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売上の半分は海外、クロスボーダーM&Aで成長する味の素

2016年11月17日(木)の日本経済新聞朝刊の企業総合欄で味の素株式会社(以下、味の素)がトルコの食品会社を74億円で買収すると報道されました。味の素がどういった過程で今に至るのか、今回はこれまでのM&Aをみながら確認していきたいと思います。

昨今はM&Aの話題が尽きないですが、それだけM&Aが注目されていることがよくわかります。今回ご紹介する味の素もM&Aより事業を拡大してきた会社ですので、CFOを志す方は要確認されるべきです。

事業内容

味の素の事業はアミノ酸を核とし、そこから食品分野、バイオファイン分野、医薬・健康分野に分けられます。食品分野においては、メニューの汎用性と各国のお客様の多様なニーズにこたえ「おいしさNo.1」を目指しています。バイオファイン分野では、アミノ酸の持つ無限の可能性を科学することで、新機能を解明し、多彩な分野へ活動を広げています。医薬・健康分野では、「味の素グループならでは」の薬づくりで、患者様のQOLの向上に努めています。

財務状況

(単位:百万円)2011年度2012年度2013年度2014年度2015年度
売上高972,648948,705951,3591,006,6301,185,980
営業利益72,58471,23261,80774,51991,045
当期純利益41,75448,37342,15946,49563,592
自己資本利益率(%)6.897.617.086.9410.18
自己資本比率(%)55.258.254.453.349.4
有利子負債(Net)▲19,873▲67,18710,53843,29943,462
流動比率(%)226.5229.3232.8169.5268.6

(※味の素HPより作成)

海外への事業展開

味の素の海外売上高はすでに全体の半分を占めており、海外展開を進め、「グローバル健康貢献企業グループ」として成長を続けています。今回買収したオルジェン・ギダ・サナイ・べ・テカレット社はトルコを拠点とした食品会社ですし、11年にはトルコでうま味調味料「味の素」などを販売する現地法人を設立しています。13年には食酢を販売するトルコの食品会社キュクレに50%出資しました。現在は中央アジアや中東地域での事業展開を目指しているようです。

また、今月8日にはアフリカ36カ国で事業展開する食品大手、プロマシドール・ホールディングス社の株式約33%を取得し、アフリカ食品市場におけるリーディングプレーヤーの地位確立も目指しているようです。

これまでのM&A遍歴

味の素のM&A戦略は最近始まったことではなく、1987年6月クノール食品の買収から始まります。その後、1989年9月ベルギーのオムニケア、2013年11月アルテア・テクノロジー、2014年11月ウインザー・クオリティなど、これまで海外企業のM&Aを積極的に行ってきました。

しかし、それだけではなく、グループ内の組織再編にも注力しています。例えば、冷凍食品事業や医薬事業、飼料用アミノ酸事業を統合および分社化しています。

また、2007年10月に完全子会社化したカルピスを、5年でアサヒグループホールディングスに全株式譲渡しています。当初は飲料事業基盤、および乳酸菌・微生物活用技術を取り込み、健康事業の拡大を図っていましたが、後にこの譲渡の理由は経営資源の集中で「成長と構造強化」を推進するためと説明されています。過去にご紹介した、武田薬品工業株式会社もそうですが、事業の選択と集中が進められています。CFOを志す方はこの傾向に注目しておくべきです。

まとめ

味の素がクロスボーダーでM&Aを進める目的は事業拡大だけではありません。食品業界は、海外では宗教上使用できない食品もあり、何かと制限が存在します。その問題を解決するためには、その国、地域を知っていなければなりません。今現在、味の素は27の国、地域に拠点を置いています。それゆえ、その地に合ったサービスの提供を可能にしているようです。今後も美味しさベースで食の分野から健康を提供して頂きたいです。

執筆者

宮川 拓也 氏

 宮川拓也 氏

札幌学院大学経営学部会計ファイナンス学科に在籍。同大学で金融経済や証券投資、管理会計等を学んだことをきっかけに、会計や金融を扱う職業に就くことを志し今に至る。