企業の内部留保とは何か

最近、新聞や記事でよく「内部留保」というワードを目にします。11月9日(水)の日本経済新聞でも安定配当のために多めに内部留保を蓄積した企業が取り上げられており、知ってて当たり前のように使われています。しかし内部留保の議論の際に意味を誤って使われていることがしばしばあります。内部留保という語感から企業が溜め込んでいる現金、企業の隠し利益などと勘違いしている人ももしかしたらいるかもしれません。内部留保とは何か、また配当との関係を解説します。

資本と利益

まず内部留保をきちんと理解するために資本と利益の違いを理解しなければなりません。企業は活動をするにあたり株主から出資を受け、そのお金で設備投資や販売活動を行い、利益を生み出します。この時、株主から受けた出資額を資本といい、そこから企業が生み出した利益と明確に区分されます。下図のように利益から株主へ配当し、その残りが内部留保として毎年蓄えられます。内部留保は現金として貯蓄されているとは限らず、設備、土地、製品などの資産に形を変えて企業に存在していて次期以降の利益を生み出す源泉となります。そのため決して企業の隠し現金などではなく、将来への投資とも言えます。

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以上のように内部留保とは企業の活動の結果として今までに企業に蓄積された利益と説明できますが、実は会計学では内部留保は明確には定義されておらず、また内部留保という勘定科目はありません。しかし内部留保といえば利益準備金や任意積立金などの利益剰余金をさすことが一般的です。(資本準備金を含むこともある)

配当と内部留保

毎期の利益を配当と内部留保に分配すると先ほど解説しましたが、もう少し詳しく配当と内部留保を説明します。企業は株主に出資してもらって成り立っているため株主へ利益を還元する必要があり、その一つが配当です。そのため毎期生じた利益を全て株主への配当として還元すれば株主としてはありがたい話です。

しかし企業の利害関係者は株主だけでなく債権者もおり、株主への還元しか考えなければ債権者への返済に影響が出てしまいます。また先ほども述べた通り内部留保は将来への投資の意味も持つため全て配当すると将来の利益額の減少につながります。

そこで法律では過度な配当を抑制するために幾つかの決まりがあります。

一つ目は分配可能額といって配当できる額に限度があります。具体的には配当時点での貸借対照表のその他資本剰余金とその他利益剰余金の合計額までしか配当できません。さらに、詳細は除きますが自己株式やのれん、繰延資産が計上されていると配当可能な金額はより制限されます。ちなみに当期の純利益が赤字だとしても内部留保が蓄えられていれば配当することはできます。

二つ目の決まりですが、内部留保額が少ない場合には配当の際に追加で積立が必要です。具体的には資本準備金と利益準備金の合計額が資本金の1/4以下の場合、配当額の1/10を準備金として積立てます。

最後に

ここまで内部留保と配当の関係について解説してきました。CFOなどの企業の財務を扱う方は、内部留保で将来投資に回すのか、配当で株主に還元するのか、それとも、投資と配当に両バランスを取りながら、対応するのか。ここは資本政策も密接に関わりますので、CFOに興味がある方はぜひ勉強していただきたいテーマです。

執筆者

嶋本 幸之助 氏

 嶋本幸之助 氏

東京大学技術経営戦略学専攻修士2年。大学では躰道という武道に打ち込み、四年の時に主将を務め部を全国優勝に導く。その成果もあり2014年に東大総長賞受賞。大学院ではファイナンスを専攻。