー、キャンパスコレクション仙台運営スタッフ。