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7年ぶりの赤字、イオングループの足を引っ張っている事業の正体は? イオングループの収益構造を分析

あの株式会社セブン&アイ・ホールディングスをも上回る小売大手、イオン(株)(以下、イオン)が7年ぶりの連結ベース最終赤字53億を計上したとして、10月6日(木)の日経新聞朝刊の企業・消費面に掲載されました。度重なるM&Aで小売業最大となったイオングループ。「子会社への出資比率を高くせず、グループ企業の独自性を確保する狙いがあるが、グループ企業の利益が出資分しか最終損益に取り込めないため利益が落ち込んでいる」との報道もされています。ですが、それは裏を返せば、出資比率が高くないにしろ、連結上取り込んだ利益をマイナスにしてしまうほどの不採算事業をイオングループが抱えているということです。

それでは、イオングループの事業と収益構造、不採算事業の正体を見ていきましょう。

そもそも、イオングループってどんな会社? 何をやってるの?

イオングループは、イオンを純粋持株会社とし、主要な8つの事業を展開するグループです。
以下が、主要な事業とその事業の主要な会社です。

  • GMS(総合スーパー)事業  イオンリテール(株)(以下、イオンリテール)、イオン北海道(株)(以下、イオン北海道)、イオン九州(株)(以下、イオン九州)
  • SM・DS(スーパーマーケット・ディスカウントストア)事業  マックスバリュ、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社(以下、USMH)、株式会社ダイエー(以下、ダイエー)
  • 小型店事業  ミニストップ(株)(以下、ミニストップ)、まいばすけっと(株)(以下、まいばすけっと)、オリジン東秀(株)
  • ドラッグ・ファーマシー事業  ウエルシアホールディングス(株)
  • 総合金事融業  イオンフィナンシャルサービス株式会社
  • ディベロッパー事業  イオンモール(株)
  • サービス・専門店事業  イオンディライト(株)、(株)ツヴァイ(以下、ツヴァイ)
  • 国際事業  中国、タイ、ベトナム、マレーシア、ミャンマーに進出。

 

GMS事業では、総合スーパーであるイオンを運営しているイオンリテール、イオン北海道、イオン九州などがあります。
SM・DS事業では、マックスバリュの地域統括会社やダイエーを子会社としており、株式会社 マルエツ、(株)カスミなどを運営するUSMHを持分法適用会社としています。
また、コンビニのミニストップや、現在店舗が増えている「まいばすけっと」もイオングループです。
国際展開として中国や東南アジアにも展開し、また、株式会社イオン銀行として銀行業に参入したり、ツヴァイとして結婚相手紹介サービス業を行うなど、急激な成長と多角化を遂げています。

イオングループの事業別の業績

それでは、イオングループの事業別の業績を見ていきましょう。
下の表は、8つの事業ごとの営業利益を時系列に示した表です。

2015/1Q2Q3Q4Q2016/1Q2Q
GMS-4,790-1,922-19,12735,229-9,322-8,996
SM・DS2,9653,1401,39413,6585,5008,015
小型店2211,952-120-778-352,330
ドラッグ・ファーマシー3,3844,8274,1436,2353,9446,802
総合金融12,45514,8348,23419,50413,69618,089
ディベロッパー11,3409,5379,61914,57211,6369,174
サービス・専門店7,7768,6242,1237,7977,8028,046
国際744-1,712-1,49312-1,348-2,182

(単位 百万円)

この表からわかるように、GMS事業を除いたほとんどの事業が、利益を上げています。
金融は非常に収益性が高く、他の事業も順調な様子です。
国際事業に関しては、需要が顕在化する前からの進出であると考えられ、今後の成長はほぼ確実に見込めるでしょう。
ですが、GMS事業は継続的に大きく損失を出しているようです。
これで、イオングループの業績を押し下げている事業がわかりました。

GMS事業の企業別の業績

では、GMS事業の業績を主要なグループ企業別に見てみましょう。
以下は、GMS事業の主要な企業の営業利益を時系列にした表です。

2015/1Q2Q3Q4Q2016/1Q2Q
イオンリテール-5,344-4,613-13,61828,396-6,220-3,629
イオン北海道1,9801,4251,0163,5081,8331,117
イオン九州-1,505-558-9292,8069-407

 

この表からわかるように、イオン北海道は順調に利益を上げているにも関わらず、イオン九州とイオンリテールが経常的に損失を出ています。
特にイオンリテールが多額の損失を出しているようです。
これらから、イオングループの利益を大きく押し下げているのは、イオンリテールだというこということがわかります。

まとめ

以上からわかるように、イオングループの赤字計上の原因は、特にイオンリテールにあるようです。
また、7年ぶりの赤字と報道されていましたが、時系列で見ると、イオンリテール以外の企業が稼ぎ、その利益をイオンリテールが押し下げている、というイオングループの経常的な収益構造が明らかになりました。
個人消費の低迷や天候不順で衣料品を中心に苦戦したことが業績悪化の理由だと報道されています。
少子高齢化や人口減少、消費低迷を原因とする国内市場の縮小で、国内企業は激しい競争を強いられています。
また、趣向の多様化やIT化を背景とした、産業の変革が起こりつつあるようです。
この激しい変化の中では、素早く環境の変化を認識し、環境に適合した企業が生き残っていくでしょう。
昨今、世間から注目を浴びているM&A、業界再編はそれ理由です。
この先、イオンリテールは復活できるのでしょうか。
イオングループの対応次第で、小売業界に大きな変化をもたらすかもしれません。
これからのイオングループの対応に注目です。

執筆者

牧野 成譲 氏

 牧野成譲 氏

2013年4月専修大学商学部会計学科入学、現在4年生。2015年11月公認会計士試験に現役合格。2016年8月にミャンマー、タイの会計事務所で1か月間のインターンシップを経験。