百貨店業界分析1 百貨店業界の概要

百貨店業界の概要

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■百貨店の定義

百貨店とは、日本百貨店協会に加盟し、衣,食,住に関わる多種の品目を取り扱い、従業員による対面販売を主に行う商店で、スーパー(*)とは区別される。売場面積が東京特別区及び政令指定都市で3,000平方メートル以上、その他の地域で1,500平方メートル以上の商店。

「衣、食、住にわたる各種商品を小売りし、小売販売額の10%以上70%未満の範囲内にある事業所で、従業者が50人以上の事業所をいう。 」(経済産業省「業態分類の定義」)

*スーパー:売場面積の50%以上についてセルフサービス方式を採用している事業所であって、かつ、売場面積が1,500平方メートル以上の事業所をいう。(経済産業省「商業動態統計」)

■百貨店の種類

種類内容具体例詳細
呉服系創業当初が呉服店三越伊勢丹ホールディングス「伊勢丹」と「三越」が経営統合
J.フロントリテイリング「大丸」と「松坂屋ホールディングス」が経営統合
高島屋東京・大阪にバランスよく出店する老舗百貨店
そごう・西武「そごう」と「西武百貨店」を経営
セブン&アイホールディングスの100%子会社
電鉄系鉄道会社系列の店エイチ・ツー・オーリテイリング関西中心に展開する阪急阪神東宝グループ
阪急阪神百貨店阪急百貨店と阪神百貨店を経営
エイチ・ツー・オーリテイリングの100%子会社
近鉄百貨店「あべのハルカス」が本店
東急百貨店東急電鉄の100%子会社で、東急グループの中核企業

出典:成美堂出版『今がわかる未来がわかる業界地図 2016-17年版』
日本経済新聞出版社『日経 業界地図 2016年版』

■ビジネスモデル

1.仕入形態

百貨店は商品を卸から仕入れて消費者に販売しているので分類上、小売業に含まれる。小売業の仕入れ方式は大きく3つに分かれる。

1.買取仕入
仕入先から商品を買い取る仕入形態。仕入段階で仕入先の瑕疵がない限り返品はできない。仕入れた商品は小売店の所有となり、小売店は仕入れ時から在庫リスクを負うことはもちろん、保管責任を負担することになる。小売価格を決める権利(価格決定権)は小売店にあり小売店は仕入価格に自分の利益分を上乗せして小売価格を決める。

2.委託仕入
日本の百貨店とアパレルメーカーが独自に形成した方式で、「返品条件付き買い取り」ともいう。仕入先から一定期間、商品を預りその販売を委託される仕入形態。仕入れた商品は小売店の所有となるが、売れ残った商品については仕入先に返品することができる。小売価格の決定権は仕入先がもっている。小売店は在庫リスクを負担しないが、保管責任を負担することになる。卸業者やメーカーが在庫リスクを抱えることになるため、小売業者にとっての販売利益率は普通の買取仕入と比べて低くなる傾向がある。

3.消化仕入
近年百貨店に多い仕入形態である。小売業者に陳列する商品の所有権を卸業者やメーカーに残しておき、小売業者で売上が計上されたと同時に、仕入が計上されるという取引形態。これは、百貨店や総合スーパーなどのように多種多様な商品を豊富に品揃えする必要がある場合に有用な取引形態で、通常、テナント(卸業者やメーカー)と商品売買契約を締結し、商品が顧客へ販売されると同時にテナントから商品を仕入れるという仕組みになっている。百貨店の店頭に存在する商品であっても、販売されるまではその所有権及び保管責任は取引先にあり、商品の販売価格決定権についても原則的に仕入先が有する。小売店は通常、在庫リスクも、保管責任も負担しないことになる。一般に消化仕入は、小売業者から見ると在庫リスクを抱えずに商売ができる一方で、卸業者やメーカーが在庫リスクを抱えることになるため、小売業者にとっての販売利益率は普通の買取仕入と比べて低くなる傾向がある。

・価格決定権は在庫リスクを負う側が持つ。

・リスクが大きいほど、利幅も大きくなる。販売利益率は買取仕入が高く、委託、消化の順で低くなる。

・買取仕入の場合は小売店が自分の意思で商品を揃えるが、委託の場合は仕入先の意向が強く反映される。消化の場合は完全に仕入先が主導権を握る。リスクが大きいほど販売の主導権を持つ。また、買取仕入の商品は自社で宣伝し、販売することになるが、委託や消化の商品は仕入先が宣伝し、派遣店員などもつく。

商品の所有権在庫リスク価格決定権販売利益率仕入値
買取仕入小売店小売店小売店
委託仕入小売店仕入先仕入先
消化仕入仕入先仕入先仕入先
百貨店に多い消化仕入

現金販売による資金回収の速さと大量販売・大量仕入による低価格戦略を採っていた為、百貨店が誕生した当初は買取仕入が主流だったが次第に委託仕入が一般的となった。しかし、近年は委託の比率は急速に低下していて消化の比率が急速に高まっている。百貨店側はリスクも関与も少ない仕入形態の比率をますます高めているといえる。委託仕入と消化仕入は仕入先にリスクが集中されるため仕入値が高い。それゆえに、百貨店で販売されている商品は価格が高いのである。

