大手銀行、軒並み減益のわけは?

大手銀行5グループの2016年4~9月期(上期)の連結決算が11月14日に出そろい、純利益の合計が前年同期比で10%減、3メガバンクは、リーマンショック後の2009年上期以来、7年ぶりにそろって減益となったことが、2016年11月15日(火)の日本経済新聞朝刊で報道されました。収益性の高い業界といえば必ず例に挙げられる金融業界。その中でも今回は、銀行に焦点を当てて、上記の報道の背景を解説していきます。

基本的な銀行のビジネスモデル

銀行の簡略的なビジネスモデルは、お金の余っている人(黒字主体)に預金をしてもらい、お金が必要な人(赤字主体)にそのお金を貸し付ける、すなわちお金を融通することです。一般的には、預金業務貸付業務と言われています(「信託銀行の役割とは?銀行とは違うの?」(2016/10/25)にて銀行の役割を、信託銀行と比較、解説しております。)。赤字主体への貸し付けからの見返りとして利息を得ており、それが銀行の収益になっています。また、黒字主体からの預金に対して逆に利息を払っており、それが銀行の費用になっています。当然のことではありますが、貸付先からの利息収入と、預金者への利息費用の差が利益になるので、預金の金利が貸付金の金利を上回ることがないように銀行は調整しています

少し応用的な収益獲得手段

先ほど、銀行は赤字主体にお金を融通することで利息を得て、収益を稼いでいると解説いたしました。ですが銀行がお金を稼いでいる手段は、それ以外に主に2つあります。1つ目は、日本銀行(中央銀行)の特別な預金口座(日本銀行当座預金)に預金をすることです。その預けたお金に利息が付くので、銀行はそこから、ほぼ無リスクで収益を得ることができます2つ目は、国債の購入です。日本という国にお金を貸すということです。日本の財政が破綻しないという前提に立てば、利息はしっかり払われ続けるので、こちらもほぼ無リスクで収益を得ることができます

マイナス金利の基本

銀行の減益を理解するには、上記のビジネスモデル以外に、話題のマイナス金利についても理解する必要があります。マイナス金利政策とは、簡単に言うと、少し応用的な収益獲得手段として説明した①日本銀行当座預金②国債、この2つの金利を、ゼロ以下、マイナスに誘導するというものです。それによって銀行は、ほぼ無リスクで利息を得ることのできる上記の2つの手段に依存し続けることができなくなり、企業への貸し付けを余儀なくされます。日本銀行はこれにより、企業の借り入れ、投資を促進し、物価を安定的に上昇させることを目的としています。

マイナス金利の銀行への影響

今までの内容を押さえることができれば、銀行の減益を理解することができます。

銀行はマイナス金利政策により、ある一定額以上を日本銀行当座預金に預けると、マイナス金利が課せられる状態になり、また国債も超低金利で購入することになります。そのため、銀行の収益源である日本銀行当座預金と国債の利息が少なくなり、銀行の収益が減益になるのです。また、企業への貸し付けの利息収入を考えると、多くの銀行がマイナス金利政策の影響で企業に多くのお金を貸し付け、利息を得ようとします。しかし、企業のお金の需要量は変わらないのに、企業へのお金の供給量が増えるので、供給が多い状況、供給超過になります。すると供給超過状態を解消するため、企業への貸出金利が低くなってしまいます。したがって、企業への貸出金利も低下するので銀行の減益につながってしまいます。

下の図は、企業のお金の需要と供給、金利低下のメカニズムを表した図になります。

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まとめ

銀行はマイナス金利政策により、経営環境が大きく変わり、変革を強いられています。例えば、手数料を増やしたり、別のサービスを提供し顧客を呼び寄せようとしています。また、これまでとは全く違うかたちで収益をあげようとする動きも見られます。株式会社三菱東京UFJ銀行は、国債を有利な条件で優先的に買い受けることのできる資格(プライマリーディーラーの資格)を放棄し、新たな投資を検討しています。また、株式会社みずほフィナンシャルグループと第一生命保険株式会社の運用部門が統合した、アセットマネジメントOne株式会社の発足も、銀行業だけに頼らない収益構造を模索した結果だと言うこともできるでしょう。今後も金融緩和は続くと思われており、銀行への打撃は避けられません。そのような中で銀行がどのような変革をしていくのか、注視していく必要があるようです。

なお、あまたあるファイナンス手法の中で、銀行からの融資はCFOにとって、当たり前のように知っておくべきことです。銀行が今、どういう心理にあるのかということを、市場環境を踏まえてCFOは常に確認しておくべきです。その目線で新聞等をご確認ください。

執筆者

牧野 成譲 氏

 牧野成譲 氏

2013年4月専修大学商学部会計学科入学、現在4年生。2015年11月公認会計士試験に現役合格。2016年8月にミャンマー、タイの会計事務所で1か月間のインターンシップを経験。