外食ビジネスの特長 概論2

今回は、「損益構造」と「業態の展開方法」と「ビジネスモデル」に着目して、外食ビジネスの特長を解説していきたいと思います。

~外食ビジネスの特長~

(ⅲ) 損益構造がおおむね決まっている事業である

読者の皆様も外食店を利用される機会が多いと思います。また外食企業を訪問するに先だって、その企業が経営する店舗を事前に訪ねることもおおいでしょう。店舗を訪れたときに、皆様は何を感じるでしょうか? 店舗内装の特徴、料理のおいしさ、気持ちの良いサービスなどについて、皆様なりにその店舗の良し悪しについて考えると思います。ここではちょっと視点を変えて、その店舗の損益計算書をイメージすることは可能でしょうか?一般的に店舗の売上高は席数×回転数×客単価で計算できます。例えば、訪問した店舗の席数をざっと数えて50席だったとします。店の混雑状況を勘案して例えば一日の回転数を2回転と見積もったとします。メニューを見ながら、客単価は3500円程度と見積もりました。その場合の一日の店舗売上高は50(席)×2(回転)×3500(円)=350000円という試算ができます。もちろん曜日や天気などによって客数は大きく変動しますが、例えば営業日数が25日だったとすれば、その店舗の月商は350000(円)×25(日)=8750000円程度と試算できるでしょう。

コストについてはどうでしょうか? 一般的に料理の材料費は30%、ホールや厨房の人件費は30%程度が標準的な水準と言われています。この2つのコストは、一般にFoodコスト、Laborコストを略してFLコストと呼ばれています。また水道光熱費や店舗消耗費の変動費はおおむね売上高の15%程度が標準的な水準ではないでしょうか?

固定費ですが、これは主に賃料とリース料、および減価償却費が相当します。この店の広さをざっと50坪と見積もった場合、どの程度の固定費がかかっているでしょうか。賃料は地域性や立地条件によっては様々ですが、仮に月あたり15000円/坪とします。店舗全体で15000(円)×50(坪)=750000円で、これは月額の8.5%に相当します。リース料は減価償却費は内装や設備に関する費用で、ここでは仮にリースを利用せず、全額現金払い(または割賦)を利用したとします。50坪の店舗に対する設備投資額も店のコンセプトや施工の方法などによって、大きく異なりますが、標準的な水準としては1000000円/坪というあたりが一つの目安ではないでしょうか。ここでは仮に設備投資額を1000000円/坪として、当初の投資額を1000000円×50円=50000000と見積もりました。減価償却期間は店舗の退店やリニューアルまでの期間をベースに算定することが合理的ですが、ここでは5年とします。すると年間の減価償却費は10000000円程度であると断定できます。月次の減価償却費は10000000円÷12か月=833.333円で、これは月商の9.5%です。

これまでの試算により、皆さまが訪問した損益計算書のイメージができるでしょう。年間ベースだと、売上高=8750千円×12=105000円、材料費+人件費=105000円×(30%+30%)=63000円、水道光熱費等=105000千円×15%=15750千円、賃料=750000千円×12=9000千円、減価償却費=10000千円。あくまでも標準的な水準を用いた資産に過ぎませんが、この店舗の営業利益は売上からコストを差し引いて、7250千円(売上高の6.9%)となりました。

店舗で必要とされる営業利益は10%以上出れば優秀な水準で一般的には5~10%程度でしょう。このような店舗営業利益の合計と、これに役員報酬や本部スタッフ、本部家賃などの本部費、場合によってはセントラルキッチンの経費などを合算したものがその企業の合計損益となります。

外食企業の特徴として、おおよその店舗規模と客数・客単価が決まれば、おおよその店舗損益が一定の水準に収まる。端的に言うと、店舗の損益構造はおおむね決まっているといえます。各社はこの損益構造を最適なものにするために、出店時にシミュレーションを行い、そして日々の営業努力を行っているのです。この条件の中で、各社が他社と差別化された強みをどこに持って収益に結びつけているのかが重要となります。差別化されたメニューや内装、レベルの高いサービスによる客数や客単価のアップ、材料費や人件費のコントロール、賃料や出店投資額の低減、これらのどこかに、あるいは総合的に優位性を持っているかどうかが、店舗ひいては外食企業の力を見極めるポイントとなるでしょう。

(ⅳ) 業態の展開方法

店舗を多店舗化する中で、単一業態を多店舗化する場合と、複数業態を多店舗化する場合があります。

単一業態を多店舗化する場合には、顧客には、顧客の嗜好を据えた魅力的な業態を、単一で多店舗化します。これは店舗モデルや食材の発注、店舗オペレーション等を標準化しやすく、効率的な店舗運営が図りやすいといったメリットがあります。一方で当該店舗が、類似店舗の出現、消費者の嗜好の変化、食中毒やウィルス被害などの発生により顧客が来なくなった場合に、一気に会社の業績大打撃を受けるといったデメリットもあります。

複数業態を多店舗化する場合には、和食や洋食といった業態、想定客単価等の異なる店舗を複数展開します。消費者には一見、同じ会社が運営しているとはわからないケースです。これは単一業態型とは反対に、ある店舗の業態の落ち込みを他の店舗でカバーし、リスク分散が可能であるというメリットがあります。一方で、継続的に新業態を開発する仕組みを社内に持つ必要があり、また店舗モデルやオペレーションの異なる複数店舗を出店して管理するための独自のノウハウが必要となります。

出店立地をどこにするかのかも、企業の戦略が分かれるところです。都心なのか地方なのか、郊外のローサイドなのか、大型ショッピングセンター内なのか、などがありますが、これらは店舗の業態がどのような主要な顧客をターゲットにしているのか、また賃料や人件費などのコスト構造をどのように考えているのか、によって各社違いが出てくるところです。

(ⅴ) ビジネスモデル上の特徴

直営で多店舗化するのか、フランチャイズ展開するのか、という違いもあります。フランチャイズ展開の場合には、一般的には、加盟者から加盟金等の形で最初に一定金額を受領します。その後は加盟者の売上高に応じて一定のロイヤリティを受領するほか、食材などの供給を一元化して本部から一括供給する場合もあります。フランチャイズ展開の場合には、出店時の投資を加盟者が負担するため、本部にはイニシャルコストなしで多店舗化できるというメリットがあります。その反面で、加盟者にとって魅力のある業態開発、メニュー開発、加盟者の成功のための販促やノウハウ供給をいかに継続的に行うことができるかが重要となり、そのために人員やコストがかかることになります。

メガフランチャイジーといわれるほどビジネスモデルで成功している企業もあります。これは自社では業態開発を行わず、大手企業のフランチャイジーとなることに特化しながら多店舗化しているケースです。この場合には、業態開発やノウハウ構築を自社で行わず、また複数の業態を組み合わせることでリスク分散を図れるというメリットがあります。反面で、ロイヤリティという、自社開発では存在しないコストを別途負担する必要があるので、この追加コストをいかに吸収しながら事業展開できるかがポイントとなります。

執筆者

NEXT CFO 編集部

 NEXT CFO編集部

CFOを増やすことで日本国経済をちょっとよくしたい! もっとCFOについて、知ってもらいたい。CFOに興味を持ってもらいたい。CFOになろうと考えてほしいと願っております。