2.販売形態

販売形態には大部分を占める店舗販売と店外販売の2種類に大別され、店外販売には外商や通信販売、WEB販売などがある。

外商とは

法人や多額の購買が見込める有力な個人客を対象に、店舗外で直接顧客を訪問して商品を販売する事業部門である。「正札」価格より値引きを行うという特徴をもつ。個人部門と法人部門があって、個人部門は得意先へ出向き商品を提案して販売する。販売品目はギフト品・高級ブランド品・高級食材などである。法人部門は、会社や官公庁などを訪問してお歳暮やらお中元などを販売する。呉服店系の百貨店では初期から存在していたサービス・部門である。

売上拡大に直接役立つだけでなく、固定客を大事にするサービスとしての意義が大きいとされる。またスーパーマーケットとの棲み分けから進められた高級化路線のターゲットとしてぴったりな高額の購入が期待出来る外商顧客の性格も相まって、外商部門は強化されるようになったケースが多い。外商の顧客は大企業関係や地主が中心である。

外商部員の数は百貨店の規模によっても異なるが数百人程度であり、百貨店の本店に配属されることがほとんどである。外商は基本的に「掛売」のビジネスで外商員は月末に顧客を訪問し売上を回収する。高額商品の取引が多いので顧客との信頼関係が大切である。各百貨店によって全体の売上高に占める外商の割合は異なるが、おおよそ2~3割を占めることが多く、百貨店の昔からの重要な販売形態の一つとなっている。

3.代金回収方法

百貨店は、法人・個人など不特定多数の顧客の利便性追求を志向し、その回収方法は現金、商品券等の金券、クレジットカード及び自社クレジットカード(ハウスカード)による掛売りなど多岐にわたっている。

ハウスカード

主に、百貨店やスーパー、専門店、鉄道、石油チェーンなどで発行されており、顧客の囲い込みや取引拡大が目的である。
例えば、A店というお店が独自に発行しているクレジットカードのことで、そのA店の系列の中でしか利用することができないクレジットカードのことである。多くの百貨店がハウスカードを発行しており、高島屋のハウスカードでは最大1割のポイントが付き、お買物券でバックされる。ハウスカードは発行しているお店でしか利用できないがその分ポイント還元率が高いのが特徴である。また、百貨店のハウスカードはポイントだけではなく、店内のラウンジが使えたり駐車場の優待があったりもする。しかし、近年限られたデパートのみでしか利用できないハウスカードは利便性に欠けるため、「VISA」や「MasterCard」、「JCB」と提携して、国内にとどまらず、世界中で使えるようにしているハウスカードが増えている。そのため狭義のハウスカードは少なくなってきている。なお、国際ブランドを付帯したクレジットカードは「汎用ハウスカード」と呼ばれている。

商品券

百貨店では自社グループでのみ使用できる商品券及び日本百貨店協会に加盟している百貨店で使用できる商品券(全国百貨店共通商品券)を発行している。現金と引き換えに商品券を顧客に引き渡し、商品引渡時にこれを対価として回収するといった販売方法をとっている。商品券の発行も重要な顧客の囲い込み戦略の一つである。特に百貨店であればどこでも使える全国百貨店共通商品券があることは百貨店業界の大きな特徴である。全国百貨店共通商品券は2016年現在北海道から沖縄まで、全国の百貨店等約500店で利用できる。

■国内百貨店プレイヤー

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百貨店業界のパワーバランス

2003年から2008年にかけて大手同士の再編統合が相次ぎ業界勢力図が大きく塗り替わった。三越伊勢丹ホールディングスとJ.フロントリテイリングの2社が売上高1兆円を超す。高島屋とエイチ・ツー・オーリテイリングとそごう・西武の3社が8,000~9,000億円台でこれら最大手が縮小する市場を奪い合う時代が到来している。

百貨店業界の動向

かつては売上げブランドイメージなど多くの点で小売業の頂点に位置していた百貨店だが、バブル崩壊後の消費低迷や専門店、量販店、コンビニエンスストアなどの台頭の煽りを受け、売上の長期低落傾向が続いてきた。各社は低落脱出に向け、変化し多様化する消費者の嗜好を懸命に追いかける一方、不採算店の閉店などリストラも進めている。ここ最近では都市部にある大型店がリニューアルなどで売り場面積を拡大しているのに比べ、地方店は人員を削減し店舗を縮小する傾向が目立つ。反対に、訪日外国人客の「爆買い」があちこちで見られ、各社とも外国人へのサービス強化を進めている。免税カウンターの導入店舗を増やすとともに席数を拡大したりしている。もはや百貨店にとってインバウンドの存在が無視できない水準になってきている。しかしインバウンドの恩恵を受けられる企業は限られており地方百貨店の状況は厳しいままである。また、2014年の百貨店売上高は、消費増税によるマイナスで爆買い効果にも関わらず前年を下回った。2019年秋にはさらなる消費増税が待ち受けており、業界の前途は依然として曇りのままである。

考察

百貨店業界の不振が目立ち地方百貨店がつぶれていく中で、大手企業が業界シェアを広げている傾向にある。百貨店は今後、都市部集中の色彩を強めていくのは確かである。このような中で百貨店が生き残っていくためには、インバウンド需要やより幅広い世代を取り込む戦略が必要になるだろう。かつての百貨店のシステムを打ち壊すほどの戦略が求められている。

執筆者

NEXT CFO 編集部

 NEXT CFO編集部

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