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債務の株式化とは? 中国は金融危機を回避できるのか?

2016年10月10日、中国政府が債務の株式化を推進すると発表しました。

「企業の過剰の債務負担を軽くできる!」「銀行の不良債権の処理のためだ!」「問題の先送りに過ぎないのではないか?」

中国政府の発表に関して様々な意見が飛び交っておりますが、10月12日(水)の日本経済新聞朝刊にも掲載された、債務の株式化(デット・エクイティ・スワップ、DES)とは何なのでしょうか?文字通り債権、債務を資本として株式化することですが、この説明ではピンとこない方も多いと思います。そこで今回は、債権・債務と株式の違いから、債務の株式化によって企業や銀行にどのような影響があるかまで解説します。

債権と株式(負債と資本)の違い

企業が活動するには資金が必要であり、資金の調達の形式として支払う側からみれば債権と株式、企業側からみれば負債(債務)と資本があります。

負債の例として銀行からの借入があります。銀行からまとまったお金を借り、数%の利子を上乗せした金額を期限までに分割して返済します。一方の株式や資本ですが、株主から出資を受け、対価として株式の配当を受け取る権利や会社の経営に参加する権利を渡します。企業は原則として返済の義務はありません。

ここで重要なのが、企業からすれば負債には返済義務があるが資本にはなく、お金を貸す側からすれば債権はほぼ一定のリータン(数%の利子)をほぼ確実に貰えるローリスク・ローリターンであり、株式はハイリスク・ハイリターンということです。

債権(負債)株式(資本)
返済義務あり返済義務なし
ローリスク・ローリターンハイリスク・ハイリターン
優先的に返済配当の優先度は低い
議決権なし議決権あり

企業への影響

では債務を株式にするとどうなるのでしょうか?企業側からみれば下図のように負債が減り資本が増えるため自己資本比率が高まり健全な財務体質になります。直近の返済期限の迫った債務が減るため短期的な運転資金が増え、業績の回復が容易になります。

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銀行への影響

ではお金を貸す側、主に銀行からみればどうでしょうか?債務の株式化を行うのは企業の業績が悪く、返済期限の延長等の理由で不良債権になってしまう可能性が出てきた時です。企業が倒産した時は株主より債権者に優先的に返済がされるため、債務の状態であれば企業の破産、清算時でも小額の資金を回収できる可能性がありますが、株式であれば回収できる可能性はほとんどありません。

株式には返済義務がなく、銀行側が期待出来るリターンは企業の業績が向上した時の配当金、あるいは株価上昇時の株式の売却などであり、配当が可能になるまで企業の業績が向上しない限り貸したお金が戻ってきません。債務の株式化は銀行側としては企業の業績が回復するまでの返済期限の再延長を意味し、業績が回復しなければ無期限延長となります。

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まとめ

今回の債務の株式化(デット・エクイティ・スワップ、DES)の説明は基本的なことに留めておきましたが、会計上と税務上の位置付けが異なることや、債権を時価評価するなど専門性が高い分野でもありますので、この記事を通じて興味を持っていただければ幸いです。

 

執筆者

嶋本 幸之助 氏

 嶋本幸之助 氏

東京大学技術経営戦略学専攻修士2年。大学では躰道という武道に打ち込み、四年の時に主将を務め部を全国優勝に導く。その成果もあり2014年に東大総長賞受賞。大学院ではファイナンスを専攻。