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ソフトバンク、サウジとファンド設立で技術革新目指す

ソフトバンクグループ株式会社(以下、ソフトバンク)の孫正義社長が、サウジアラビアの政府系ファンドであるパブリック・インベストメント・ファンド(以下、PIF)と10兆円規模の投資ファンド(以下、本ファンド)を設立する計画を発表してから、様々な業界が今後のソフトバンクの動向に注目しています。2016年10月18日(火)の日本経済新聞朝刊にも取り上げられるとともに、計画発表当初から各メディアが取り上げていることから、その注目度が高いことがよくわかります。

事業領域拡大へ向けて

ソフトバンクの事業領域は国内通信事業、スプリント事業、ヤフー事業、流通事業、その他と大きく5つに分けられます(詳しくは「ソフトバンクグループ、通信事業だけだと思ったら大間違い!」を参照)。9月には3兆3千億円強を投じ英半導体設計のアーム・ホールディングス(以下、アーム)を買収し、あらゆるものがネットワークにつながるIoTに攻勢をかけたことで話題にもなりました。今回のファンド設立もこのIoTの技術革新に深く関わっており、テクノロジー業界における投資運用能力、高度な業務運営知識及び幅広い経験を活用して、投資を実行していくようです。

そして、本ファンドの設立の目的は、本ファンドを通じての投資及び本ファンドの投資先企業との提携を通じてソフトバンクのグローバル成長戦略を加速させることとされています。

また、PIFのチェアマンであるムハンマド・ビン・サルマンはサウジアラビア王国副皇太子でもあるため、サウジアラビア側も脱原油事業へ向けての新たな経済改革の一つとして捉えていると考えられます。

今回の本ファンドの設立はアーム買収などIoTを次の成長の柱と位置付ける孫社長の方針と、サルマン副皇太子の思惑が一致したと言えます。

しかしながら、懸念材料も

やはりここで危惧されるのは、米国との関係が悪化しているサウジアラビアと巨額ファンドを運用するカントリーリスクや、PIFの今後の立ち位置、ソフトバンクの有利子負債の増加についてです。

カントリーリスクに関しては、投資対象の選定やマネジメントはソフトバンクが意思決定をするため、リスクはないと説明されています。しかしながら、政治、経済、ビジネス等々、複合的に絡まり合った問題が生じた時に、その環境下でどのように対処していくのかが課題となります。

サウジアラビアの今後の立ち位置についても同様に考えられ、対国内企業との共同出資と、対他国とのそれとでは違った角度から投資判断に影響するような問題が生じることは容易に想定できます。つまり、いつまでも、出資はするが口は出さない存在で居続ける保証はありません。孫流の投資を本ファンドでも続けていけるのかが課題となります。

また、有利子負債の膨張もまた気になるところであります。孫正義社長が実務役に抜てきした方に、インド人幹部のラジーブ・ミスラという方がいます。ミスラ氏もまた、大型M&A(合併・買収)で膨らむ有利子負債に懸念を示しており、彼は「債務の年限を長期化して市場の乱高下を乗り切れるよう支援したい」と話しています。

孫流投資で更なる高みへ

今となっては、携帯電話通信事業だけの会社として捉えている人はいないであろうソフトバンク。躍進し続けても企業経営が終わらない限り、目の前に頑丈な壁が何度でも現れます。M&Aを繰り返すことで成長してきたソフトバンクであれば、その壁を壊せないことはないと世界中から期待されているでしょう。ソフトバンクの今後の動向に注目です。

執筆者

宮川 拓也 氏

 宮川拓也 氏

札幌学院大学経営学部会計ファイナンス学科に在籍。同大学で金融経済や証券投資、管理会計等を学んだことをきっかけに、会計や金融を扱う職業に就くことを志し今に至る。