M&Aで選択と集中を進める武田薬品

事業の選択と集中が進む製薬業界ですが、2016年11月2日に武田薬品工業株式会社(以下、武田薬品)がカナダの製薬大手であるバリアント・ファーマシューティカルズ・インターナショナル傘下のサリックス・ファーマシューティカルズの買収で交渉していると発表されました。この件は11月3日の日本経済新聞朝刊でも取り上げられたため、ホットな話題です。製薬業界に関わらずM&Aが進む昨今、CFOを志す方にとっては把握しておくべきテーマです。今回はそのM&Aで事業の選択と集中を進める武田薬品工業についてご紹介します。

武田薬品の歴史

武田薬品の歴史は古く、創業は1781年にまで遡ります。1871年に洋薬に注目し、その仕入れ組合をつくり取引を始めます。1895年にはイギリス、アメリカ、ドイツ、スペインなどの商社からの直輸入を広げ、洋薬中心の事業に切り替えていくようになりました。製薬事業を開始したのは1895年で、ここから製薬メーカーとなります。研究活動を行うようになったのは1914年で、1949年に東京・大阪証券取引所に株式を上場。1962年にアジア、1978年にヨーロッパに進出し、活動拠点を広げていきます。その後は企業統合を繰り返し革新的な医薬品等を生み出し続けています。特に近年は、米国バイオ医薬品会社Millenium Phamaceuticals(2008年実施、買収価格8,600億円)やスイスのNycomed(2011年実施、買収価格1兆円)の買収に代表される大型のクロスボーダー案件に取り組んでいます。M&Aを繰り返すことによって、武田薬品は今の巨大な事業規模に至るのです。

事業内容

武田薬品は先に述べたように、医薬品等の研究開発、製造、販売、輸出入まで全て行っています。重点領域は消化器系疾患領域、オンコロジー(がん)、中枢神経系疾患領域およびワクチンです。

今回の買収の件について、武田薬品のCEOであるクリストフ・ウェバー氏は「武田薬品はそれらの分野に力を入れていることは業界では誰もが知っているため、今回のような消化器系の分野で事業を売りたいとしている会社があれば武田薬品に話が来ることは自然」としています。しかし、ホームページにもある通り未だ開示すべき合意事案はないと報告されています。

今回のM&Aが実現すれば、武田薬品が得意とする消化器領域の強化につながる一方で、買収総額が約1兆400億円規模となるこの案件は、財務体質の悪化を招くとの声もあります。

財務状況、投資指標

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(※有価証券報告書より作成)

収益性を示す自己資本利益率ですが、目安として上場企業は10%程度です。安全性を示す流動比率は200%が目安とされていますが、少なくとも100%は超えていないと企業の財産状況としてリスクがあります。一般に、製薬会社の研究開発費は多い水準ですが、武田薬品は日本の製薬会社でトップ走る程、研究開発費に投資しています。

これらの指標以外にも見ておくべきポイントはたくさんあるため、CFOを志す方は研究しておくべきです。

過去、現在の著名なCFO

現在のCFOはジェームス・キーホー氏。キーホー氏は消費財関連業界における財務責任者としての豊富な経験を有するとともに、優れたリーダーシップによりプロセス最適化などを通じて業績を改善した実績を有しています。同氏は、ドイツ、スイス、イタリアにおいて、20年以上にわたり数多くの財務分野の職務に就き、直近では米国のクラフトフーズグループでCFOを務めていたそうです。

また、武田薬品といえば、2015年6月26日付で退任したフランソワ・ロジェ氏の名を耳にしたことがあるでしょう。「人事のグローバル化」に邁進していた長谷川会長が海外企業から引き抜き、取締役就任から1年たたずして退任し、スイスのネスレ社に引き抜かれました。当時はコスト削減額620億円という実績を残したものの、役員報酬のもらい逃げとの声もあり、外国籍を持つ役員登用の難しさがうかがえます。

まとめ

今回報道されたM&Aの件ですが、未だ合意には至っていない状況です。今後の動向を見守るためには、武田薬品の業界にけるポジションを事業内容や数値をもとに理解していくことが大切です。

執筆者

宮川 拓也 氏

 宮川拓也 氏

札幌学院大学経営学部会計ファイナンス学科に在籍。同大学で金融経済や証券投資、管理会計等を学んだことをきっかけに、会計や金融を扱う職業に就くことを志し今に至る。