為替変動が企業に与える影響とは

2016年11月1日の日本経済新聞で上場企業の2016年上期(4〜9月)の純利益が4年ぶりの減益となったという記事が掲載されました。
減益の要因としては、大幅な円高進行や新興国景気の減速によるものと書かれていました。

グローバル市場に参加している以上、企業に対する為替による影響は必然です。そして、今後は大部分の企業がグローバル市場の一部になっていくことは避けられないでしょう。
会社の舵を握るCFOにとっては絶対に理解しておかなければならない項目ですね。
この機会に為替の変化が企業に与える影響を理解してしまいましょう。

まず為替ってなに?

簡単に言うと、ドルに対する円の価値が上がったかどうかということです。

*ここでは、簡単にするため世界的に主要な通貨であるドルのみに対する円の価値で説明します。実際には、ユーロやポンドに対する円の価値も存在します。ドルやユーロ、ポンドなど複数通貨に対する総合的な為替指標も存在し実効為替レートといいます。

まず、標準を1ドル=100円とすると、(つまり、1ドルを100円で交換することができるとします)

1ドル=120円となった場合・・・1ドルを手に入れるには120円出さなければならなくなった。
円の価値が下った(いわゆる円安です)

1ドル=80円となった場合・・・1ドルを手に入れるには80円で十分になった、
円の価値が上がった(いわゆる円高です)

 

 では、なぜドルに対する円の価値が上がったり下ったりするのでしょうか?

これは円に対する需要と供給のバランスで決まります。

つまり、

円に対する需要が供給より大きい(出回っている円よりも必要とされている円の数の方が多い)
⇒ 円の価値が上がった(円高)

円の供給が需要よりも大きい(必要とされている円よりも出回っている円の方が多い)
⇒ 円の価値が下った(円安)

ということになります。

外国企業が日本企業と日本円で取引するときに円が必要な時、日本に対する投資(日本株の購入や日本での設備投資)で円が必要な時、これが円の需要ですね。
対してこれの逆、つまり日本企業が外国に対して何かビジネスを働きかける時、これが円の供給に繋がります。
しかし、近年では投機目的や資産保有目的での為替取引(FXと呼ばれるものです)が大部分を占めてしまっており、先に述べた純粋な取引上での需給バランスによって為替が決められるということは最早なくなってしまっています。

以下のグラフは2002年4月からのドルに対する円の価値(円/ドルレート)の推移です。
一番円高のときで20111031日のときの1ドル=75.76であり、その後、2013年の金融緩和以降急激に円安に向かっていますね。しかし、2015年の後半以降はイギリスのユーロ離脱などの影響もあり再び円高に向かっています。
ぜひ皆さんも以下のグラフに見られる円高円安の原因を探ってみて下さい。経済の変化が見られて面白いですよ。

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為替は企業にどんな影響をあたえるのか?

さて、次はその為替の変動が企業の経営にどのように影響を与えるのかを見ていきましょう。
今回は円高時のメリット・デメリットを見ていきます。

[円高メリット]

輸入費用の削減効果

安く輸入することが可能になり輸入費用の削減が国内での競争力向上に繋がります。
最近では、日本全体での輸出輸入の総額は輸入の方が若干高くなってきており、この点では
円高が日本に与える効果はプラスと言えるかもしれません。

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 ②海外企業のM&Aが安く行える。

円高になることで海外企業を通常より安く買収することができます。
大きい買い物であるので、この効果は大きいですね。

③原油の仕入れが安く行える。

さっきの輸入費用の削減と被ってしまいますが、天然資源の少ない日本にとってこれはありがたい効果です。

 

[円高デメリット]

①輸出型企業にとっては、業績ダウンにつながる。

先ほどは輸入する分には円高は有利であると書きましたが、逆に考えると円高は輸出型企業にとっては不利ということになります。
下図は上場企業(下図では日経225)と全産業における円高メリット企業と円高デメリット企業の比率を表した図です。
円高メリット企業とはつまり輸入が多い企業、対して輸出デメリット型企業は輸出が多い企業を指します。(輸出デメリット企業は製造業が多く当たります)
図をみると、全産業では両者に差は見られませんが、日経225では差が見られます。
これはつまり、日本の株式市場には製造業が大部分を占めており円高時には悪影響を被る企業が多く業績ダウン、さらには株式市場全体で株安に陥るということを意味しています。

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②円高が行き過ぎると、デフレに陥る可能性。

輸入価格が下がり商品が安くなる。消費者にとっては良い傾向ですが、社会全体にとっては一概に良いとは言えません。
商品が安くなるということは企業の売上も減少するということでありますし、結果社員の給料が下がり商品が売れなくなってしまい、さらに企業の業績が下がるということにも成り得ます。
他にも、先ほどデメリット①でも述べたように上場企業には円高デメリット企業の割合が多く、日本の根幹を占める円高デメリット企業の業績悪化が国内景気に与える影響は大きく、それが消費の衰退、デフレに繋がることも考えられます。

さいごに

ここまで為替について、そして為替が企業、社会に与える影響について説明してきました。
ごく基本的なことではありましたが、経済の大枠を理解するには十分だとは思います。
しかし、基本的なことであるが故にこれだけで円高円安の優劣をつけることは難しいです。
今回は日本からのみの視点で円高円安を見てきましたし、時間の経過による常識の変化もあるためです。

 

執筆者

沢田 勇平 氏

 沢田勇平 氏

神戸大学大学院経済学研究科所属。学部時代は会計を学び、現在は経済学を中心に学んでいます。一企業に頼らず自身の豊富な知識を武器に活躍するCFOを夢見て頑張ります。