Galaxy Note7発火事故の背景

今、サムスン電子が揺れています。

2016年10月12日付の日本経済新聞の朝刊で、「サムスン迷走、不信招く」という記事が掲載されました。2016年9月2日に、最新鋭の最上位機種「Galaxy Note7」の自主回収を発表した同社は、一時販売の再開に踏み切りましたが、その後新たな発火事故を受けて、10月11日に生産の打ち切りを発表しました。韓国最大の企業に、今、何が起きているのか、その実態に迫っていきたいと思います。

Galaxy Note7の特長

まずはGalaxy Note7の特長を見ていきます。Galaxy Note7はペン入力が特徴の大画面スマートフォン「Galaxy Note」シリーズの最新モデルでした。8月2日に開催されたGalaxy Note7の発表会では、3500mAhという大型バッテリーを搭載しながらも、前モデルより軽量化した上で防水・防塵性能も実装した点を同社はアピールしていました。しかし、通常、防水・防塵性能を製品開発で追求すると、異物が入り込まないよう、また機器内が浸水しないようにスマホの内部をシールで覆うなど、密閉性を高める工夫をする必要が出てきます。その結果、少しでも発熱すると熱がこもりやすいため高温になり、さらにバッテリーに負荷がかかるという悪循環が発生しやすくなります。

なぜ今回の事故が発生したのか

今回の発火事故のような問題が、出荷前の品質検査などの段階で見過ごされたのはなぜでしょうか。その原因はいくつかあると考えられますが、その1つとして「スケジュールの前倒し」を指摘する声が出ています。2015年のGalaxy Note5から例年9月だったNoteシリーズの発売は、今回、8月に前倒しされていました。その背景にはライバルであるiPhoneの発売に先んじる狙いがあるとみられていますが、これが原因で製品の欠陥を十分に見抜けなかった可能性があります。またサムスンは、販売再開を急ぐあまり、事故発覚後、バッテリー発火の原因を正確に突き止めないまま販売の再開に踏み切りました。こうした「スケジュールの前倒し」が事故の拡大に拍車をかけた可能性も捨てきれません。

サムスン電子の損失は?

韓国SK証券の予測では、Galaxy Note7は10~12月期に500万台の販売が見込めたといいます。台数はサムスンのスマホ全体の6%程度ですが、単価が高く、利幅も大きいです。それがほぼゼロになることに伴い、同証券は新たに約1.9兆ウォン(約1700億円)の追加費用が必要と試算しました。というのも、韓国の国家技術標準院は11日、「新たな欠陥の可能性がある」と発表し、さらに米国でも米消費者製品安全委員会などが事故について調査中で、新たな回収コストや課徴金が発生する可能性があると見られているからです。7~9月期に計上したと推定する約1.6兆ウォンと合わせて計3.5兆ウォンの営業利益が消えたことになります。

事故から得られる教訓

今回のサムスンの事故は、電機業界にとっては逆風となりました。業界内での競争の激化、工期の短縮化などから生じる種々の課題はサムスンだけが直面する課題ではないと思います。このような課題への対処法を業界全体で考えていく必要が出てきているのかもしれません。

執筆者

本間 貴之 氏

 本間貴之 氏

2016年 法政大学 経営学部卒。学生時代に公認会計士を目指して勉強をしていたが、「会計や財務の専門家を切実に求める企業の為に働きたい」と考えて、会計監査ではなく、CFOの道を志している。投資ファンドの企画を競い合うビジネスコンテストで最優秀賞を獲得した経験も過去にはある。