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今更聞けない「減損損失」 工場だけではない、M&Aとの関わり

決算において重要な位置づけを占める「減損損失」。売り上げが十分あるように見えても、減損損失次第で最終的には赤字になることが多々あります。2016年11月2日の日本経済新聞朝刊では、NTNやイビデンが減損処理によって、今期の予想利益を下方修正していることが報じられていました。また、M&Aに伴い生じるのれんとの関わりも深く、企業財務のトップに立つCFOにとっては大事な会計要素のひとつです。

そもそも減損損失とは

減損損失とは、損益計算書(P/L)上で特別損失に区分される項目の1つです。

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上記の表は、タカラトミーの平成25年3月期の連結損益計算書です。営業利益、経常利益ともにプラスですが、減損損失6,233百万円を計上し、最終的には赤字となっています。

では、減損損失はどのようなときに計上されるのでしょうか。

「固定資産の資産価値が下落し、投資の回収見込みがなくなったとき」と答えるのが一番シンプルですが、具体的には下記のようなパターンがあります。

(1) 工場で製造している製品の収益性が低下(価格の下落や販売不振)し、利益が継続して赤字の場合
(2) 事業の廃止や資産の早期処分、転用、遊休化などにより、回収可能額が著しく低下する場合
(3) 原材料の高騰、特許期間の終了、規制強化などの経営環境の著しい悪化が生じた場合
(4) 固定資産の市場価格が著しく下落(帳簿価格の50%程度以上)した場合

工場などの固定資産はそこから得られる将来のキャッシュフローを見越して、費用ではなく会社の資産として処理しているので、予想したキャッシュフローが望めない場合は、回収可能額との差額分を特別損失として費用を計上しなければならない、というわけです。

減損損失を理解する2つのポイント

① 中小企業には義務が無い
固定資産の減損処理は上場企業や大会社では義務づけられていますが、中小企業は必
ずしも行う必要はありません。減損処理には高度な判断が求められるため、人的資源が
比較的乏しい中小企業では適用対象外となっているのです。

② 企業の透明性を高める効果がある
減損損失の計上することは、未確定の損失である「含み損」を処理することになるため、
企業の透明性を高めることにつながります。そういった意味では、減損損失の計上は財
務体質の改善と言い換えることもできるわけです。

CFOとして一歩踏み込む「のれんの減損」

M&Aによって発生する「のれん」。買収価格と被買収企業の純資産の差額のことですが、これも被買収企業が将来にわたって生み出すキャッシュフローを評価したものであり、無形固定資産として計上されています。つまり、工場や土地などと同じように買収した企業の収益性が低下すると減損損失が発生する可能性があるということです。

代表的なところでは、キリンホールディングスが2011年に約3千億円で買収したブラジル2位のビールメーカーの舵取りに失敗し、2015年12月期に1100億円の減損損失を計上しています。

近頃M&Aに積極的な企業がよく見られるようになり、同時にのれんの残高が増加しています。日本の会計基準では、のれんは20年以内で均等に償却されますが、国際会計基準(IFRS)などでは償却されません。

攻撃担当かつ守備担当であるCFOには、M&Aで攻めながらもそのリスクをコントロールする力量が求められています。

執筆者

久保 謙太郎 氏

 久保謙太郎 氏

中央大学法学部政治学科4年。ゼミでは環境保護と企業成長の両立について研究。学生時代は国内旅行と読書に明け暮れる傍ら、中小企業診断士を目指す。